第52話 どこかで見た展開

「見に来ただけなら帰ってくれ」

「いやじゃ」

即答だった。

「は?」

「見に来たと言ったが気分が変わったのじゃ」

「いやいやいや。ガキのわがままに付き合ってる暇はない」

「まぁまぁ話を聞くのじゃ。お主と戦いたいのじゃ」

「いやです」

これには俺も即答だった。

俺からしたら当然のことだった。

俺はまだまだ弱い。修行をし始めたばかり。そんな俺が数千年生きている……しかも魔族の王と戦うなんて無理な話なのである。

瞬殺されるのが当たり前で、力の差がありすぎて、修行にもならない。

カタツムリが人間に挑むほど無謀なのだ。

なぜカタツムリなのかって?そりゃただの気分だ。

「まぁ、妾も手加減するから大丈夫じゃ。死ぬようなことはないと保証するのじゃ」

「えぇ………」

俺はバカじゃない。いくらつよくなりたいからって、無謀な挑戦、無駄な挑戦はするつもりがない。手加減するなら無謀じゃない……確かにその通りだとは思うのだが、後々面倒なことになる気がする。これでもし、毎回毎回こっちに訪れるようになったら面倒だ。人に見られたらめんどくさいし………。


しかし、このキラキラとした目で見られると罪悪感が生まれてくる。

…………本当に魔王か?こいつ。

全く威厳という威厳がないんだけど。


そして数分間見つめられた末、俺は根負けした。

渋々戦うことにしたのだった。


ー某所ー

「…………………」

そこには佇んでいる少女の姿が。

少女の虚な目は水面をじっと見つめている。

そんな少女が急に顔を上げた。

先ほどの虚な目とは打って変わり、何か希望を見つけた……そんな目をしている。


少女の後ろに見えるのはなかなかに立派な家だ。

しかし、そこには生き物の音一つすらしない。

主人はしばらく帰っていないらしい。それはポストに大量に入っている新聞が物語っている。

しかし、てくてくと少女はその家に向かって歩いていく。

そして、少女は家の扉を開き、その中へ入っていった。


少女の背中はなぜか、小さくみえたかと思えば大きく見える……そんな背中だった。

しかし、何かを待ち望んでいる。そんな気配がする……そんな背中でもあった。



———腰にはご立派なナイフを携えていた。


ー元に戻ってー

「……本当に戦いたいのか?冗談じゃなくて?」

「ああそうじゃ」


まじで面倒なことになったな………。

ゲームだったら負けイベなんだよな……。


※康輔は勉強に目覚める前はゲーム大好きっ子だった。


俺の使える魔法も、まだそんなにないし……。

大体の魔法は一通り、使い方を教えてもらったものの、まだ実践していないからお世辞にも戦闘で使えるとは言えない……。

使えたとしても、きっと魔力効率がとんでもないことになるだろう……。

それに俺の魔力の器は確かに規格外だとは言われたけど、まだ熟練度が全くもって足りない。まだまだ持てる魔力量が少なすぎる……。リンなんかとは比べ物にならないぐらい少ない。それでも一般人よりかは多いらしいが………それでも無駄打ちは全くもってできないんだよな……。

さてどうすっかな…………….。

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