第46話 宿題は先に終わらせるタイプ
「ん〜....」
「あの康輔が勉強もせずに別のことを考えているなんて珍しいな」
俺がUについて、授業中頭を悩ませている時、先生が声をかけてきた。
「まぁ、そうっすね」
「....授業中なんだけどな....」
「さーせん」
「あの康輔が⁉︎」
という声がちらほらと聞こえてくる。
俺は勉強の妖精じゃないんだよ。勉強が好きなだけで。
「あんなことがあったからな。他のことを考えてしまうのも無理はないが....」
「いや...鏡花のことは、吹っ切ったって言ったらおかしいんですけど...まぁ、もう大丈夫です。それ以外で少し問題があって....」
「なんにせよ、勉強に集中しろよー」
「さーせん」
問題とは、鏡花の手紙の最後の部分である。
———あの男を倒す時は、あの技....ですわよ
という一文。
あの技というのは、なんとなくわかってはいるのだが....。
よりにもよってあれで決めなきゃなのかよ.....。
簡単に言ってしまえば、俺ではなく鏡花がやるのが相応しい技なのだ。
しかし、やれと言われてしまったからにはやるしかない。
「...........................やればできるんですわ(ボソ)」
「ん?何か言ったか?」
「なんでもないです」
はぁ....まぁ、頭に入れておくか。
それに、Uについても調べなきゃいけないんだよな...。
ー休み時間ー
「この新聞、いつの?」
「ちょうど、4ヶ月前かなぁ?」
前の席の女子2人が話している。
.....なんで今時のJKが新聞なんか持ってきてるんだ....?
それも4ヶ月前のやつなんてどうして持ってるんだ....?
現在6月だから.......2月の新聞ってことか?
「どうして新聞なんて持ってるの?」
「この新聞が発行された数日前にね、殺人事件が起きてね〜」
「殺人事件?」
「うん。意外と珍しい能力者の殺人事件でね〜」
「珍しいって何が?」
「表向きは、身体強化系の全身体強化の高校生が自分の彼女を殺したってことになっているけど、裏ではランクA?がやったんじゃないかって話があるんだよ〜」
「え〜?」
「その現場の付近にランクAらしいとある男がいたって情報があるんだよ〜。それに、その彼氏さんと被害者の彼女さんは、とっても仲が良かったって有名だったらしいんだ〜その高校で」
「....つまり?」
「動機が無いんだ動機が」
「....確かにランクA?の人がやってるっていう噂が流れても仕方ないね」
と一通り聞いたところで俺は2人のところへ向かっていた。
全身体強化だって?......そうそうある能力じゃない。もしかしたら.......。
そんな藁にもすがる思いで、2人に話しかける。
「なぁ、橋宮と、高澤さん。その新聞見せてもらうことできる?」
「あ、勉強バカ」
「この新聞紙がどうかしたの?」
「ちょっと、その新聞にちょっと探してることが載ってる可能性があって。貸してもらえないかなぁ...思ったんだけど」
勉強バカについてはもう放っておくことにした。
「全然ええよ、ほい」
橋宮が自分に新聞を差し出した。
「あざっす」
「うい」
と、軽く済ませて自分の席に戻る。
「...明梨って、勉強バカと仲良かったっけ?」
「そりゃまぁ....小中高と同じ学校に通った幼馴染的存在だし」
「え.......えぇぇぇぇぇ!?!??!?!」
何やら前が騒がしいが、無視するか。
「....んと.......っ!」
その見出しには、殺人事件と書いてあった。そして、容疑者の顔写真は載っていなかったものの(未成年であるため)、特徴からUだと特定することができた。
「..............っ!?」
<教えて桜田先生!> 〜実名報道について〜 (長いよ)
はいはーい。3回目となる桜田だよー。どうしたのかな?(ウザいのを承知の上)
Q 能力者で法律って違うの?
A 一部分のみが違うよー。
能力者が殺人事件などの重大な事件を起こした場合、12歳(中学生から)から普通に実名だけ報道されることになっているよ。これは、同じ能力を持った能力者が勘違いをされないという措置なんだ。一時期、それによって死人が出てしまった事件があって、それによって能力者の法律が制定されたんだ。
更生を阻害してしまうという意見もあったが、そうしないと能力者が難なく殺しができてしまうという意見があったため、その措置をとったのだとか。ただ、実名報道されるのは国が定めている国立報道機関と呼ばれている専門機関が出すことのできる特別な新聞で、これ以外の新聞会社が実名報道した場合、刑が下される。
その報道機関は普通の新聞も出すから今やみんなが知っている新聞会社的存在になっている。
ようつべや、その他のサイトで揶揄するような表現などもアウトになるから気をつけようね。
他にも詳細を詳しく言えばあるけど、それは今度ね〜。
<終わり>
俺は、その記事に記されている名前を見てひどく驚いてしまった。
「.........」
そんな康輔をひっそりと覗いている人物がいた。
「.......どうしたらいいんだこれ」
俺はとりあえず、新聞を橋宮に返す。
「あんがと」
そして、俺はひどく悩む。
確かにUに同情できる部分はあるが.........そこじゃない。
新聞で見てしまった、あれ。それをどうするか。
「.......まぁ、今更無理ですなんてダメだよな」
俺は家に帰り、ベットに転がる。
「はぁ....」
ため息をついたその時、スマホが鳴った。
「....?」
それを見ると、メールが一件送られてきていた。
それを開けると、差出人の名前は書かれておらず、そこにはとある住所が書かれていた。
「なるほどね」
どうやって俺のメアドを出したのかはわからないが、これはUから送られてきたものだ。
「はぁ...やっとかい」
俺はそっと家を抜け出す。
鏡花が死んだあの日だって、母さんたちにめちゃくちゃ心配されたんだ。
これ以上、親を心配させたくない。
「けど、学生の本分は勉強だしな」
鏡花からもらった宿題を終わらせねぇと。
「俺は宿題を先に終わらせるタイプなんだよ」
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