第6話

家庭では毎日のように、妻と喧嘩だ。

もう何度も、離婚を迫られている。

こんな極東の地にはいたくないのだろう。

俺もそう思うようになった。


最前線の基地に張り切って赴任したものの、この待遇は何なんだ。

官舎では電気も水道もすぐ止まり、俺は何度も何度も修理した。

しかし、せっかく直しても妻は感謝するどころかバカにしてくるだけ。



基地の隊員も腐ってやがる。

どいつもこいつもアル中だ。

コックピットのガラスが凍結していたので、俺はアルコールスプレーをかけて融かそうとした。

すると、瞬時に凍ってしまった。

整備のやつら、スプレーの中の氷解用のアルコールを飲みやがったな……

それで、中身を水にすり替えやがったんだ。

氷解用アルコールだけではない。

MiG-25には機体の冷却のためのアルコールも大量に積まれている。

整備兵はそれも飲んでいる。

やつらは飲んだことをごまかすために、空いたタンクに水を入れやがる。

そんな機体を操縦する身になってみろ。

墜落して死ぬのは俺だ。




墜落して死ぬ……



!!


そうか、その手があったか……



俺は地図を広げた。

コンパスを使って基地からの距離を測る。


航続距離の半径内に、日本の千歳空港がある。



そうだ! 日本へ行こう!



こんな国ソビエト連邦とはおさらばだ。


腐った組織、クソみたいな上官、飲んだくれの同僚、監視してくるKGB、そして、喧嘩の絶えない妻、そのすべてから逃れてやる!!



俺はこの戦闘機で、自由の地へと飛び立つのだ!


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