第5話005「スキルを探ってみたようです」
「いや、待て待て待てっ!? このスキルの新発見を伝えたとして、そうしたら、それを伝えた後の俺は⋯⋯どうなる?」
うん。よーく考えてみよう。
その1⋯⋯まず、神殿に行きます。
その2⋯⋯スキルの新発見を伝えます。
その3⋯⋯「どうしてそんなことがわかる。証拠を見せろ」と言われます。
その4⋯⋯「これです」と、スタータスボードを出して見せます。
その5⋯⋯「ふ〜ん、君すごいね。もうちょっと詳しい話、聞かせてくれる?」と言われて、さらに奥の暗い部屋まで連れて行かれます。
その6⋯⋯その後、彼を見た者はいない。
「ダメじゃん! 俺、完全にこの世から消えてるじゃん!!」
ということで、スキル新発見の話をして金を取ろう作戦は即時中止となった。
「いかん、いかん。一旦、落ち着こう」
ここで俺は一度冷静になろうと、筋トレでいつもやっている『ビ◯ー・ザ・ブートキャ◯プ』の最終プログラムである『ディスク4』で気持ちを落ち着けた。
——40分後
「1・2・3、ビクトリィーー!! ふぅ、これでいい。やっぱ、最高だな、ビ◯ー隊長」
ビ◯ー隊長のおかげで何とか冷静になれた俺は、改めて目の前の自分のステータスボードに向き合った。
「うん。まずは、そもそも論⋯⋯このスキルがどういうものなのかを検証しようジャマイカ!」
ということで、ここからはスキルの検証を開始⋯⋯するつもりであったが、
「あ、まずい!? そろそろ、孤児院に戻らなきゃ⋯⋯」
続きは明日ということで、俺は急いで孤児院に戻っていった。
********************
「あ、リオ兄ちゃん。いたー!!」
「え?」
孤児院に着いた途端、そんな掛け声と共にいきなりタックルされた。
「ゴフゥゥゥ! あ、相変わらず、元気だなぁ⋯⋯ミトリは」
「リオ兄ちゃん、どこ行ってたの?! 探したんだよっ!!」
「ご、ごめん、ごめん。そんな怒るなよぉ⋯⋯」
俺にタックルをかましてきたのは透き通るような青い髪が印象的な『ミトリ』という俺より1つ下の7歳の女の子。すごく俺に懐いていて、孤児院ではよく一緒につるんで遊ぶ子供の一人だ。そして、もう一人⋯⋯、
「おい。探したぞ、リオ。どこ行ってたんだよ!」
「ペトラ」
次に、ケンカ口調で声をかけてきたのは、赤茶色の髪で肩につくほど伸ばしている「80年代のロックンローラーかな?」という風貌の子供はペトラ。俺と同い年で8歳だ。尚、髪型は本人が気に入っている模様。
「おい、リオ。⋯⋯お前今、心の中で俺の悪口言ったろ?」
「ソンナワケナイジャナイカー」
こいつは、野生児というか何というか、とにかく勘が鋭い。もはや「スキルなのでは?」と疑うレベルだ。あと、難しいことは考えられない直感と感性だけで生きている男だ。当然、脳筋。
「別に、いつものランニングをしてたんだよ」
俺が体を鍛えていることは皆知っているので、逆に今ではこれが功を奏して孤児院が消えたときの言い訳に使っている。まさかの副産物である(まー皆に白い目で見られるという代償は背負ったけど⋯⋯)。
「何だよー、俺も混ぜろよー! 俺だって体鍛えるのは好きなんだからよー!」
そう、ペトラは
「私もー! 体鍛えるー!」
そうして、その後からいつも便乗してくるのがミトリ。
「ミトリはダメだよ。女の子なんだから。体を鍛えるのは男の子じゃないと!」
「えー、ずるいー。ペトラ、ずるいー!」
「大丈夫。俺が鍛えてミトリを守るから! だから、ミトリは鍛えなくていいんだぞ!」
「何それ、意味わかんなーい」
と、いつもの話の流れの最後は、だいたいペトラが「ミトリを守る」とか言ってミトリに『好き好き光線』を放つのがパターンだ。まー、今のところミトリにペトラの
頑張れ、ペトラ!
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——次の日
また、今日も孤児院のみんなの目を盗んで森にやってきた。
今日は実際にスキルをいろいろ試して『自分のスキルの正体を探る』がテーマである。
「さて⋯⋯と、ほんじゃま、早速、いろいろと試してみるか」
『スキル:造型士(無)/LV1』
「とりあえず、何かを作るスキルだろう⋯⋯ということで、いろいろ持ってきたけど⋯⋯まずはこれからいくか」
ということで、取り出したのはいくつかの木片。
「まずは、本棚とか作ってみようかな」
絶賛、何をしているのかというと『何か物を作るスキル』というあたりをつけた俺は工作をしようと考えたってわけ。で、孤児院から使っていない木の板とか釘をいっぱい持ってきたという状況だ。
これで、もし、俺のスキルが『何か物を作るスキル』であれば一流職人が手掛けたような、芸術的な一品になるだろう。
「ふふ⋯⋯なるほど。『異世界転生したら一流家具アーティストとして有名になった件』か。⋯⋯ありだな!」
そんな、妄想を抱きながら俺は製作に取り掛かった。
——1時間後
「あ〜⋯⋯⋯⋯知ってた」
そこには『かつて本棚を作るつもりだった何か』が転がっていた。
「⋯⋯ひどい。スキルが『物を作るスキル』じゃなかったにしても、この完成度はひどい」
もう、何というかセンスうんぬんではなく、それ以前の問題というか⋯⋯そんな残念の仕上がりだ。
「じゃあ、どうすればいいってばよ!?」
うずまきなナル◯節で、半ばキレ気味の俺は得意のふて寝をして横に転がった。
「俺のスキル⋯⋯『物を作るスキル』じゃなかったのかぁ。じゃあ、一体何のスキルなんだよ。だって、『造型士』だよ? スキル名の字面を見れば何か物を作るスキルであることは間違いないはずなのになぁ⋯⋯」
しかし、実際に物を作ってはみたものの、正直『手応え』はまるでなかった。たぶんだが、自分のスキルが発動していれば絶対に何かしらの『変化』は感じられたと思うのだが⋯⋯。
「まったく手応えなかったな〜。もう、あと何やりゃいいんだよ⋯⋯」
そうして、俺はまた空を見上げた。今日も昨日と同じく澄み切ったきれいな青空だ。
「スキル⋯⋯『造型士』か。こんなスキル名でものづくりが絶望的に下手だなんて思いもしなかったわ。へこむわー」
リオはさっきの『かつて本棚を作ろうとした何か』をチラリと横目で見ながら、そんなボヤキをこぼす。
「本当だったら、俺のイメージは、こう⋯⋯機能性を取り入れたスタイリッシュな本棚を意識してたなぁ⋯⋯」
『イメージを確認。オリジナルと設計書を具現化しますか?』
「⋯⋯えっ?」
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こちらも、よろしくお願いします。
「イフライン・レコード/IfLine Record 〜ファンタジー地球に転移した俺は恩寵(ギフト)というぶっ壊れ能力で成り上がっていく!〜」
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