第11話 盗賊

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カグヤ

性別:女 種族:鬼人族 年齢:24歳


Lv 20

HP 888/888

MP 888/888

ATK 999

DEF 777

AGI 666

INT 555

LUK 1000


固有スキル

鬼神化・精神統一・背水の陣・???


武技スキル

体術:Lv.5


魔法

なし


称号

闘神の加護・巡り会いし者・傅く者・恋する乙女・従者の心得



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鬼神化

一日一回しか使えない。身体の底から力が湧いてくる奥義。全ステータス1.5倍。


精神統一

心身を落ち着かせ、視野を広げるスキル。ATK・DEFが1.2倍になるが、使用中はその場から動くことができない。


背水の陣

HPが残り三分の一を切った時に発動。全ステータス2倍。


闘神の加護

闘神酒呑童子の加護。ATKに補正。


巡り会いし者

自身の目標とする人物と邂逅を果たした者に贈られる称号。LUKの値に補正。



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「………驚いた。もっと若いかと思ってたわ」


「人のステータスを見て、最初の感想がそれかい!!」


あの後、服屋に行って全員分の普段着や下着を購入した。その際、三人がああでもないこうでもないと仲睦まじく話し合っているのを微笑ましく鑑賞。結果的に三人とも悩んでしまった為、とりあえず全て購入した。それからは色々な店で買い物したり、時間的には少し遅い昼飯を食べたりして、現在は門の外にいる。沢山、金を使ってしまった分、どこかでもう一度稼がなければならない。その為にある場所へと向かっているのだ。


「いや、見た目が若く見えるからな。それこそ、ティアとも変わらないくらいに」


「人族以外の種族は見た目の進行が遅いんだ。里にいるみんなもアタシと同じ感じだよ」


「そういえば、お前は何で奴隷としてあそこに居たんだ?」


「アタシら鬼人族は昔からすごく悪さをしてきた種族らしいんだ。だから、他の種族の者から迫害を受けるかもしれないから、なるべく里の外に出るなというルールがあって、みんなもそれを守ってたんだけど………」


「辛いなら無理に話さなくていいぞ」


「いや、主様達には知っていて欲しい。今更だけど、聞いてもらってもいいか?」


「ああ。お前らは?」


「知りたいです!カグヤはもう私達の大事な家族ですから!」


「ええ。何かあるのなら、あなたを全力で守りますわ」


「だそうだ」


「ありがとう。じゃあ、聞いてくれ………ある日、長老が不治の病に侵されたと聞いた。それの特効薬が里の外のある都市でしか作られていないと知ったアタシは急いで里を飛び出して、手に入れようとしたんだけど、途中で人攫いに捕まってあの奴隷商に売られてしまったんだ。なんでも鬼人族は忌み嫌われているから、ストレス発散の道具として使われるとかで」


「そうか」


「あ、勘違いしないで欲しいんだけど、あの奴隷商の店主が言ったんじゃないよ?むしろ、あの人は何かと良くしてくれてた。でも、アタシが来る奴に突っかかってばかりだから、心配はしてくれてたみたいだけど」


「俺と初めて会った時にあんなに突っかかってきたのも」


「自分をわざと大きく見せてたんだ………じゃないともし買われてしまった時に支配されてしまうんじゃないかと思って」


「なるほど」


「でも、主様はそんな人じゃなかった。それどころか里にもいないよ………こんなに強くて優しい素晴らしい人は。アタシは思ったんだ。良かった、アタシを買ってくれたのがこんなに最高の主様でって」


「まぁ、俺は良い奴だからな」


「………もしかして、照れてます?」


「ティア、何か言ったか?」


「いえ、別に?」


「それよりももうすぐ着く頃でなくて?」


「お、そうだな。じゃあ、準備するか」




――――――――――――――――――――



「ここら辺だな」


目的地に到着した俺達はゆっくりと辺りを見回す。そこはとある森の中だった。フリーダムへと向かう道からは外れたところにある為、冒険者がここを通ることは滅多にない。俺は目配せするとそれぞれを配置につかせた。ちなみにカグヤにも専用の装備を作製しておいた。今、正に身に付けている。


黒衣一式(神級)

朱の大太刀ハバキリ(下級)朱の小太刀イクタチ(下級)


カグヤは二刀流剣士に分類されるようだが、刀の長さがそれぞれ違う為、状況に応じて使い分けていくことにもなるのだろう。もちろん、付与されている効果は俺達のと同様である。


「………来たぞ。じゃあ、手筈通りに」


俺がそう言った直後、辺りの茂みが揺れ、そこからみすぼらしい格好の男達が現れた。その数、15人。そして、こう言ってきた。


「金と女を置いていけ。抵抗すれば殺す」


「ティア、サラ……殺れ」


「「了解」」


「はぁ?お前、何言っ……」


「へっ、なめてんじゃ…」


最初は一番近くに居た奴を2人同時に。


「ぐはっ…」


「あべべべっ……」


次に遠くにいる奴を2人同時に。


「お、おい!お前ら、どうした!?」


「ひぃっ!く、来るな!」


「ば、化け物だ!」


それぞれが刀・剣・弓で仕留めて、残りは3人。ちなみにカグヤには見学してもらっている。今後、こういう機会があった時の為に。


「さて、と」


適当な1人を決めて、残り2人をわざと目の前でサクッと殺る。一応3人残しておいた理由はこの時点で心が折れていなかった場合、目の前で2人殺って心を折る必要があったからだ。


「あぁぁぁ………」


「じゃあ、アジトまで案内してもらおうか?無駄口叩かず、最効率で行けよ?」



――――――――――――――――――――



「はい、案内ご苦労」


「やった……これで解」


「んな訳ないだろ」


案内に使った盗賊を斬り捨て、アジトを見てみるとそこは洞窟だった。中にいる奴ら全員を生き埋めにしてやりたい気持ちはあるが、そうなるとこいつらを討伐した証拠がなく、懸賞金がもらえない為、中に乗り込んで直接殺るしかなかった。それともし、中にお宝があった場合、かなりもったいないことになってしまう。それだけは避けたかった。


「じゃあ、いくぞ」




洞窟に入って数分。色々な場所にいる盗賊を向こうに気付かれる前に音もなく、次々と殺していっている為、俺達が侵入したことはまだ勘づかれてさえいない。この洞窟自体、そこまで大規模なわけではない。行くべき箇所は既に残り1箇所となっていた。道沿いに進んでいくと遂に大広間のような場所に出た。


「お、ボスっぽいの居るじゃん」


「お、お前ら、一体なに」


「サラ、殺っちゃって」


「はいですわ!……レインボーアロー!」


サラから放たれた7色の属性が付与された魔力矢が盗賊のボスと思われる者以外の者達を射抜いていく。出会って数秒。残るは奴らの中で一番良い服を着ている眼帯男しかいなかった。


「さて………おい、宝はどこだ?」


「な、なんなんだお前達……」


「質問に答えろ。死にたいのか?」


「ひっ………わ、分かった。答えたら、見逃してくれよ」


俺はそれに特に返事はせず、眼帯に宝の在処まで案内させた。するとある一室にあるわあるわ……溜め込まれた財宝が。


「よし、他にはないか?」


「隣の部屋に捕らえたガキが……」


「了解。じゃあ、用も済んだし、死んでもらおうか」


「お、おい!約束が違」


それ以上、眼帯が喋ることはなかった。この不快な声を1秒でも聞いていたくなかった為、早目に始末したのだ。


「どこまでめでたい奴らなんだ。盗賊を生かしておく訳ないだろ……それに約束してないし」


俺はそう言いながら、財宝よりも先に隣の部屋を覗き込んだ。どうせ酷い状態で起き上がることすら出来ずに放置されているのだろうと勝手に決めつけて。しかし、その予想に反して、中に居た少女は起き上がって、こちらを見てきた。鎖で縛られてはいるが、健康状態はわりと大丈夫そうだ。


茶色の髪に浅黒い肌。身体は小柄で綺麗というよりはどちらかというと可愛いらしい部類。瞳はパッチリと大きく、そこからは涙が滲んでいる。こちらを警戒しているのだろう。近づこうとすると後ずさって、両目を閉じた。無理もない。この状況だ。だが、信用されずともこれだけは言っておかなければならない。


「俺は敵じゃないから、お前を傷つけるつもりは一切ない。ここに来た目的は盗賊の討伐だ。ついでにお前のことを助けてやるが、だからといって恩を感じる必要はない。解放された後はどこへでも好きなところへ行け」



――――――――――――――――――――




俺達は少女の鎖を断ち斬ると唖然と立ち尽くした少女をその場に残して、すぐさま隣の部屋から財宝を回収して外へと出た。ずっと中にいたら、息が詰まりそうだ。


「さて、とりあえず、これから………」


「……チョンチョン」


俺が今後のことを話そうとすると外套を引っ張られる感覚があった為、そちらを見てみるとなんと先程の少女が俺の外套を掴みながら、こちらを見上げいているではないか。


「どうした?」


「好きなところ行け、言われた。だから、ぃのとこ、着いてく」


「いや、確かに言ったが……お前、両親は?あと、その呼び方はやめろ」


「いない………なんて、呼べば、いい?」


「そうか………ああ、俺の名前はシンヤ・モリタニだ。好きに呼べ」


「シンヤ………シンヤ!」


「お、おぅ、落ち着け。それとティア、お前もだ」


「うわ〜ん!わ、私だって呼び捨てにしたことないのに!一番古株なのに!」


「普段、しっかりしている癖にシンヤさんのことになるとこれですものね」


「先が思いやられるぞ、主様」


「なんか、もう一人加わる流れになってないか?」


騒ぎつつ、一行は進む。どうやら、また一人癖の強そうな少女が仲間に加わったようだ。

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