naimed作品におけるプロローグ&エピローグ集

naimed

[Divine World]イラザス鉱山の囚人

 犯罪者を労働させる鉱山イラザス鉱山。発生している地熱と地場が原因でスキルが従来通り使えなくなる恐ろしい場所。囚人たちへの配膳役で働いているモーリィはそこで奇妙な囚人と出会う事になる。


「決死のタイムリープ」番外編です。第8話~エピローグまで読んで頂けると今作をお楽しみ頂けます。

 また本作の主人公モーリィは「緋き牙と碧き路」の碧の章でゲスト登場します。






プロローグ


 鉱山の中の広場。地熱からくる熱気とそこで採掘作業をしている男達の体臭でむせ返りそうになる。ここに入ってから3ヵ月経つけどこの空気には慣れそうにない。

 食料とトレイのたくさん入っているワゴンを止めて大声で叫ぶ。


「おぉぉぉぉぉぉい!夜メシだぞぉぉぉぉぉ!」


「おぅ、待ってたぜ!」

「早くよこせよ!」

「喉から手がでるぜぃ!!」


 ガラの悪い口調とは裏腹にきちんと整列して行列を作る坊主頭か短髪の男達。アタイは手早くパンとスープの入ったトレイを渡していく。愛想ふりまきなんて出来るか。


 そんな中、痩せたちょっとイケメン男がトレイを受け取ろうとしてボヤく。


「けっ、またカタぇパンと薄味スープかよ!変わり映えしねぇな」


 こんなトコで変わり映えもクソもないだろうに。顔はイケてても頭はバカそうだなこりゃ。アタイはトレイを引っこめて叫ぶ。


「文句あるなら食わんで結構!おいみんなぁ!このバカタレがメシ奢ってやるってさぁ!」

「「「ぅおおおおお!コイツぁラッキィィィィ」」」


 騒ぎ出す男達、ったくうるさいねぇ一人前しかないのに。


「クソが!余計なこと言ってんじゃねぇぞこのアマ!!」


 イケメン男が右手でアタイの腕を掴む。男のクセに力が無いねぇ。


「お?なんだいこの手は??出るトコで」

「ぅが!・・・てめぇ!」


 気がつけばイケメン男の右手首は掴まれていた。その拍子にアタイの腕が外れる。その手首を掴んだのはもっと背の高い男だった。ケガでもしているのか右目を閉じたままだ。


「・・・私の分をくれないか?後ろのヤツらが痺れを切らしてる」

「あいよ!ほら、渡してやるからどんどんきな!!」


 再び配膳作業に戻る。これが終わらないとアタイも飯が食えないからね。



 メシを配り終えたアタイはその場で自分の分も食べる。確かにイケメン男が言ったように変わり映え無い最低限のメシだ。まぁ食えるだけでもありがたいトコだけどね。



 アタイはモーリィ。

 元はアブン村の出身だけど故郷でひと悶着起こしてここに追放された。傷害罪で捕まったアタイには刑期らしい刑期は無く2~3日で釈放された。

 何せこの鉱山は殺人や違法取引などアタイとは比べ物にならない犯罪を犯してきた連中の来るところだから。


 けど故郷で問題を起こした手前帰りづらかった。そこでここの監督者に相談してみると囚人への食事の配膳役が足りないそうだった。


 それ以来ここでこの仕事をやっている。囚人達は札付きの犯罪者達でおっかないヤツラだって聞いてたけど、スキルが使えない事やアタイら従業員に手ぇ出したら更に刑期が重くなる事もあって意外と従順だ。


 口は悪くがさつで即決でものを決める、いわゆる女らしくないアタイにとっちゃここの仕事は合ってるっぽい。何せ男共に面倒な駆け引きをする必要は無いからね。


 さて、食器とトレイを回収しなきゃね。


「おぅ、ごっそさん!」

「この時間と寝るのだけが楽しみだぁ」

「今度ぁ一緒にメシ食おうやねぇちゃん!」


 次々とトレイを返しに来るオッサン達。聞いてると欲望塗れで情けない限りだけど、ここで出来る事と言えば仕事とメシと寝ることぐらいだから当然か。


 お次は・・・片目を怪我した男か。


「ごちそうさま、2人分頼む」

「おや?アンタがもう一人分持ってきてくれたのかい?そういやさっきのイケメン野郎は」


「ヤツならその辺でうじゃけている、君のお蔭で危く食べ損ねそうになったからな・・・次に来る時は気を付けた方がいい」

「はん、変わり映えしないメシに文句言ったんだ・・・要らなきゃ食わなきゃいいんだしね、ご忠告ありがと!」


-終-

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