ダンジョンで現地妻を組織ごとに作っていた主人公はヒロインたちの修羅場でも興奮を禁じ得ない。

三流木青二斎無一門

第1話

魅惑的な肌を晒しながら、俺の顔を見つめている青の瞳。

チャイナドレスを着込んだ銀髪の女性が、ゆっくりと俺の方に近づいていた。


「ワン…ふふっ」


楽しそうに、嬉しそうに、近づいて来る彼女を、俺は帽子の奥の眼で見つめている。

煙管を加えている彼女は、口から漏らす紫煙が部屋の中に充満した。

彼女の口元から発せられた吐息は、花の様な匂いがしていた。

これは、彼女が銜えている煙草が、普通の煙草では無く、迷宮遺物産の嗜好品で、煙草の様な臭みのある臭いは無い。

それよりも、この花の匂いはつまる所、彼女の吐息が混じっていると言う事になる。

匂いを覚えると言う事は、間接的に、彼女の吐いた吐息を自分が喫い、それが体内に循環していく様なものだった。

この閉じられた空間では、彼女の吐息意外にも、当然、俺が吐いた息も混じりあっている。

今、この部屋の中には、俺と彼女しか居ない、空気が溶けあい、体も融け合いながら、二人が一つになる様な感覚。

まるで逆流する太極だった。そんな事を知ってか知らずか、俺の上司であり、店主である、たお雹華ひょうかは、ゆっくりと俺の方に近づくと、煙管を俺に近付ける。


「貴方も、喫う?」


差し出された煙管の口先には、彼女の薄い紅の口紅が唇の形を成して付着している。

恍惚とした顔を浮かべている垰店主は、俺に煙管を喫って欲しいと願っている。

それは同族故の繋がりを求めている為だろうか、同じ会社に勤めていると言っても、実際の血族では無い。

しかし、天涯孤独の身である俺と、垰店主は、互いに独り身であり何かしらシンパシーの様なものを感じているのかも知れない。

と、有体な事を考えているが、彼女の眼とその頬を見れば、密室の中で自らのものを差し出すと言う行為に対して、気が付かない程に愚かでは無い。


「では…」


垰店主から渡された煙管を喫うと、彼女は離れて、髪結いを解いた。

普段は髪の毛を毬の様に纏めているのだが、それを解いたと言う事は、…俺は煙管から口を離して息を吐くと、体中に痺れの様な感覚が走る。

基本的に、彼女の喫う煙管のタネには、様々な薬草を用いている。

疲労回復効果だったり、眠気を抑える薬草、迷宮で採取出来る草には様々な効果があるが、彼女が喫っていたのは、どうやら興奮作用を引き起こす薬草だ。

精力を増す薬草、煙から摂取する事で素早く血液に浸透していき、徐々に肉体の内側から熱を帯びて来る。

それは彼女も同じものであり、腰まで伸びた銀髪を揺らしながら近づくと、腰元のスリットから、すらりと伸びた足が、太腿の付け根まで伸びていた。

独特な旗袍である彼女の服は、その下にガーターベルトなどを着けている。靴下がズレ落ちない様にする為の道具であると言うのに、此処までも魅惑的に見えるのは彼女の艶も含まれている為だろう。


「体、苦しい?安心して、貴方の苦しみは、私の中で解放してあげる…」


ソファに座る俺の上に、垰店主が乗って来た。

既にその気であるらしく、俺の心臓は少なからず高鳴っていた。

その高鳴りは、俺が望んでいたものだ、元来、俺が生まれて来て、生きて来た人生の中で、常に傍にあったのはこの心音だけ。

だから、俺はこの音を聞き続ける為に生きている、彼女に迫られ、抱き締められ、その体を貪る事で、この心音が鳴り続けるのならば、喜んで俺は垰店主と時間を共にする。


人が滅多に来ない店主の部屋。

この時間帯だけは、店主と店員と言う関係性は廃され、男女の関係、爛れた仲と化す。




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