第2部 冒険者としての活動
第1章 動き出す日常
第101話 EXランク
世界中を騒がせたあの事件から2週間が経った。現在、各地で復興が急がれる中、俺達はというとフリーダムとシリスティラビンで復興の手伝い、絶望の森でレベル上げをそれぞれローテーションで行っていた。俺達は各地で教徒を殲滅していた為、その活躍は広く深く浸透し、出会う者のほとんどに感謝され、まるで英雄のような扱いを受けていた。その為、最初に復興の手伝いをしようとした時は英雄にそんなことまでさせられないと断られたのだが、全員で同時にレベル上げをすると逆に効率が悪くなることから方針上、どうしても待機メンバーが出てきてしまい、その分暇になってしまう。そこで時間を有効活用しようと強引に手伝わせてもらうことにしたのだ。と、そんなこんなでこの2週間を過ごしていたのだが、実はその間に驚くことがあったのだ。あれは今からちょうど1週間前のことだった。ブロンに急にギルドへと呼び出された俺は何か話でもあるのかと軽い気持ちで向かったのだが、そこで聞かされたことがこの世界の者にとっても前代未聞のことだったのである。
――――――――――――――――――――
「よぉ、来たぞ」
「おお、シンヤか!待っておったぞ。それとこの度は世界を救ってくれて、本当にありがとうのぅ」
「その台詞は何度も聞いた。あと、俺をこれ以上持ち上げるな。いい加減、痒くて敵わん」
「ほっほっほ…………お主の困った顔を見るのは些か気分が良いのぅ」
「まさか、そんな下らん話をする為にわざわざ呼び出した訳じゃないよな?」
「そんな訳なかろうて。まずは…………ほれ、報奨金じゃ。今回の件の立役者として各地のギルドや各国からお主宛に沢山送られてきたんじゃ。とは言っても復興や負傷者に割り当てるお金を最低限残しておく為にそこまで多くは出せないところもあるようじゃが」
「構わん。別に顔も知らない奴らの為に動いた訳じゃない」
「相変わらず素直じゃないのぅ」
「いや、実際これだけ貰えれば十分だろう」
「まぁのぅ。なんせ光金貨10枚、金貨にして1万枚じゃからのぅ。下手したら、そこら辺の国よりも多く持っていることになる………………お主ら、どこか大国と戦争でもおっ始める気か?それとも自分達で国でも創るとか?」
「お前は相変わらず妄想が凄いな」
「いや、ワシ今まで妄想なんて語ったことないんじゃが?」
「で?用件はこれだけか?」
「いや、まだじゃ。実はここからが本題なんじゃが……………」
「?」
「今回のお主らの健闘を称え、クラン"黒天の星"のクランメンバー全員の冒険者ランクが上がることとなった」
「へ〜」
「まず組員が一律でA、"十長"がそれぞれS、そして"十人十色"が全員SSランクじゃ」
「そんな簡単に上がるもんなのか?確かA辺りから難しいとは聞いたことがあるぞ」
「それを言ったら今のお主のランクも相当じゃろう?何故かは分からんがお主が冒険者を始めた辺りから大きな事件が多発しておっての……………それの解決に関わっておるのがお主らなのじゃ。そんなイレギュラーに対処できる者をいつまでも低ランクにしたままでいい訳があるまいて」
「なるほど」
「…………で最後にまだ残っておる"二彩"とお主なんじゃが………………」
「何だ?随分、歯切れが悪いな」
「もしかしたら、嫌がるかもしれんから言いづらいのじゃ」
「内容によるが……………とりあえず言ってみろよ」
「………………今回、アスターロ教の幹部共を倒した"十人十色"がSSランクに上がっておる。ということは邪神自体を相手にしたお主らは……………」
「まさかSSSランクか?確かにどんな偉業を達成しようが一朝一夕でそこまでなれる訳じゃないからな。それと俺達のランクの上がり方は普通じゃない。いくら邪神を倒したとはいえ、流石に最高ランクまで上げてしまうとギルドの上層部や他国から圧力をかけられてしまいかねないし、単純にいい気はしないってことか?」
「いや、違うんじゃ」
「違う?」
「お主ら3人はSSSランクのさらに上の…………EXランクにしてはどうかとギルド本部から推薦が来ているんじゃ」
「……………は?」
「嘘などではない。これは本当のことじゃ」
「ちょっと待て。俺が冒険者登録の際に受けた説明では最高ランクがSSSだと聞かされたんだが?」
「それは間違いない。じゃがお主らを適正ランクに当てはめようとした時にその実力はSSSランクから明らかに逸脱しておる。そこでワシら支部も含めたギルドマスター達が集まり会議を行って出た結論が……………どうせなら、もう1つ上に新しい冒険者ランクを作ってしまえばいいんでね?ということなんじゃ」
「何が、"いいんでね?"だ!それこそ、そんなことがあっていいのか?」
「じゃあ逆に聞くが世界を滅ぼそうとした存在を倒したお主らを一体どのランクに位置付けたら、いいというんじゃ?あと忘れておるかもしれんけど、お主らは一国と戦争をして勝利を収めておるからな?…………邪神の後に聞くと小さなことのように聞こえるがそれも充分とんでもないことじゃろ」
「……………」
「という訳でお主ら3人は新しく出来たランクであるEXランクに決まったのじゃ」
「まだ受け入れると言った訳じゃないが……………まぁ、別にいいか。ランクがどうであれ、これからの俺達の行動は何も変わらない。ゴチャゴチャ言ってくる奴は黙らせればいいだけだしな」
「相変わらず過激じゃのぅ」
「防衛力が高いと言え」
「まぁ、物は言いようじゃ」
――――――――――――――――――――
そんなことがあり、俺とティア、サラは世界初のEXランク冒険者となったのだ。おそらく、このことはすぐさま冒険者伝いに世界各地へと広まっていくことだろう。現にこの1週間の間で何組もの冒険者がフリーダムとシリスティラビンのクランハウスを訪れて来た。内容はお察しの通り、クランに加入したいという申し出だ。いくらクランハウスを結界や魔法で覆い隠していないからといって、一体どうやって見つけてくるのか……………そのバイタリティをもっと他のところへ使えばいいものを。ちなみに訪ねて来た者の対応は対話の経験を積ませる為に全て組員にやらせている。そして、当然そんなミーハー冒険者は全て追い返すよう指示した。基本的に有名になったり強さが分かった瞬間に寄ってくる者を俺は加入させようとは思わない。あと組員はそこまで有名ではない為、舐めて実力行使に出てきたのがいるがそういった者は全て半殺しにして街の中へと放り出させた。するとそこからは途端に冒険者の来客が減り、代わりに周辺の街や村から使者が来て、依頼を受けてくれないかというような話が舞い込んでくるようになった。これに関してはクランの中で受けたい者にやらせることにした。難易度的に組員でも可能なものが多かった為だ。
「シンヤ様、すみません。私達では対応できかねる内容でして……………」
「気にすんな。それとご苦労さん」
そして、今日も今日とて来客があったと報告を受けたんだがどうやら組員では対応できない内容らしく、向こうも俺と直接話がしたいとのことで急遽会議室まで足を運んだのだ。するとそこにいたのは……………
「2週間ぶりだな。邪魔させてもらってる」
ブロン救出作戦の時の協力者である"四継"を筆頭に合計9人の男達だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます