5:アキちゃん?

 電話を切られた俺は、またしても途方に暮れることになった。「マッキー」と「アキちゃん」って、誰だよ……。

 少し考えて、「マッキー」とは、中学時代の同級生の「北川真希子きたがわまきこ」のことだろうと検討が付いた。しかし、彼女の渾名ニックネームは、カタカナ開きの「マキコ」であって、「マッキー」などというキャッチーな呼び名は付いていなかったはずだ。

とは言え、「女性であるはずの人物が男性になっている」この世界では、何があっても不思議ではないのかもしれない。

 それにしても……。

……「フロ女のアキちゃん」って、誰だよ?……

「フロ女」とは、五星いつぼし市一円で最も有名なミッション系(キリスト教系)の女子校・フローレンス女学園のことで、おそらく今回の場合はそこの「高等部」を指しているのだろう。

しかし……。

肝心の「アキちゃん」に心当たりがなかった。

 俺にとって、最も身近な「アキちゃん」は、「妹の秋美あきみ」だが、あいつは俺より1学年下で、まだ中学生。しかも、俺が通っていた市立中学校に通っているのだから、「フロ女高生のアキちゃん」には当てはまらない。ましてや、この世界では、「弟」なのだから、ますます「フロ女のアキちゃん」でないことは明白だ。

……では、一体誰だ?……

 少し考えて、「アキ」の音を名に持つ友人に心当たりが付いた。

マキコと同じく、中学の同級生だった「若狭聖わかさあきら」だ。

ただ、俺の知る聖は「男性」で「市立の共学高校」に通っているので、常識的に考えれば、「フロ女のアキちゃん」の可能性はあり得ない。

しかし、俺は既に「男女逆転」の事例に二度遭遇している。

だから、念のためとは言え、電話帳アプリで彼の名前を確かめておいたほうが良さそうだ。

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