第11話
「そばに来ないで!この子はわたしだけの息子なの!」
わたしはそう叫ばずにいられなかった。
ライアンは、何かを言おうとしていたがわたしは聞きたくなくて耳を両手で押さえて聞こうとしなかった。
彼の口から離縁という言葉を聞きたくなかった。
自分は離縁しようと思っているくせにいざとなると彼の口からは出て欲しくない。
矛盾だらけの自分の感情に、もどかしさと憔悴した気持ちで、わたしはウランを連れて自分の部屋へ逃げた。
ウランはわたしに抱っこされて嬉しそうにわたしの髪の毛を握って遊んでいた。
わたしはウランを抱きしめその場に座り込み、涙が溢れた。
久しぶりに会ったライアン。
どんなに強がろうとわたしはまだライアンを愛しているんだと気付かされた。
それから数日わたしは息子と二人で部屋に篭り、ライアンを出来るだけ避けた。
そして元生徒会メンバーで会う日になった。
登城して王宮内のロバート殿下の私室に、みんなで集まる事になっていた。
ウランもみんなに会わせたいので連れて行く事になった。
わたしが子どもの頃から付いているメイドのアナンと一緒に王宮へ向かった。
「みんなと会うのは久しぶりなの。手紙ではやりとりしていたけど、全員に会えるなんて嬉しいわ」
「ミシェル様、久しぶりに笑顔を見れてわたしも嬉しいです。王都に来てからミシェル様がずっと暗い顔をされていたから心配しておりました」
「心配かけてごめんなさい。アナン、わたしね……ライアンとどう向き合えばいいのかわからないの」
「ミシェル様……わたしの口からは何も言えませんが……一度話し合われた方がいいと思います」
「そうね、逃げてばかりではいられないわよね」
王宮に着くと殿下の私室へ案内された。
久しぶりにみんなと会えて話は盛り上がり気づけば何時間も話していた。
そして仕事のこともお互い協力出来ることをしていこうと言う事になり、細かい打ち合わせを個々で行い、元副生徒会長のジョージが纏め役として動いてくれる事になった。
帰ろうとした時、殿下がわたしを引き止めた。
「ミシェル、話しがあるんだ。少しだけ時間を貰えないか?」
わたしはみんなと別れてウランをアナンに預けて殿下と話をする事になった。
もちろん二人きりだと後々問題になりかねないので、アナンに近くにいてもらった。
護衛達も話が聞こえないくらい離れた場所に控えてくれていた。
「ミシェル、君の父上には打診しているんだが。
………僕たち王族の結婚は政略的な意味合いが強くてね、子孫を残す事と政略的な関係など利益を求めた結婚になるんだ。
そして僕ももうすぐ結婚する」
「殿下おめでとうございます」
わたしは今までみたいに気軽に殿下と話せなくなるのは少し寂しいけど幸せになって欲しくて笑顔でお祝いの言葉を送った。
「……ありがとう。いや………ミシェル…
彼女と僕にはお互い愛情はない。彼女も結婚に伴い恋人を連れて来る。僕も出来れば君とずっと一緒にいたいと思っているんだ」
「へ?」
わたしは突然の話しに、変な声が出てしまった。
「驚いたよね?僕は学生の時から君のことが好きだったんだ。君にはライアンという婚約者がいた。結婚したし諦めていたんだ。
君が幸せになるなら諦めるつもりでいた。
だけど君は離縁を考えている。だったら僕と結婚は出来ないけど愛妾として一生そばにいて欲しい。大切にするから」
「愛妾?え?」
「ごめんね、呼ばれ方は印象が悪いよね。でも王族の愛妾は恋人、愛しい人って言う事で、蔑まれたり辱められたりする事はないんだ。
君を大切にする、愛しているんだ」
「殿下……わたしにはウランがいます。あの子はどうなるのですか?」
「ウランは、ライアンに引き取ってもらうことになるが、そのあとライアンが再婚したら君の父上がウランを引き取る予定だ。
そうすれば君がウランに会うのは自由にできる。ウランを王族には出来ないし、君と僕の子どもも王族として王位継承権を与えて上げる事は出来ない。でも君の実家の子どもとして貴族として生きていける」
「殿下、それは王命ですか?それとも貴方自身の言葉ですか?」
「僕自身の本心だ。いきなりだし混乱するのはわかる。でも考えてみて欲しい」
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