第1話勇者ノエル




宿屋に帰るとノエルさんが俺の部屋にやってきた

「なあ シリウス 聞いてくれるか?」少し酔っぱらった声で話しかける

「私はなあ 昔犬を飼ってて銀の体毛に黒い目のそれはそれは可愛い犬だった」

潤んだ瞳で俺を見つめる

「小さい時から おはようからおやすみまでずっと一緒だった そして10歳の時に

隠れスキル「シリウスへの愛」というのが発現した 私は嬉しかった シリウスへの愛が

かたちになったような気がしてな」

ノエルさんは一息つくと

「だがな13歳の時 二人で家の裏の森に入ったら 普段は居ないはずの森狼に襲われてね

私は嗜みとして剣を習っていたが 身体が固まって動けなかったんだ そしたら臆病なシリウスが

森狼達に勇敢に立ち向かって行ったんだ だが 数が違い過ぎた フラフラと倒れこんだシリウスに

奴らが群がり始めた 覚えてるのはここまでだ 気が付いた時には森狼が十数頭死んでいて

シリウスも虫の息だった 彼は体も大きかったから私一人では運べないので屋敷の者を呼んで

屋敷まで運ばせた 懸命に治療したが彼は帰って来なかった」

ノエルさんは目に涙を溜め話し続ける

「そして15歳の時に勇者の称号を得た だがそれよりうれしかったのが「シリウスへの愛」が進化して

「シリウスへの溺愛」になった事だった これで生涯彼の事を忘れる事は無い 心に彼が宿ったような気分だった」

そして 彼女は冒険者になり 数々のダンジョンを攻略していったらしい

しかし一度コアを破壊してもまた 別の場所に同じ等級のダンジョンができるそうだ

この世界にはS~℉までの等級のダンジョンがあり 等級に応じた冒険者クラスでないと中に入れない

パーティーの平均値を上げるためだけに ノエルさんを勧誘するのが多かったらしい

しばらく そういったパーティーに付き合っていたそうだが パーティーに飽きてしまいソロでやってる内に

孤高の勇者と呼ばれるようになったそうだ そんな人が何故うちなんかにはいったんだろう?

「何故 うちのパーティーに入ってくれたんですか?」俺が尋ねると

「お前の銀髪と黒い濡れたような瞳 シリウスという名前 運命だと思ったね」

ねっとりと見つめられ 思わず目を逸らしてしまう

「もう遅いし 寝ましょうか?」そう言っても自分の部屋へ帰ろうとしない

「シリウスー!!」突然叫んで抱き着いてきた ふくよかな胸なのは知ってますが それを包むプレートは鉄製ですよね

「ウギュ 痛い 痛いです」引き剝がすと 悲しい目でこちらを見てくる

「それはそうと これからは二人パーティーだな」なんかニマニマ嬉しそうに言う

「俺が 勇者とパーティーなんて!!従者 従者でいいです ノエルさんのパーティーメンバーなんておこがましいです」

「む? そうなのか シリウスがその方が良いならそれでいいが どうせなら 従者じゃなくてペットにならんか?」

「一応 俺も人としての矜持がありますので 従者でお願いします」

「一つお願いがあるんだが たまにでいいから シリウスの名を呼んだ時「ワン」と言ってくれないか?それと甘える

時は「クウーン」で頼む」

「俺の話 聞いてました?」呆れて呟く













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