闇黒世界で一人、Nagoya Spiel Sinfoniker

ヴァルカの密告者

第1話 漆黒の世界にてさ迷う

快晴の夜空に蒼き月。時が過ぎ、どこからか来た雲が雨を降らし始めた。その雨夜の道に一人歌を歌いながら心踊らす少女がいた。それは、私「天霧利烏」だった。まさか、こんなことが起きるとは...


今日の午前中の授業が終わり、校内中チャイムが鳴り響く。ザワつく教室教室の空気。私には、まさに人種が合わない空気。とてもじゃないけど、この空間に存在しているだけでも一苦労する。

「はー...。」

一様これから40分間休み時間だけど、私にとって地獄の時間。

お弁当を友達と食べ、話を合わせなければならない。私にとって、自分の気持ちに逆らう場。...。

「お昼ごはん食べよっ!」

ああ始まってしまった。

「お腹減ってマジ死にそう。はよ食べよ!!」

他のグループでは、最初から最後まで話し続けるが、私達の間では、食べているときは話さないのが常識、食べていても口の中に入っていないとき以外は喋らないような流れになっている。

「ごちそうさま。」

二人でそう言うと、いつも通り話し始めた。

部活中や友達が面白いことをしたときのこと、コーチや先生と自分が嫌いな人の悪口...。私にとって最も面倒くさい話、恋バナだ。

「利烏ちゃんは、好きな人いないの?」

「いないいない!マジでいない。」

「でも、利烏ちゃんを好きな人はいそうだけどな...」

げっ...。新しい情報だ。

「だっ、誰かな?」

「う〜ん。教えな〜い!!」

分からないことには、対策を立てようがないじゃん。

一人で「がちょーん」となっていると、一人の男子がよって来た。

神室空のあだ名で、かむろちゃんと呼ばれているらしいから呼んでいる。

「あっ、かむろちゃん。どうしたの?」

「暇だから、来てみた。何してんの?」

「まっ、まあ色々話している感じかな..。内容は内緒。」

「え〜、気になるじゃん。まあいっか。そういえば、リクエストした本着たらしいから、図書館行かねえ?」

思わず本当の喜びが顔に出てしまう。

「マジ!?行く行く!今から行こっ。音羽は来る?」

「いいよ、二人で行ってきなよ。」

「じゃあ早く行こうぜ。司書の先生も待っているからさ。」

そうして、私利烏と神室ちゃんは教室を後にした。

 図書館につくなり騒ぐなり。図書館にいることも忘れていた。

「マジテンション上がる!!!これ、めちゃくちゃ読みたかったんだ!」

「いいよな、悪令嬢系!俺もその本読みたいから、次のとき読もうかな。」

「よっしゃっ、借りるべ借りるべっ!!」

そうして、今日の休み時間は終わった。


 なぜいつまでも仮面を被り続けるのか。単純なことだ。友達がいなければ面談時に言われ、親に怒られ暴行されるからだ。親が思っていることと、私が考えていることを同じにしないで頂きたい。そして、自分で言ったことくらい自分で覚えといて頂きたい。それが、原因なのだ。母は、最近それが酷い。

「なんで、こんな時間がないときに検定なんてやろうとしているの?」

(いや、アンタが一次試験受かっているし二次試験だけ受けられるのが今回までだから受けとけって言ったんだろうが。)

「なんで、洗い物やらないの?」

(すいません。あの、朝はできてないけどお願いされている昼と夜はやっていいるよ。何言っているの?)

汁物だって被ったことあるし、皿だって何枚割れたかわからない。

はあ...なんか疲れた。ん?ヴァイオリンの音?しかも結構うまい。誰が弾いているのかな。

「おーい、利烏?聞こえてる?お前さされているぞ。大丈夫か?」

私は、神室ちゃんの声が聞こえてはっと周りを見ると、突き刺さるような視線が大いに迎えてくれた。

そして、先生が

「(2x+3y)³の答えを答えてください」

と言った。

「すいません。8x³+36x²y+54xy²+26y³です。」

そして、今日の授業は終わった。


今日の放課後の予定は、特にない。でも、雨が降っていたので少し夜道を散歩しようと思って傘を持ち家を出た。

私は雨が好きだ。なんでだと思う?そっと、私を慰めてくれるような音と香り、そして本性に戻れるから。普段の呑気な自分、それはストレス感じながら使っているキャラだ。私はもっと違うどちらかというと「悪令嬢」的な性格なのだ。...

あれ?また、ヴァイオリンの音だ。なんでこんなところで聞こえるのかな...?

その瞬間激しい雑音で急に目眩がして気を失った。

「ううっ。ん...?」

気づいたときには、漆黒の闇の中に私、そしてヴァイオリンの音がさっきよりも近くで聞こえる感じだけだった。

「取りあえず、音がする方に行ってみよう。誰かいるかもしれない。」

私はひたすら音のする方に歩いていった。漆黒の空間光が一つもなく頼りになるのは音だけ。まるで、私の心の中にようだった。

目が少し慣れてきた。そうすると、音源が目の前にあった。それは、少年いや、同じくらいの年齢の男子だった。

シュッとした顔、冷ややかな青い目にさらっとした目。私と目が合うと一瞬驚いた顔を見せたが、また冷ややかな顔に戻った。私に気づいたらしい。少しすると、弾き終わったらしく、こちらに向かって歩いてきた。

なんだか、嫌な予感がしたので私焦った。

「すっすいません!!わっ私は、怪しい者ではなくてですねぇ。なんかっ、よよよよくわからないのですががっ、ここにとっ飛ばされてしまいまして!!!えっと...」

やばっ、頭が酸欠でクラクラしてきた。たっ、倒れる!

「おいっ、大丈夫か?リオ?」

「えっ?」

しまった、つい声が出てしまった。

「なっなんで私の名前を知っているの?」

一瞬彼は戸惑った。

「 いや、なんかカードに君の写真と名前が書いてあって、魔法で解読したらそう読むらしいから言ってみただけだ。」

なんか、少し怪しい気がする。まあいいか。っていうよりなんか、私部屋にいない?移動したつもりはないのに...

「えっと、それでここはどこですか。って、あれ?さっきと場所がいつの間にか変わっている気が...。」

「ああ、ここは王室だ。転生者として君は選ばれたんだ。今日からこちらに住んでいただく。」

「...?」

「君は、今日から公爵令嬢。何か質問はあるかい?」

えっ...?

「ええっと、私はどういう公爵家に配属されるのですか?作法や勉強、ダンスや芸術を教えてくれる方はいらっしゃいますか?あとええっと...」

彼は、一度頷いて口を開いてこういった。

「君は『国王のマスティフ』の公爵家だ。もう跡継ぎが危うい。それで君を選んだ。君の本性なら、人を敵に回してでもきっとこの国を救ってくれるだろうと信じているから。」

と言い、にっこり笑っていた。いや、無理でしょ、何言っているのこの人は。

そして、彼は話を続けた。

「あと、この国はダンスを行うことがほとんどない。どちらかといえば、音楽だね。音楽で魔力はある程度決まるからね。勉強については、君に講師を選んでいただく。それについては、後ほど説明するよ。あとは何かあるかい?」

・・・

「得にはありません。ただし、一つだけ警告させて頂きます。私が本性を出しますと、たくさんの無礼が生じる可能性があります。国王様や私より上または同じ階級の者を怒らせ、私が加わったことでさらに悪化させることもご承知の上ということで大丈夫でしょうか。」

「うん。大丈夫、そこまで計算済みだから。」

と、サラッと言った。本当に大丈夫なのだろうか。少し心配だが、まあいい。私のストレスが発散できる世界に来れたのだから。そういえば、

「貴方は誰ですか。私の名前を知ったのなら教えていただけますよね。」

「もちろん。私は、シラウ・レックスシティローズ。この国の国王に当たります。」

あれってことは、私はずっと国王と話していたの?

「無礼をお許しください。私の名前を今日からヴァローナ・エルラットにして頂いてもよろしいでしょうか。」

「ああ、構わないよ。手続きは明日行う。ヴァローナは早く休むといい。あとは頼んだぞ、キュラソー・ブルーマ。」

メイドがひとり来て

「はい。」

とだけ、答えた。少しオロオロして自信なさげに答えていた。

彼女は、私の部屋を分かりやすく説明しながら案内してくれた。

「どうぞこちらのお部屋がヴァローナお嬢様のお部屋でございます。ごゆっくりお過ごしくださいませ。」

と、丁寧に言ってくれた。

私は部屋を見渡したあと、ひ一息ついた。







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