第5章 クラン拡大

第56話 新体制

「全員、いるな?ではこれより、今後の俺達の動きについて、説明していきたいと思う」


シリスティラビンのクランハウスの会議室にクランメンバー全員を集めた俺は開口一番、そう言った。上級ダンジョンを制覇し、グリフを仲間に加えた次の日に特級ダンジョンをも制覇した俺達はそこで新たな仲間となったドラゴンも一緒に連れ立って、全員で絶望の森へと向かった。そこで恒例となる各々の事情の共有やレベル上げを行い、2週間が経った現在、再びシリスティラビンへと戻ってきたのだ。


「今後の動き………ですか?」


「ああ。実はこの2週間のレベル上げは今までのとは全く意味合いが違う。それは自衛の為だけでなく、


「というのは?」


「結論から言おう……………今から3日後、俺・ティア・サラを除くお前達全員、2人1組となって様々な場所へと赴いてもらう」


「へ?」


「ち、ちょっと正気ですの?」


「一体、何の為に………」


「これは前々から考えていたことだが…………人数が増えてきた場合、主な幹部を10人とし、その下に直属の部下という形でそれぞれ1人ずつ付けるのが適切だと。その為にギルド側にを登録してくれるよう頼んだんだしな」


「アレって…………あぁ!なるほど」


「ティア、分かりましたの?」


「サラ、私達2人と10人のアレですよ」


「ん?…………ああ、なるほど」


どこか合点がいったティアとサラは置いてきぼりにならないよう全員に俺が登録したものについて、説明して回る。これによって、その時、その場にいなかったメンバーはここで初めて知ることになるのだった。


「でも、その話と今後についてはどういった関係が?」


「ああ。2人1組というのは幹部1人と新人1人という組み合わせだ。で、ここからが大事なんだが…………」


「はい」


「その新人を組長とする組を合計10組作りたい。だから、その組に所属するメンバーを各々が自分達の直感や感情、その他諸々の理由で見つけ出してきて欲しい。いきなり、そんなことを言われても難しいかもしれないから、幹部をお目付役として1人ずつ付ける。もし、何か困ったことが起きた場合は頼れ。きっと何とかしてくれるだろう」


「うっ………プレッシャーが」


「カグヤ、顔面、蒼白」


「お前らのことは信じてるぞ。その為に入念にレベル上げもしたんだ」


「そんなに真っ直ぐな目で見られても」


「アスカは心配症じゃのぅ。そんなことでは部下に示しがつかんぞ」


「ちなみにメンバーの数は最低1パーティー以上で上限は決めてない。気に入った者がいて、もしその相手が"黒天の星"に入りたいという意思表示をしたら、シリスティラビンのクランハウスへと連れてきてくれ。ここには俺・ティア・サラの誰かしらがいるようにするから、そうしたら、顔合わせと冒険者・クラン登録に行ける。ここに戻ってくる前や俺達3人に何か判断してもらいたいことがあった場合は通信の魔道具を使ってくれ。ただし、誰を入れた方がいいかという相談はなしだ。自分達の組のメンバーは自分達で選んで欲しい。ちなみに通信の魔道具はこの間、オークションで大量に落札したから、全員分はちゃんとある。心配しなくていい」


「なるほど。確かに馬が合わない者とは一緒にやっていけないものだ。さすがはシンヤ殿」


「にしても急過ぎないか?旅立つのが今から3日後とはいえ」


「ドルツの言いたいことも分かるが、何があるか分からないからな。なるべく、早くクランを強化しておきたい。俺が常に一緒に居られるとは限らないし、困った時は仲間同士で助け合うことを考えれば、今から新たにメンバーを増やしても早過ぎるということはない」


「2人1組って、具体的な組み合わせは何デス?ミーは相手を早く知りたいデス」


「ボクも知りたいの」


「それを決める為にこの2週間のレベル上げが必要だったんだ。改めて、第三者目線から、それぞれの性格・実力・戦闘スタイルを見て相性が良さそうな者同士を組ませることにした。今から、それを発表する」


「なんか緊張してきた。ちゃんとできるかな、僕」


「だらしないわね、ニーベル。わ、わ、私を見習いなさいよ。ほ、ほら、余裕そうでしょ?」


「どこがだよ………なんか、ローズを見てたら、逆に緊張が収まってきたかも」


「それ、どういう意味よ!」


「さて、気持ちの落ち着かない者がほとんどだと思うが、そこは意識を切り替えて、聞いてくれ。今から、1組ずつメンバーを発表していく。その際、通信の魔道具や地図、食糧など必要なものを配布する。その後、それぞれがどこへと向かうか、10組全員で話し合ってもらい、決めてもらう。その話し合いに俺は参加しないが、一応見届け人として、ティアとサラに参加してもらう。ティア、サラお願いできるか?」


「かしこまりました」


「助言はしない方がよろしいんですのよね?」


「ああ。あまりしないでくれると助かる。あくまでも自分達で決めて行動して欲しいからな」


「分かりましたわ」


「よし、俺からは以上だ。何か質問とかはあるか?」


「はい!!」


「どうした、ケープ?」


「期間は決められているのでしょうか?あと、クランハウスに戻ってきてからの流れを教えて頂ければ幸いです」


「期間は特に決まっていない。あと、これだけは言っておくが、自分達の組のメンバーとなる者に妥協はするな。お前達がこれから、することはいずれ、背中を任せることになるかもしれない仲間を見つけるということだ。それは信用に足る人物でなければならない。それでもし、仮に真剣に選んだ末に裏切られでもした場合はお前達を責めることは一切ないし、俺が全力で守る。慰めもするし、責任は俺が全て取る。これは当然のことだ。だがな、最初から適当な気持ちで選んでいけば、最終的に自分の首を締めるのは自分になるということを忘れるな……………ここまで聞いて、辞退したい奴は手を挙げろ。あと、付いていけないと思った奴もだ」


俺は静まり返った会議室を見回す。皆、これから自分達が行うことに対して、より一層気を引き締め、真剣な面持ちをしている。結果として数分待ってみたが、誰1人として手を挙げることはなかった。


「では全員、賛成ということで。ちなみにクランハウスに戻った後の動きだが、それはその時に俺やティア達から話す。今、ここで言わない。理解できたか、ケープ?」


「はい!ありがとうございます!」


「よし、では気を取り直して、今からメンバーを発表していく」


「ゴクリっ………」


「まず、1組目だが……………」

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