~After~2度目のあいさつ
緋月がお父さんと無事に仲直りが出来た日から数日後。
今日はいよいよ緋月の誕生日当日。
あの後、私が家に帰ってスマホを見ると、改めて緋月からお礼とお詫びの連絡があったんだ。
その翌日の学校ではいつもの表情だったし、何はともあれ、無事に緋月の誕生日を迎える事が出来てよかった。
私は今、自分の家でデートの準備中。
今日は学校だったから、学校が終わって一度家に戻って、着替えてまた待ち合わせの予定なんだ。
よし、お着替え完了でメイクもバッチリ!
渡すプレゼントとこの間の緋月の乾かした服も持ってるし、待ち合わせ場所に行こう!
私が軽い足取りで待ち合わせ場所に着くと、そこには既に緋月が待っていた。
わぁ……緋月の私服姿だ……カッコイイ……。
背が高いからこの時期のコートがすごく似合うし、それに……メガネかけてる……。
あ、周りの女の子達、緋月を見てる。
カッコいいからなぁ……。
学校では私と付き合ってる事が広まってお互いに告白を受ける事はなくなったけど、外では……声かけられたりするんだろうな……。
ヤだな……。
「緋月、お待たせ……」
「お、理央、俺も着いたばっか……って……なんでちょっとふくれっ面なんだ?」
「……なんでもない……」
「んー……理央が理由もなしになんでもないって言う訳がないんだよなぁ。
ほんとは何があったんだ?」
わ、かがんで覗き込んできた!
というか、なんで……わかってしまうの……理由がある事……。
でも……せっかくの緋月の誕生日なのに……こんな顔するのは違うよね……。
「……緋月の……」
「ん?」
「私服姿……カッコイイから……他の子達がすっごく見てる……」
「……理央……ヤキモチか?」
「……」
「……理央が……そっか……」
「……なんで嬉しそうなの……」
緋月……笑いをこらえながらも、すごく嬉しそう。
「俺ばっかりヤキモチ焼いて、理央がヤキモチ焼くのはあまり見ないから……たまにはいいな」
わー……満面の笑みだ……。
この笑顔……私の前だけ、なんだよね……それは……悪くないかも。
「ごめん、せっかくの緋月の誕生日なのに……」
「いいよ、理央の新たな一面が見れたから。
もうプレゼントもらったようなもんだ。
そろそろ行こう、デート」
緋月ったら、そんなキラキラした笑顔で……しかも、手をさりげなくとって恋人つなぎしてきたし……。
もう、ドキドキしっぱなしだよ~。
「あ、理央、ごめん」
「ん? なに?」
「今日の理央、すっごい可愛い。
ニットのワンピース、すごく似合ってる」
う、わー……そんな……そんな表情でその言葉はズルい……。
今の緋月の表情……画面の向こうの私に向けてた優しい笑顔だ。
それを直で浴びるなんて……キュン死しそう……。
「あ、ありがとう……」
そうして私たちは少しの時間だったけど、緋月の家を目指しながら街中をウロウロしてデートを楽しんだ。
***
時間も少し経った頃、私たちは緋月の家に向かうために住宅街を歩いていた。
「そういえば、緋月のお父さんのお仕事、見つかったの?
って……聞いてもいい?」
「うん、いいよ。
無事に見つかったよ。
あの後、ダメもとで受けたところがあったみたいで、無事に決まったって。
それで、前の所を辞めた翌日からさっそく仕事だって言ってた」
「そっかぁ、よかったね!」
「うん……。
ほんと、あの時はありがとうな。
……あ、家着いたぞ」
「……う、うん……」
ひー……二度目の緋月の家だー……。
それに緋月のお父さんと会うのは二度目……緊張する~。
「ただいまー」
「お、お邪魔します……」
「おかえり、緋月。
あれ、そちらの方は……」
え、あ、あれ?
この反応って……この間会ったのに……て事は……もしかして。
「あ~……前に話した彼女……」
「えっと……こんばんは……一条理央です。
この間は突然、失礼しました……お邪魔します……」
わー……二度目の挨拶……緊張でどうにかなりそう……。
「え……理央さん……ってこの間の?!
お、女の子……だったのか……」
あ、やっぱりあの時、私が女だって事知らなかったんだ……。
お父さんにちゃんと話してないのかな?
「緋月、私の事……どんなふうにお父さんに説明したの?」
「あ~……っと……彼女がいて、誕生日は彼女と過ごしたい……とだけ」
「ちゃんと説明しないとダメだよ……」
「……ごめん」
やっぱりかー……。
お父さん、固まって面食らった顔してるよ……。
「驚かせてすみません、理由があって普段は男装しています……」
「そっか~あの時の……。
いやぁ~それにしても、こんな美人な人が彼女だなんて緋月もやるなぁ~。
玄関で立ち話もなんだし、どうぞ上がって」
「お、お邪魔します……」
わー……緋月の家のダイニング……もう緊張がピーク……って……。
「いいにお~い!!
すっごい美味しそうなお料理たち~!!」
「ふっ……いつもの理央だ……。
さっきまで緊張した顔だったのに……」
「あ……ごめんなさい……。
「いや、いいよ。
賑やかで楽しいし」
「さ、料理が冷めないうちに座って!」
「はい、失礼します!
……どれも美味しそう~」
ビーフシチューにピザにサラダ、コンソメスープ、ミニグラタン……他にも……すごい量!!
「緋月が初めて彼女を連れてくる事になって、つい作り過ぎたんだ。
おかわりあるから、いっぱい食べてね。
でも……女の子がこんなに入るかな?」
「大丈夫です! いくらでも入ります!
任せてください!!」
「そ、そうかい? 無理はしないでね……」
「大丈夫だよ、父さん。
理央なら入るから」
「ならよかった!
では、乾杯しよう!
緋月、ハッピーバースデー!!」
「ハッピーバースデー!!」
「……二人とも、ありがとう……」
ふふっ……緋月が照れてる……。
「では、理央さん、緋月、召し上がれ」
「はい! いただきます!
……ん~~美味しい……ビーフシチューのお肉柔らかい……ホロホロ……。
このパンもふかふか……幸せ~」
「本当に美味しそうに食べるね」
「うん、理央はいつもこんな感じだ」
「あ……すみません……またも我を忘れて……」
「素直でいい子じゃないか。
……理央さん、この間はありがとう……」
「そ、そんな、お礼なんて……」
「いや、本当、何から何まで……帰りのタクシー代とかも……」
「そんな、気にしないでください!
私が勝手にやった事なので、緋月も緋月のお父さんもほんと、気にしないでください!」
というか、このお料理達を準備する方がタクシー代より大変だよ!!
「……理央さん……本当にありがとう……。
お礼もかねてお料理、まだまだあるからね。
どんどん食べて!」
「はい、お気持ち……ありがとうございます!
頂きます!」
そうして私たちは談笑を交えながら食事を楽しんだんだ。
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