第6話 草を編む
「おのれの気配を消すですネー!」
「おう!」
今日も、ケータは、筋トレしながら気配を消すトレーニングを行います。
「ウサギがいるですネー! お肉を獲るですネー!」
「おう!」
そして、ケータは、ウサギを狩って解体し、お肉をゲットします。
「掛け算ですネー! 6の段、いってみるですネー!」
「ろくいちがろく、ろくにじゅうに、ろくさんじゅうはち……」
それから、ケータは、筋トレしながら掛け算の九九を暗唱します。
そんな調子で、あいも変わらず、ケータはサバイバル生活をしながら各種トレーニングに励む毎日を送っていました。
そんなある日のことです。朝食を終え、林の中を歩いていると、ギプスが、ケータのようすがいつもと違うことに気づきました。
「ケータ、動きが悪いですネー! お腹痛いですかー?」
「んー、あしがいたい。つまさきがくつにあたってる?」
「靴を脱いで、つま先を見せるですネー!」
「うん……」
言われた通り、ケータは、汚れた靴を脱いで、裸足の足をグーパーグーパ―してみせました。
「ハッハー! 靴が小さくなったみたいですネー!」
「えっ? くつってちぢむの?」
「間違えたですネー! 靴が縮んだのではなくて、ケータの足が大きくなったですネー!」
「そっかー。う~ん、ぶかぶかだったのになぁ」
ケータは、よれよれの靴をプラプラさせながら、昔は大きいくらいだったと感慨深げに言いました。
「ハッハー! もう、その靴は履けないですネー!」
「えーっ、はだしはいやだなー」
ギプスの言葉に、ケータは、困った顔で呟きながら、裸足で地面を踏みしめて、その感触を確かめます。
「宝箱から靴が出ると良かったですネー!」
「えっ? くつもでるの?」
「服が出るのですから、靴も出るですネー!」
「そっかー」
ケータは、自分が来ている服を見つめました。今着ている服は、前に見つけた宝箱から出て来た服です。
服とズボンが上下揃いで出て来たとき、ケータは自分にぴったりのサイズの服が出て来てビックリしていました。ダンジョンの不思議な宝箱は、開けた人に合うサイズの物がでるようなのです。
「ハッハー! 仕方がないですネー! ケータが自分で靴を作るといいですネー!」
「ええっ!? じぶんでつくるのぉ!?」
ギプスの提案に、ケータは、驚きました。靴を自分で作る発想なんて、幼い子供には思いもよらないことでしょう。
「作り方は、ギプスが教えるですネー! 裸足が嫌なら頑張るですネー!」
「う~ん、しょうがないかー」
「ハッハー! そうと決まれば、さっそく靴づくりを始めるですネー!」
「おう!」
ケータは、やっぱり裸足は嫌なのでしょう、ギプスが教えてくれるならと、やる気になったようです。
「まずは、材料を取るですネー!」
「ざいりょう?」
「イエース! 丈夫そうな草を取るですネー!」
「えっ? くさ? くさでくつをつくるの?」
ケータは、草で靴を作ると聞いて、目をまん丸にして驚きました。
「イエース! あ、この草がいいですネー!」
「これ?」
「イエース! さぁ、たくさん集めるですネー!」
「ほんとに、これでぇ?」
近くにあった草叢の集めろと言うギプスに、ケータは、ぶつぶつと言いながらも、ナイフを抜いて根元から草を刈って集めました。
集めた草は、茎が細長く伸びていて、先端に小さな穂をつけている感じで、ぱっと見、猫じゃらしのような植物です。
ケータは、ギプスの指示に従って、草束を編み込んでいきます。2人であーだこーだと言いつつ、草と格闘しながら少しずつ編んでいきます。ギプスのアドバイスで、何度か休憩という名の筋トレを挟みながら、草束編みを続けます。
途中、ゴブリンが近寄ってきて、裸足のままで戦い、討伐するというアクシデントもありましたが、数時間に及ぶ草束との格闘を制して、何とか片足分のわらじが出来上がりました。
「ハッハー! まーまーの出来ですネー!」
「やっとできたー」
「さっそく着けて見るですネー!」
「おう!」
ケータは、ギプスに教えてもらいながら、完成したばかりのわらじを右足に着けてみました。ちょっと形は悪いですが、小さな靴を無理して履いているよりは、ずっといいでしょう。
「ハッハー! なかなか似合ってるですネー!」
「そうかなー」
ギプスに似合うと言われて、ケータは、立ち上がり、わらじの履き心地を確認してみます。
「頑張って、もう片方作るですネー!」
「うわぁ、またつくるのかー」
草を編んでわらじを作るのが、かなり大変だったのでしょう、ケータは、うんざり顔で肩を落としました。
「ハッハー! 筋トレ休憩してから作るといいですネー!」
「また筋トレー?」
「気分転換にいいですネー! 体も鍛えられて一石二鳥ですネー!」
「それは、そうだけど……」
結局、ケータはギプスに促されるまま、筋トレをした後、もう片方のわらじを作るべく草を編み始めるのでした。
そして、筋トレという休憩を何度も取り、近寄ってきた魔物を倒しながら草を編むこと数時間、ようやくもう片方のわらじを作り上げました。
ほぼ半日かけて作ったわらじを履いたケータは、ポーターバックから木の実を取り出し軽い食事とすると、さっそくわらじの履き心地を試します。
「走り込みですネー! 全力ダッシュするですネー!」
「おう!」
まずは、全力ダッシュのトレーニングで、わらじの履き心地を確かめます。
「次は、筋トレですネー!」
「おう!」
そして、ケータは、筋トレを行い、わらじの履き心地を確かめます。
「トカゲが来たですネー! 戦闘トレーニングといくですねー!」
「おう!」
それから、オオトカゲを相手に戦い、わらじの履き心地を確かめました。
どうやら、わらじにも慣れて来たようです。
「ハッハー! 自分で作ったわらじシューズの履き心地はどうですかー?」
「わらじしゅーず?」
「イエース! 今日、ケータが作ったのは、わらじシューズという靴ですネー!」
「そうなんだ。う~ん、はだしよりはいいかも?」
ケータは、足元のわらじシューズを見ながらぐっぐっと足を踏みしめて感想を述べましたが、やはり靴の方が良かったみたいです。
自作のわらじシューズを手に入れたケータは、いつものように筋トレサバイバルを続けるのでした。
そして、翌日。
ケータは、岩の隙間に宝箱を見つけました。
「あ、たからばこだ」
「ハッハー! 宝箱ですネー!」
「やったー!」
「罠があるかもですネー!」
喜ぶケータに、ギプスは、罠に注意するよう促します。
「うん、こんどこそ、わなをあててみせるぞー」
「頑張るですネー!」
ケータは、宝箱に両手をかざすと、じーっと宝箱を見つめます。それは、もう、宝箱に穴が空くんじゃないかってくらいに、強い眼差しで射貫くように見つめます。
「どくやのわなだ!」
「ぶっぶー。残念ですネー! 罠も鍵も掛かってないですネー!」
「またはずれたー」
「もっともっと頑張るですネー!」
残念ながら、ケータは宝箱の罠を当てることは出来ませんでした。悔しがるケータにギプスは努力するよう促します。
ちなみに、これまで、ケータが罠を当てたのは僅かに1回だけで、ここしばらくの間は、ハズレっぱなしでした。
気を取り直して、ケータは宝箱を開けました。
「あ、くつだ……」
「おー! ちょうど欲しかったとこですネー!」
「くろうして、わらじしゅーずをつくったのに……」
「わらじシューズは、取っておけば、後で役立つですネー!」
「もう、きのうでてほしかったよー」
「ハッハー! そういうこともあるですネー!」
なんだかんだ、タイミングの悪さに文句を言いながらも、ケータは、宝箱で出た靴を履いて、履き心地を確かめます。サイズはちょうど良いようで満足顔です。
「ハッハー! さっそく、筋トレしてみるですネー!」
「おう!」
新しい靴を履いて、上機嫌になったケータは、元気よく返事をすると、筋トレを始めるのでした。
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