ブラックℂ



ドゥゴゴゴゴッ……

遠くから激しい地鳴りと砂煙がこちらに向かって来る

「来るぞ 構えろ」

支持を出しているのは未だ15歳ぐらいの貴族いや王家の令嬢のような容姿を持つ

美しい少年である

彼の名はクロノス

S級以上の力を持ちながら王侯貴族からの強制依頼を嫌いランクをⅭから上げない

ようにしている ブラックカードのⅭランク冒険者

「バドン 俺があいつらの足を止める その間に皆で首を切り落としてくれ」

冒険者ギルド長のバドンは頷くと「おい 皆 聞いたな 作戦通りにやるぞ」

王都の北門に集まった冒険者達が「やってやるぜ」「任せろ」と怒鳴り声を上げる


 地龍なんて呼ばれているが ただのでかい蜥蜴だ

蜥蜴であれば 寒さに弱い

100メートル程に近付いた時に「氷結」と蜥蜴達の足元に氷魔法を撃つ

奴らは足元が氷漬けになり動けずに首だけを動かしている

「今だ!やっちまえ」

「「「うおおおおおおおおお」」」

冒険者達が一斉に蜥蜴に押し寄せる

ザスッ スパン ドゴッ 次々と蜥蜴の首を切り落としていく

「一番デカくても十メートルくらいか 助かったぜクロノス おーい お前ら

撤収だ 剥いだ皮はちゃんとギルドに持って来いよ」

「しかし 王城が危険になるかもしれないのに 相変わらず騎士団は来ないんだな?」

「奴らは戦争で忙しいからな」

このリディニア大陸は人族と人族 人族と魔族 魔族と魔族 全ての国がどこかと

戦争をしている 食料を奪うためだったり 領土を広げるためだったりと理由は

色々あるらしい



 大陸のの中央ジョイ王国 その北城壁の外にある寂れた教会の屋根の上に

座って 城壁をを囲むように作られた外街を見ていた



背中を丸めて頭を垂れてポッケトに手を入れて家路をノロノロと進む大人達

自分の影を追いかけて夕闇に溶けていく子供たち


ポツポツと明かりが家々に灯り 笑い声や話声が風に乗って聞こえて来る


月が上る頃 クロノスは教会の屋根から飛び降り併設されている孤児院の食堂へ

向かった


 食堂に入ると今は孤児院の代表になっているマリアが小走りで近づいてくる

赤い髪にブルーの瞳でそばかすが可愛い女の子だ

「クロノス また協会の屋根に居たの? ちょっと相談があるんだけど 教会を解体するか立て直さない?

今日も子供が入り込んで床が抜けて怪我しちゃったのよ」


「そうか 金がいるな じゃあ久しぶりに冒険者でもやってくるか 明日にでもギルドに行って来るよ」

[悪いわね お願い]


 朝 目を覚まして街を見ながらゆっくりとギルドへ向かう

北門から王都に入りギルドの扉を開けると喧噪と酒の匂いが溢れていた


 受付へ向かおうと人混みの中を掻き分けて行くと 不意に背中を叩かれた

「よう嬢ちゃん 新人か? 俺たちBランクパーティーの『漆黒の狼』が教育してやるぜ 

もちろんお代は頂くがな」

「他ををあたってくれ 邪魔だ」


 「なんだと このガキ 人が親切に言ってやってるのに」

いきなりパンチを放ってきたので軽く右横に避けて左横にきた顔面に拳を叩き込む

バキメキと嫌な音を立て 男は錐もみしながらギルドの壁をぶち壊して道路に投げ出された

「何するんだよこのガキ」

連れと思われる女が杖を向けて何やら呪文を唱え始めた

「ウィンドカッター」クロノスが呟くと女の杖が中ほどでパキンと折れた

「えっ ああ?」

折れた杖を呆然と見ている女の懐に入り込みさっきの男が開けた壁に向けて放り投げる

「ガキ ちょっとやりすぎだ」細身の男が距離を詰めてきた

上段から振り下ろされる剣をクロノスは(遅いな)と思いながら二本の指で受け止めた

細身の男は力を込めて剣を引き抜こうとするがビクともしない

クロノスは指二本で剣を折った

 

「ひぃっ」腰を抜かした男に近づこうとした時

「貴方たち 何をしているの」

クロノスの専門受付嬢のマミエルが割って入ってきた


「よう久し振り マミエル こいつらが教育してやるって言うから 必要無いって教えてやったんだ」


マミエルは男を見下ろしながらため息をついた

「相手の力量も測れないなんて あんた達見たことないけど どこの誰?」

「俺の名前はヤブー 外でのびているのがリバップ 杖を折られて泣いているのがセンリバ 三人で「漆黒の狼」

っていうBランクのパーティーをやっている」

「あんた達 ここは初めてね でなきゃ ブラックⅭに手を出そうなんて馬鹿はいないわ」

「ブラックⅭ!?」


「あんた達も知っての通りランクB以上になったら国や貴族からの指名依頼を断れないし戦争への参戦も義務になる

だからわざとランクを上げない冒険者がいるのよ。その中でS以上の実力を持っている者がブッラク カードのⅭランク

 いわゆるブラックⅭね そんな子にBランク如きが何を教えるのかしら」

「うぐぐ……」

ヤブーはセンリバの首を掴みリバップを引きづってどこかへ走り去ってしまった

ギルド内は大爆笑に包まれた


 「マミエル 世話掛けたな 何か金になる依頼はないか?」

マミエルも孤児院の出であるため 少し心配そうな顔で聞いて来る

「何 孤児院がピンチなの?」

「ああ 最近またガキ共が増えたからな 食料は大丈夫なんだが その他にも色々かかるしな」


「じゃあ 手っ取り早くダイヤコングでも狩ってくる?」


「いいね でも討伐クエストなんかでているのか?」


「クエストは出てないけど オークションにかければそれなりのお金にはなるわよ」


「そうだな 取り合えず すぐに金になる討伐クエストを教えてくれ」


「じゃあ 北の森に巣を作っているワイバーンの殲滅は? 近くでダイヤコングも目撃されているわ」


「分かった ありがとう 取り合えずワイバーン殲滅してくるよ 時間があったらダイヤコングも」


「じゃあ 手続きするからちょっと待っててね」


受付から離れ 併設された酒場で時間を潰していると

「あれがブラックⅭか」

「あんな子供がかよ」

「かわいい」

クロノスを盗み見ながらヒソヒソと話す声が聞こえる


「お待たせ じゃあ頼んだわよ マリアに宜しくね」

マミエルがニコニコしながら依頼票を持ってきた


「ああ ありがとう 偶には顔を出してくれるとマリアも喜ぶぞ」

クロノスは依頼票を受け取ると北門を出て北の森に向かって歩き出した


 二時間程で森に着き鬱蒼とした中に入っていく

ワイバーンの探索がてらダイヤコングの気配も探していると先にダイヤコングを見つけたので木の上に隠れダイヤコングの行動パターンを把握し その動線状に罠を仕掛けておく

森の奥に進みワイバーンの巣を見つけ 瞬間移動で真横に近付き一頭づつ首を切り落としていく

Bランクパーティーでやっと一頭を倒せると言われているが クロノスには造作も無い

倒したワイバーンを次元収納にしまうとギルドに向かった

解体所で16頭分のワイバーンを取り出し報酬の金貨64枚を受け取る


教会に帰りギルドで受け取った金貨をマリアに渡し 汗を流すため風呂場に向かう


 風呂場は浴槽はクロノスが作ったが 沸かすのは魔法の練習も兼ねて子供たちにまかせている

風呂から上がり 水を飲もうと食堂に行くとマリアがお茶を飲んでいた

「お疲れ様クロノス 今 子供たちを寝かしつけたとこよ」

微笑み クロノスのお茶を用意しながら

「子供の頃 一緒にお風呂入ってたから あんたが男だってのは知ってるけど

あんたそこらの女性より本当に綺麗よね」

濡れた黒髪に漆黒の瞳 通った鼻筋薄い唇に白磁のようなきめの細かい肌を見つめる

(そう言えば ギルドでも「嬢ちゃん」って言われたっけ)

受け取ったお茶に口をつけながら思いだす

この容姿とブラックⅭのランクの為 孤児院の子供や街の女性からも人気がある それどころか頭のおかしい貴族から 囲われそうになったこともある

お茶の礼を言って自室に戻り

明日はダイヤコングの様子見だなと考えつつベッドに潜り込み目を閉じる

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