第14話

 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 会社の飲み会帰り…

 ひよ子が まさくんに

 告白しているところを

 目撃してしまった…



「……家で、俺の帰りを

 待ってる人がいるんだ…

 気持ちには応えられない…ごめん…」



 "待ってる人…"

 それは、私のこと…


 その言葉を聞いて嬉しくなって

 スキップしたい気持ちを抑えながら

 部屋に向かった



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 部屋で1人…帰りを待つ……



 けれど、空が明るくなっても

 まさくんは、帰ってこなかった



 「何か…あったのかな…」

 何度電話掛けても 出なくて…


 ″事故に遭ったとか?!…″


 最悪のことを考えながら

 握りしめていたスマホに視線を落とし

 もう一度、掛けてみた


 震える指で通話ボタンを押す



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



「もしもし…

 ごめん、今…帰るから…」


 スマホのディスプレイには

 アミからの着信履歴が何度も・・・


 『早く帰って…謝らないと…』



「お家で待ってる方ですか?…すみません」



「……1人で帰れるよな」



「はい、大丈夫です」



「気をつけて帰れよ…」



 バタンっ…



 ・・・・・・・・・


 薄暗いホテルの部屋から

 柾國が出て行った



「ふふふっ♡」

 

 ひよ子は 不敵な笑みを浮かべた



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



「ただいま…」


 まさくんが帰ってきた


「何度も電話くれたのに出られなくて…

 ごめん…」



 フワッ…



『あぁ…これって……』

 私は黙って 窓の外を眺めたまま



「帰って来ないから 心配したよ…」



「アミ…っ…あの……」



「……あまり詮索するのは

 好きじゃないんだけど気になるから聞く!

 …今まで、何してたの?」


 まさくんに背を向けたまま 聞いた



「・・・ホテルに」



「……どうして?…」



「・・・ひよ子が」


 ……やっぱり


 振り返って まさくんを見据えた


「帰り、見かけたよ?

 あの子に告白されてるところ…」



「それはしっかり、断った!」


 断ったのに、何故…?



「飲み過ぎて具合が悪いって言うから

 連れて行って…介抱してた…

 もちろん、ヤってない…信じて…っ…」



 そう言って

 まさくんは私に近づいたけど

 反射的に後退りをした



「ねぇ…気がついてる?

 …まさくんが帰ってきてから

 この部屋に 私のキライな

 甘ったるい香水の香りが漂ってるの…」



「………」



「抱きついたりしない限り

 こんなに匂わないでしょ?…

 それで、ヤってないから信じろとか…

 今の私には、ちょっと酷だよ…」



「…っ!だからそれは

 ひよ子をかかえた時にっ!」


「それならどうして、電話に出ないのよ!

 …ワザと出なかったんじゃなくて?」


「寝ていたから

 気が付かなかったんだって!」


「……寝てた?…

 やっぱ、ヤってんじゃん!!!」


「ヤってないっ!!!!」



「ごめん……頭、冷やしてくる……」



 これ以上、口を開けば止まらなくなる

 カバンを抱え、部屋を出た



 バタンっ……



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 外へ出ると、冷たい雨が降っていた

 疲れた背中を そっと湿らせる



 ただでさえ、毎日

 まさくんとの距離が近いひよ子に

 うんざりしてるのに…


 信じればいいだけなのに…

 心配で 私は眠れなかったのに…

 言いたいこと まだまだあったのに…


 ヤった ヤラないで喧嘩って…

 いい歳して…バカバカしい


 変な意地が見え隠れする…


「ムカつく…っ…」



 傘?そんなもん要らんわ!


 雨に濡れたまま 自分の家に帰った



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



「はぁ〜」

 柾國も ため息を吐いて

 うなだれていた…


「信じろって言っても無理だよなぁ…

 逆の立場だったら俺だって……」


 …………


「ホント、この服 くせぇ…」

 勢いよく服を脱いで 洗濯機へ投げ込んだ



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 何があっても 朝は やってくる…

 また 1週間が始まる…


 悔しくて 眠れなかった

 かなりの寝不足…

 まさくんからの

 メッセージも電話も無視…

 とても応対する気分じゃなかった


 会社に向かう電車内で

 じんに声をかけられる


「おはよう!電車で会うの

 なんか久しぶりじゃない?(*´꒳`*)」


「そうだね…」


「どうした?その顔…土偶メイク?

 あーっひゃひゃっ(*≧∀≦*)…(;^o^)アレ…」


「………(=_=)」


 無言のまま…電車を降りる



「……大丈夫か?

 まだ飲み会の酒が抜けてないとか?」


 小走りで追いかけてくる仁に


「あ!そうだ!…あとでしゅんも交えて

 報告しようと思ってたんだけど

 今、言っちゃう!

 私、部長と お付き合いしてるの…

 しかも許嫁…(;=∀=)ァハハハ」



「は??…

 今、そのツラで そういうこと言う!?

 全然笑えねぇよ!許嫁?何だよそれ!

 …おい、アミ!待てって!」



「俊にも伝えておいて…また後で話す…」

 スタスタ(((((*´=ω=)



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 出社してまっすぐ

 顔を直しに化粧室へ行った…



「ホントだ…土偶…(=∀=;)ハハッ

 起きた時より もっと腫れてるじゃん…」


 "寝不足はお肌の天敵テンテチ…"

 屋台のゲンさんの言う通り

 肌のコンディションも最悪( ´A` )

 アイライン、もう少し

 濃いめに入れておくか…



 少しは目立たなくなったかな?

 とぼとぼと 事務所へ向かう


 途中、非常階段のところで話し声が…


「ねぇねぇ、いいもの見せてあげる!」

 ひよ子が経理のユカとマスミに

 スマホの画面を見せている


「えっ!これ部長じゃん!」


「うわっ!キスしてる〜Σ( ˙꒳​˙ )」


「飲み会の帰りに、

 2人でホテルに行って〜♡」


「そ、そうなんだ…(^∀^;)」


「あの部長が、ひよ子とねぇ…( ºωº ;)」


「意外と胸板があってぇ〜(*´°`*)♡

 あ〜ん♡これ以上言えな〜い(´▽`*)アハハ」



 『……え?キス?…胸板?』


 おいおい、待て待て…

 怒りで体が熱くなっていく…



「……」


 仕事、仕事……



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 色々と情緒不安定のまま

 午前中の業務をこなし

 じんしゅんの3人でランチ…



「今朝の話、ホントなのか?」


「仁さんに聞いてビックリしましたよ!」


「…今まで黙っていてごめんね(;´∀`)ァハハハ」


「付き合ってるなら、どうして

 あんなに ひよ子とベッタリなんだ?」


「あれは 勘違いしますよ?

 まるで ひよ子と付き合ってるみたい…」


「………」


「…おい、俊!」


「え…俺、まずいこと言いました?」


「…やっぱりそう見えるよね(;´∀`)ァハハハ

 まぁ…とにかく そういうことなので

 2人には伝えておきたくて話したの」



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 午後からの仕事も

 一瞬でも気を抜くと、

 ひよ子の自慢話を思い出し

 爆発しそうになる…


 ヤってないって言ってたのに…

 あれは、嘘か!?

 何なのよ……(`-´)


 封印していた"オラオラアミ"が

 今にも噴き出してきそうだ…



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



「あ、アミさん♡…哲さんも!」


 キタ━━(´°ω°)━━━!!!!

 よりによって、てっちゃんと…



「ちょっと、見てもらいたいものが♡」

 ニコニコしながら手招きされ



 事務所のド真ん中で

 見せられたスマホの画面…


「………っ…」



 まさくんは ひよ子と

 本当に…キスしてた……



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る