第33話 決戦 マダラ模様のホブゴブリン

 マダラ模様のホブゴブリンは、かつてケータ達が出会ったマダラ模様のゴブリンだったようです。奴は、ケータに殴られたことを根に持っているのか、脆弱な人間を殺し損ねたのが悔しかったのか、強くなる為、人間を殺して養分を奪っていたと思われます。


 そんなマダラ模様のホブゴブリンが、大きな棍棒を手に、ケータへと襲い掛かってきました。


「グラァァァ!!」


 雄たけびと共に、棍棒を振り回してくるマダラ模様のホブゴブリンを相手に、ケータは、相手の動きをよく見て、冷静に攻撃を躱してゆきます。


「グハハハハ、コロス、コロス、コロォォス!!」

「……」


 気持ちが高ぶるマダラ模様のホブゴブリンの攻撃を、ケータが冷静に躱し続けている間に、ジェニファー達が、隈付きゴブリンを1体、また1体と倒し、その数を減らしてゆきました。


「逃げなくていいのか? お前の仲間はもういないぞ」

「グガ? ……」


 ケータの言葉に、マダラ模様のホブゴブリンが、辺りを見回した時には、隈付きゴブリンは全滅していて、さらには、ジャガー警部やジェニファー達が、マダラ模様のホブゴブリンを取り囲んでいました。


「もう、貴様の配下は残っていないぞ」

「さっきは、よくもやってくれたなぁ」


 ジャガー警部は冷静に事実を叩きつけ、バルモアが、槍を握りしめ、怒りを込めた言葉を投げつけました。


「グフフフフ、ニンゲン、ヨワイ、ゼンブ、コロス!! グワァァァァァ!!!」


 マダラ模様のホブゴブリンは、口角を上げて下卑た笑いを見せると、雄たけびを上げて棍棒を振り回してきました。


 しかしながら、数で勝る討伐隊は、マダラ模様のホブゴブリンの攻撃に正面からは立ち向かわずに、背後から攻撃を当ててゆきました。


「ええい!!」

「グギャァ!!」


 ジェニファーが、背後から背中を切りつけると、マダラ模様のホブゴブリンの背中はざっくりと切り裂かれ、奴は、悲鳴じみた呻き声を上げました。


「いけるぞ! 畳み掛けろ!!」

「おう!」


 ジャガー警部の言葉に、バルモアが呼応し、ジェニファーとケータを含めて4人で猛攻を掛けます。特にジェニファーの攻撃が良く効いているようで、彼女の切りつけたところはざっくりと大きく切り裂かれていました。


 しかし、マダラ模様のホブゴブリンもタフなもので、傷口を回復しながら大きな棍棒を振り回し続けています。


「やぁ!!」

「グギャァァ!!」


 ジェニファーが、隙を突いてマダラ模様のホブゴブリンの腕を切り落とすと、たまらず奴は悲鳴を上げました。


「今だ!!」

「うおぉぉぉぉぉ!!」


 ジャガー警部は、ここぞとばかりに大剣で脇腹を切りつけ、バルモアは雄たけびを上げて槍で背中を突き刺しました。


「グゥゥ……、ウガァァァァァ!!!!」


 マダラ模様のホブゴブリンは、苦しそうな顔から、一転、大きな咆哮を上げると、体を大きく回転させて、バルモアの槍を吹き飛ばしました。


「コロス、コロス、コロス、コロス……、グワァァァァァ!!!!」


 さらに、マダラ模様のホブゴブリンは、呪詛のように呟いた後、再び大きな咆哮を上げました。


 すると、奴の肉体がボコッ、ボコッと膨張し、切り落とされた腕がズリュッと一気に生えたかと思うと、一回り大きくなって、全身の黒いマダラ模様も形が変わり色濃くなりました。


「まさか……、進化したのか?」

「ちっ、デカくなりやがった……」


 ジャガー警部は、奴の変化を目の当たりにして呟き、バルモアが、舌打ちして顔を歪ませました。


「ニンゲン、コロォォス!!!」


 大きくなったマダラ模様のホブゴブリンは、これまでよりもずっと速いスピードでジャガー警部へ詰め寄ると、握りしめた拳で殴りつけてきました。


「なっ!?」


 ジャガー警部は、目を見張って驚きながらも、咄嗟に大剣で受け止めましたが、そのまま吹き飛ばされてしまい、背後の木をバキバキと薙ぎ倒すほどに強く叩きつけられました。


「ウガァァァァ!!!」


 マダラ模様のホブゴブリンは、雄たけびを上げてバルモアへと突進し、勢いのままに体当たりで吹き飛ばすとし、続けざまにジェニファーを殴り飛ばしました。


「てぇぇぇい!!」

 ゴン!


 ケータが、背後から飛び上がり、不意打ちの棍棒をマダラ模様のホブゴブリンへと叩きつけましたが、奴は微動だにもしませんでした。


「グフフフフ、カユイナ」


 マダラ模様のホブゴブリンが、不敵な笑みを見せて首をゴキゴキと鳴らすと、近くに落ちている棍棒を見つけて拾いに向かいます。


「全っ然、効いてないな……」


 ケータは、距離を取って身構えると、額に薄っすら汗を浮かべて呟きました。その表情には、強敵を前にしたときのように危機感が感じられます。


「ハッハー! ケータ! ピンチですネー!」

「ギプスぅ、あいつ、デカくなってから棍棒で殴っても効いてないみたいなんだ」


 突如、空を泳いでやって来たギプスに、ケータは、困った顔で訴えました。


「ハッハー! パワー不足ですネー! 仕方がないので、ギプスのパワーを貸してあげるですネー!」

「ほんと!? それは、ありがたいな!」


 ギプスの申し出に、ケータは、ちょっと嬉しそうです。


「ヒャッハー! 超パワー養成ギプス、展開ですネー!」


 ギプスは、そう高らかに宣言すると、ぽふっと消えて、ケータの両手首、両足首にぽふぽふっと銀色のリングが現れました。


『ケータ! ジェニファーの剣を使うですネー!』

「ん? 分かった」


 ケータの頭の中にだけ響くギプスの声を、ケータは、素直に聞いて、ジェニファーが吹き飛ばされた時に手放してしまった剣を拾いに向かいます。


 ちなみに、ジェニファーは気絶してしまったようで、アンドレとルミナが駆け付けて後方へと避難しています。


 ケータとマダラ模様のホブゴブリンは、互いに武器を手に取り対峙しました。


「グフフフフ、コンドコソ、オマエ、コロス」

「そう簡単に、やられたりしないよ」


 マダラ模様のホブゴブリンが、下卑た笑みを浮かべて宣言すると、ケータは、両手で剣を構えて、言い返しました。


「ウガァァァァ!!!」

「……」


 マダラ模様のホブゴブリンが、雄たけびを上げながら真正面から突撃してきて、大きな棍棒を振り下ろしてきましたが、ケータは、無言で躱すと、すっと踏み出し相手の横をすり抜けながら、奴の太ももへ切りつけました。


 ケータの動きは、ギプスの力を借りて素早く力強くなっており、進化したマダラ模様のホブゴブリンを相手にも十分戦えるようです。そして、ジェニファーの使っていた剣は切れ味が鋭く、奴の太ももを大きく切り裂きました。


『ヒャッハー! スッパリ切り裂いたですネー!』

「この剣、凄い……」


『おそらく風魔法が付与されているからですネー!』

「なるほど……」


 ギプスの声に、ケータが短く呟きます。


 マダラ模様のゴブリンは、太ももを切られて顔を歪め、ケータを睨みつけていました。心なしか、傷の治りが遅いのは気のせいではないようです。


「グギャォォッ!」

「……」


 怒りの形相で猛烈に攻め立てるマダラ模様のホブゴブリンに対して、ケータは、冷静に立ち回り、隙をみては剣で切りつけてゆきますが、マダラ模様のホブゴブリンの傷はゆっくりと回復してゆくため、なかなか倒しきることはできません。


 しばらく同じような攻防が続いた後、マダラ模様のホブゴブリンが、棍棒を大振りに振り回して来たため、その隙を突いて、ケータが相手の脇腹へと切りつけました。


「ウガァァァ!!!」


 しかし、マダラ模様のホブゴブリンは、脇腹の筋肉をグッと締め付けて、剣を筋肉で挟み込むと、棍棒を捨ててケータの腕をガシっと掴みました。


「しまった!」


 ケータは、思わず言葉を漏らすと、手放した剣が地面へ落ちました。

 一瞬、剣の動きが止められてしまい、驚いて剣を手放すのが遅れてしまったため、捕まってしまったのです。


「グフフフフ、コロォォス!!」

「がはっ!!」


 マダラ模様のホブゴブリンは、そのままケータを大きく振り回して地面に叩きつけると、ケータは、軽く血反吐を吐きました。


 さらに、マダラ模様のホブゴブリンは、追撃とばかりにガシガシと殴りつけ、最後に思いきり踏みつけました。


「グハハハハハハ、ニンゲン、ヨワイ、コロシタゾ!!」


 マダラ模様のホブゴブリンは、ケータを踏みつけたまま、大きく笑い声を上げてふんぞり返り、勝ち誇るのでした。

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