クラリスの友達と父ちゃん

翌朝 目を腫らしたクラリスと元気いっぱいのハイジ 眠そうなノエルさんを連れて浜辺に行く

昨日の続きで泳ぎ方を教える ハイジもクラリスも浮袋無しでは やっぱり少し怖いみたいだ 

泳ぎ疲れて 木陰で軽く出店の串を食ってると 昨日 イカ退治を知らせに領主邸に走って 慰労会にも参加していた少年が近づいてきて クラリスに話しかける

「君 本当に取り替え子なの?」

「ええ そうよ」寂しそうに 俯きながらクラリスが答える

「そう 実は僕も取り替え子なんだ!! 僕以外の取り替え子の子に会えて嬉しいよ」少年は嬉しそうにクラリスの顔を覗き込む

「それに 僕もエルフなんだ」

頭に巻いていた布を解いて長い耳をクラリスに見せる

「あっ!!」クラリスは驚いて 少年を見つめる

「僕はラテって言うんだ よかったら 友達になってくれないかな?」

ラテはモジモジしながら クラリスに手を差し出す

「喜んで!! 友達になってくれて ありがとう」とびっきりの笑顔で答えるクラリス そこにハイジが割り込んで「じゃあ 私とも友達になりましょ」とラテの空いた手を取る


それを木陰から眺めながら 母ちゃんに聞いてみる

「ところで 父ちゃんって 何処にいるんだ?」

「さあねえ 何処にいるのかね」冷やした酒を飲みながら他人事のように答える

「大体 私らフェンリルは子育ては雌の仕事だからね 妊娠中は餌を持ってきてくれたり 周りの警戒をしてくれたりして 守ってくれるんだけど 子供が生まれたら フラっといなくなるのさ」

「へー そんなものなのか?」

海に浮かぶのに疲れたのかノエルさんは俺にもたれかかって スヤスヤと寝ている


午後からの 泳ぎの練習はラテに任せて俺も木陰で目を閉じる

ウツラウツラとしていた時 遠くの浜辺からドーン ドーンと何かが爆発する音と人々の悲鳴が聞こえてきた うっすらと目を開け 音の方を見ると大きな玉に乗った

派手な服を着た太っちょの男が両方の腕で木の棒みたいな物を何本も輪を描くように空中に投げて操っている

「なんだ? あれ……」

ハイジとクラリス ラテも俺の所へ走って来て

「「お兄ちゃん あれ何?」」聞かれるが 俺にも分からない

「取り合えず 逃げている人達を 安全な所へ誘導しよう」

ノエルさんを起こして ラテは安全な場所へ逃げるように言って 俺達は避難誘導に向かう

あの木の棒みたいのが 投げられて 砂浜に当たり爆発してるみたいだ

投げらえれた木の棒の先に親子連れがいたので 防御魔法を親子に掛けて直撃を防ぐ

爆発を防がれるとは思ってなかったのか 太っちょの男が戸惑っている

「誰だ? 俺様の邪魔をするのは?」 太っちょの男が玉を転がしながら 俺達の方へ やってくる 浮腫んだ顔に右目に星の形の黒い模様を描き 左目には涙の模様を描いている 

「貴様こそ 何をやってる?」ノエルさんが叫ぶ

「俺様は 魔王により異世界から呼ばれた魔人 道化師のカワカミ様だ!! 人族が勇者を異世界から召喚したというので 対応するために召喚されたのだ お前こそ何者だ!?」

「私は 勇者ノエルだ!! 貴様が魔王の手先なら討伐してくれる」

走り出すノエルさんだが 足元が砂の為か いつもの速度が出ない そこにカワカミが木の棒を投げてくる 俺はノエルさんに防御魔法を掛け身体能力向上の魔法もかける

「今のうちに 怪我人を診てやってくれ クラリス!!」

クラリスはカワカミの横を抜け 倒れている人達の元へ走って行った

 

あの木の棒を投げてくるタイミングが分からず ノエルさんも攻めあぐねているようだ 間を詰めようととすると乗ってる玉を転がして 遠ざかる

「ハイジ!! あいつの乗ってる玉を壊せるか?」

「やってみる!!」カワカミに近づくハイジにも防御魔法と身体能力向上の魔法をかける

「ハイジパーンチ!!」ガントレットを装着した右腕を叫びながら玉に叩き込む

物凄い音がして その後ピシッと玉に亀裂が走る

パラパラを砕け散った玉の残骸の上にドスンとカワカミが落ちる

「俺様の玉乗りジャグリングが敗れるなんて!!」

尻餅をついた状態でも木の棒を廻し続けてるのは 面倒だな あの木の棒をどうするかな?何かに当たった時に爆発するのなら火属性の付与がされてるのか? 雷を木の棒に落として連鎖で爆発しないか試してみる 

おお!! 上手くいった カワカミの周りで全ての木の棒が連鎖爆発して燃え尽きた


「な な なんだと?」

唖然とするカワカミにノエルさんが肉薄すると カワカミは自分の体を丸めて玉のようになり その場から凄い速度で離れた


「お前等 これで勝ったと思うなよ 俺様の二つ名は「パワハラの使役使い」というんだ!! 来い シロ!!」

カワカミが叫ぶと奴の影からフェンリルが出てきた

「行け!! シロ あいつらを食い殺せ!!」

「バフ!!」

フェンリルがゆっくりとこちらに近づいてくるの見ながら 後ずさりしてると

母ちゃんが飛び出し フェンリルの横っ面に前足を叩きつけた

フェンリルは「グヒン」と鳴いて横に倒れた

「母ちゃん!! 一体どうしたのさ?」何が起こったのか分からず聞くと

「懐かしい匂いがすると来てみれば さっき 話したおまえの父ちゃんだよ!! 何をやってるんだろうね この旦那は 魔人なんかに使役されるなんて 情けないったらありゃしない」

傍に寄って父ちゃんを見ると嫌な感じがする首輪を付けている

「おまえ フェンリルになにをした?」

[な~に いう事を聞かないから「使役の首輪」を付けただけだ」]

俺は首輪に向けて手をかざし 付与されている魔術を読み解く

「無駄無駄!! それは俺にしか外せないからな」 カワカミが薄ら笑いを浮かべながら 懐からナイフを取り出し「次はナイフ投げの芸だ」俺に向けて投げてきた

俺は防御魔法で防ぎながら 魔法を構築して首輪の魔法を相殺する魔法を首輪に流し込む 首輪がカチリろ音を立てて外れて落ちる

「ば 馬鹿な!!」

狼狽えるカワカミにノエルさんが剣を突きつける

「終わりだ 色々聞かせてもらおうか?」


「使役の首輪」をカワカミに着ける 術式を弄っているので 俺かノエルさんしか外せない こいつはギルドで面倒を見て貰おう

シロは お座り状態で母ちゃんに説教されている

「俺達 ギルドに寄って 宿に帰るから」母ちゃんに声をかけて 

治療を終えて戻ってきたクラリスとハイジ ノエルさんとカワカミを連れてギルドに向かう

ギルド長のガンツに事情を話し カワカミを地下牢に入れておく 

「ここで静かにしてろ 聞かれた事には正直に全て話せ」

「使役の首輪」は「隷属の首輪」の働きもあるのでカワカミに命令しておく


ガンツは「分かりました 全てのギルドと各国のトップにこの事を伝えます」

そう言って部屋を出て行った

宿に戻ると人姿の母ちゃんの前でダンディな男が正座して説教を受けている

俺を助けを求める目で見てくるが 事情が分からないのでどうしようもない

「まあ 母ちゃん 屋台で飯買ってきたから 先ずは飯にしようぜ 酒も買ってきたから」

たぶん 母ちゃんは会えた嬉しさをごまかすため わざと強く説教をしてるんじゃないかと思う なんとなくだが

今日もクラリスが尻尾に潜り込んできた 昨日と違ってはしゃいでると言うか嬉しそうだ ハイジ以外で友達が出来たもんな ところでハイジは俺に潜り込む時は裸じゃなくていいと言ってないのかな?


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