第6話 王都に向かうよ

 僕たちは王都に向かう乗合馬車に乗っている。

 今日は天気が良くて気持ちいい。


 「きゃあーー、たすけて」

 「へへへ、いいじゃねえか。」


 王都まで5日間の馬車の旅となる。

 街でテントと調理器具、保存食を買っているので安心だ。


 「きゃあーーー、たすけて」

 「おい、あそこで女性が襲われているぞ。」

 「みんな、アイツから女性を救え!」


 魔道具のテントが欲しかったけど、凄く高かったんだ。

 調理器具はコンパクトになる優れ物だ。


 「ご主人しゃま、みんな向こうで戦ってましゅよ」


 保存食は干し肉と硬い黒パンと魚の干物。

 5日間だけど、この食事はちょっと辛いかな。


 「ぎゃーー、コイツ強いぞ!」

 「あれー、たすけてー」

 「我々が救います。ご安心ください。」


 王都に行ったら、大教会に行って聖女に会おう。

 コネは無いけど、事情を説明すれば何とかなるかな?


 「駄目だ。盗賊の応援が来た。皆、撤退だ。」


 「へへへ、貴様らは騙されたのよ。

  このリック様の頭脳作戦にな!」


 欠損部位の回復って、寄付とか高いのかな?

 手持ちが足らなかったら、ナイと一緒に稼ぐか。

 成り行きで奴隷にしたとは言え、僕には面倒を見る責任があるからね。


 「お前ら、荷物を全て置いていけ。命だけは助けてやる。」

 「クッ、卑怯だぞ!この盗賊め!」


 「何とでも言え。世の中は強い者が正義なんだよ!」

 「おい、小僧、貴様も荷物をお…」


 「ファイヤ」

 「ぎゃぁーー、熱い!!」

 「コイツ、アタシまで… ぎゃぁー」


 まあ、王都に着いたら、全部分かることだ。

 今は考えても仕方がないね。


 「ひ、酷い。女性まで焼いてやがる…」

 「でも、あの女は仲間だろ?」

 「いい気味だぜ!」


 よし、王都に着いたら節約のために部屋を借りるか!

 少し安くても広い部屋がいいな。

 消火活動の特別報酬でC級になった事だし、沢山稼げるだろう。


 「すみません。まだ出発しないのですか?」


 「き、君…盗賊はまだ仲間がい…」


 ファイヤ ファイヤ ファイヤ ファイヤ


 「ぎゃー、助けてくれぇ!」

 「熱い、消してくれー」


 「早く王都に行きたいんですけど。」

 「そ、その、盗賊達の後始末を…」


 「え? ゴミが燃えてるだけでしょ?

  気にせずに行きましょう!」


 馬車は出発した。ゴミを放置したまま。

 誰かがウォーターで消火をしたみたいだ。どうでもいいけど。


 王都に着いた。その後は特に何も無く、順調な道のりだった。

 盗賊の件を同行者から感謝されたが、気にしないでと伝えて解散した。

 

 冒険者ギルドに向かい、クエストをチェックしてから

 宿屋に向かうことにする。


 ギルド内が騒がしい。何かあったみたいだ。

 僕は受付で事情を訪ねることにする。


 「すいません。何かあったのですか?」

 「魔王が復活したのよ、今、王城に使者が来てパニックになってるわ。」


 「あ、そうなんですか。」

 「君、反応が軽いね。」


 「え? だって僕は関係ないですし。」

 「関係あるわよ!この国が占領されるかもしれないのよ!」


 「じゃあ、他の国に行きます。」

 「他の国も一緒よ!」


 面倒な事になっていた。魔王か、ファンタジーな役職名だな(笑)

 直接は関係無いので、気にせずに宿を探そう。


 「ナイ、宿屋にいくぞ。」

 「あい」


 ギルド近くにあった宿屋に空室を訪ねる。大丈夫とのこと。

 10日分の宿泊費を支払って、寝床を確保した。


 「ナイ、大教会を探そうか。」


 都の中心に大きな建物があった。これが大教会だろう。

 なんか人型の鳥みたいな魔物が大教会の周囲を飛び取り囲んでいる。

 ガーゴイルか。蝙蝠を大きくしたみたい。きもっ。


 「ナイ、大教会は来客が多くて忙しそうだ。

  ご飯を食べに行こうか。」


 「ご主人しゃま、あれ倒さなくていいのでしゅか?」

 「いいんじゃない。魔王からの使者っぽいし。」


 すると白く豪華な馬車が大教会の前に止まり

 中から煌びやかな法衣を来た女性が出て来た。

 その女性は唖然として立ち竦んでいる。


 「ねえ、中に入りたいの?」


 僕はその女性に聞いてみた。


 「貴方は?」

 「僕はキミヒト。冒険者だよ。」


 「大教会は私の家同然の場所です。こんな状況になってしまって…」

 「ふーん。これを倒したら聖女様を紹介してくれる?」


 「はぁ?貴方が倒すのですか?」

 「うん。そうだよ。」

 「ふんっ。もし倒せたら聖女でも何でも言う事を聞いてあげるわ。」


 彼女はこの事態を収集してくれれば、聖女に合わせると約束してくれた。

 僕はガーゴイルを倒すことにする。


 「ナイ、ガーゴイルが落ちてきたら首を切るんだよ。」

 「あい。ちょんぱするでしゅ。」


 僕とナイは大教会に向かって走り、片っ端からガーゴイルを殴る。

 飛んでいるヤツはウィンドの魔法で叩き落とす。

 地面に落ちてきた獲物の首をナイは鮮やかに切り裂く。

 周囲から悲鳴が聞こえる。血肉が飛び散り一面が凄惨な光景となる。


 僕とナイは笑いながらガーゴイルを潰し切り裂いてゆく。


 (フフフ、ナイは強くなったな。後でご褒美をあげないとな。)


 「笑ってやがる。や、ヤツら狂ってる。あ、悪魔だ。」

 「ガーゴイルが逃げていくわ」

 「うわ…あの小僧、逃げるヤツにも容赦ねえ」

 「おぇ、おぇぇぇ」


 大教会の周囲が真っ赤に染まる。全てのガーゴイルを倒した。

 そして血塗れの僕とナイが馬車に向かって歩き出す。


 「ひぃぃ、コッチに来たぁぁ」

 「た、助けてーー」


 周囲の人々が僕たちを見て逃げていく。失礼な連中だ。

 そして、終わったと報告するために馬車の女性に近づく。


 「ひぃぃぃ、こないで!」


 「え?なぜ? 僕たちはガーゴイルは全部倒したよ。

  約束をしたよね?

  なぜ逃げるの…?

  聖女様に会わしてくれるんでしょ…?」


 「き、貴様ぁ!聖女様に近づくな!」


 護衛の男が僕たちの前に立ち塞がる。


 「君、僕たちを騙したの?

  聖女であることを隠して騙したの?」


 「い、いやぁぁぁ、悪魔ぁぁぁ」


 遠巻きに見ていた人からヒソヒソと聞こえる。


 「おい、あの小僧は悪魔らしいぞ…」

 「何だって!あの女の子もか?」


 「ああ、首狩族らしい。」

 「恐ろしい…」


 「聖女様に近付くために仲間のガーゴイルを皆殺しにしたそうだ。」

 「やはり悪魔は恐ろしい。」


 「聖女様を守れ!!」

 「そうだ、悪魔は帰れ!!」


 遠巻きに見ていた周囲の人々から罵声を受ける。

 なぜ?僕たちは大教会を救ったんだよ?

 なぜ悪魔って言われるの?


 なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?


 「おい…聖女とやら、貴様は僕を裏切り悪魔と罵って陥れた。

  この報いは必ず受けてもらう。」


 「僕は普通のC級冒険者だ。

  この子の傷を治してもらいに王都に来た。

  大教会のこの危機を救ったので、聖女に会って傷を治してと

  お願いするつもりだった。」


 「しかし、もういい。傷は自分達で何とかする。

  お前は僕を怒らせた。後悔するがいい。

  一つ忠告してやる。

  月の無い夜は気をつけろよ?

  最近、王都も物騒だと聞くからな。」


 すると護衛の男が叫びだした。


 「貴様ぁぁぁ! 聖女様を脅迫するつもりか!」


 「どこをどう聞けば脅迫になるんだ?この三下が。

  お前は聖女のケツでも眺めてしごいてろ!」


 「この聖教騎士団のボンデを愚弄するのか!」

 「おい、次一言でも喋ったら殺す」


 「……グッ」


 聖女に近付き「ガシッ!」髪を掴み上を向かせる。


 「おい、これがお前が騙した男の顔だ。忘れるなよ?」


 僕は聖女様にお別れの挨拶をして、この王都を出たんだ。

 色々とあったからね。ちょっと王都に滞在できなくなった。


 隣国行きの馬車に乗ろうとしたんだけど、乗せてくれなかった。

 悪魔と罵られ、お断りだってさ。


 だから仕方なくナイと歩いて隣国に向かってる。宿代が無駄になった。


 ちょうどその時、上空を何かが飛んでいた。小型の竜みたいだ。


 「ナイ、あれを捕まえて足にしよう!」

 「あい。ご主人しゃま。あれ欲しいでしゅ。」


 僕は魔力を最大に込めてウィンドの魔法を小型の竜に放った。

 すると竜は先の方に墜落していった。


 「ナイ。走るぞ!先に行く。ゆっくり追いかけて来い!」

 「あい」


 僕は墜落した竜の方に全力で走った。 


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