第6話 殿下、黙らせる
僕とヴァイオリンの魂であるフルーレは、仲良く話していた。
そういえば、なんで僕はここに呼ばれたんだろう?
「ねえねえフルーレ、そういえばなんで僕をここに呼んだの?」
すると、フルーレは顔を真っ赤になってしまった。忘れていたらしい...。そ、そういえば僕も忘れていたのだけど、ヴァローナを待たせていることを思い出した。
「ごめん....、完全に忘れてた...。」
「だ、大丈夫だよ。僕もさっき思い出したんだ。」
しょんぼりしながらボソッと「そうなの?」と言って、フーッつと一息ついてから喋ってくれた。
「えっと、僕がここに呼んだのは...。今君は苦痛な日々をなくそうとしている。僕を使って黙らせてやりたい奴に演奏をして欲しいんだ。」
「えっ?...なんで?」
絶対失敗するじゃん
「今の君なら大丈夫!絶対できるよ。」
「うーん...。」
「できなかったら、僕が助けてあげる!!だから大丈夫。じゃあもうそろそろ戻りな。頑張ってね!!」
満開の笑顔を僕に見せた。
すると、僕の視界がまた光で白くなった。
「えっ、ちょっっっ、まっっ...。...」
「殿下!大丈夫ですか!!殿下!」
誰かが僕を呼んでいる...。
「うっ、うう...。あれ...、ヴァローナ?」
そこには、少し泣きそうになりながら僕を呼んでいるヴァローナがいた。
「はぁ〜良かった。」
「ご無事で何よりです。殿下。」
サリミーが珍しく表情に心情がにじみ出ている。
よっぽど心配かけちゃったんだ...。でもなんか淋しくなくなってきたし、勇気も少し出てきたかも...!
そう思っていると、少し遠くから女の人の声が聞こえて来た。
「ん? 誰の声かしら?」
どうやら、ヴァローナも聞こえているようだ。
「旦那様!お待ちくださいませ、旦那様!!」
こ、この声はレーヴだ!!って言うことは...嫌な予感がする。
*****
なんだか、騒がしいですね。なんの騒ぎですか。
「旦那様!お待ちくださいませ、旦那様!!」
この声は、レーヴ!また、旦那様がお怒りなのですか!
いくら青年相手だとしても旦那様の限度感覚はおかしい。
ヴィルト殿下はの状態は?絶望的な目で震えている...。それはそうだ、俺だって立場が本人だったらそうなる。
「坊っちゃん、下がっていて下さい。ヴァローナも坊っちゃんについていてください。」
「わかりました。殿下、ゆっくりで大丈夫です。少し後ろに下がりましょう。」
すると、予想外のことが起こる。
「でも、大丈夫。ぼ、僕にはフルーレがついている。そう、大丈夫大丈夫...」
え?下向いてなにか言っている。
「殿下、どうされましたか?」
すると、殿下は思いっきり顔を上げて
「僕は、大丈夫。今度こそ成功させなくちゃ」
!!!!
今なんと仰った?!
「僕が変えないといけないんだ!この状況を。だから、逆にサリミーは、下がって!ヴァローナは僕をフォローしてくれると助かる。」
ちょ、え!?
「かしこまりました。では、私は殿下をフォロー致します。」
ヤバイ...、これはまずい。ちょっとお待ちくださいませ。本当に、流石にまずいです。それは!!
「お待ちくださいまっ!キャア!!」
ドスっ
しまった、こうしているうちに来てしまった。
「うグッ...!」
「お前らは、黙っとけ!!でなけりゃあ、首にするぞ!」
「うっ...!」
レーヴは蹴っ飛ばされ、立てなくなっていた。レーヴも限界だ。でもここまで、時間稼ぎをしてくれたからまだマシだがまずい。
*****
「おい、ヴィルト!何をしている!!ヴァイオリンは弾けるようになったのか?!」
でも、無視をした。俺とヴァローナは、気持ちを集中させてヴァイオリンを構えるている。
「おい聞いて...いるのか?!!」
思いっきり殴ろうとした直後
「お父様ご心配なく...。」
と軽やかにに怒り狂った拳を避けた。
「もう俺は昔の僕じゃない。お父様の暴力ももう怖くない。だって、もうできるのだから。」
と冷酷な声と赤い目を光らせてお父様を威圧した。
「なっなんてぶ、ぶ無礼なやつなんだ。お前は誰に向かって...」
ああもう、うるさいなあ。
すると、ヴァローナは弓を少し上げ今弾き始めるようとしている。ちょどいい。
ザン゙ッ
重力が一気に重くなる。いや、俺が圧をかけた。俺の怒りで静かに圧をかけ、お父様を逃さないように当たりを赤い結界で張った。
俺は、もう逃さない。そういう気持ちでヴァイオリンを弾いているが、殺してはいけないことを忘れてはいけない。なんでって?それは、俺が今まで味わってきた気持ちをやられた年だけやるためだよ。それ以上やっても、別に意味がない。旧国王陛下が居なくなってしまったら困る人たちもいるだろうし。
そして、曲は終盤に差し掛かった。怒りで少し髪の毛が逆立ち目はさらに赤く光った。辺りは、風が吹き始め黒百合が開花していった。
ザン!!
終わった。お父様は腰が抜けて立てないようだ。
「お父様、これ以上屋敷の者や俺に暴力を振るうとおっしゃるなら俺は俺なりの考えがあるので覚悟しておいたほうがいいですよ。」
…
口をパクパクさせて何か言いたげだが、俺は心底どうでも良かった。
ヴァローナとサリミー、レーヴの方を見た。
「すまないね、力を貸してくれてありがとうヴァローナ。サリミーも心配してくれてありがとう。レーヴ、大丈夫かな?痛いところがあったら俺が治癒の魔法で治してあげる。」
とにっこり言った。
「殿下お見事でございます。心配を少々しましたがいつの間にかこんなに上達していらっしゃるなんて驚きました。」
サリミーは、きょとーんとしながら言った。
「同感です…驚きました。」
レーヴもきょとーんとしていた。
ヴァローナだけはにっこり褒めてくれた。
「さすが殿下。スイッチさえ入れば強い、そう私は初めてお目にかかった時思いました!」
そうして、暴力に恐怖で怯える時代に幕を下ろしたのだった。
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