第94話 旅先での奇跡 💒2(仲間のキセキ)

「ねえソージ?ここ暗くて狭いよ~……何が見えるの?」


「おや?ベルは、こんなところが怖いのかい?」


「もー、怖くはないの!……ただね~何があるか分からないからさ~……ソージもっとこっち来て!」


 ベルも不思議なところで怖がりなんだなあ。

 もう、しっかり僕の片手に体を巻きつけてへばり付いている……ただの動物園の通路なんだけどなあ……?


 確かにこの旭の森あさひのもり動物園は、ちょっと変わった展示をしていて有名なんだ……でも、ベルならもっとすごい動物を向こうの世界で見てるんじゃないのかあ~




「ソージ、なんか向こうが明るくなって来たよ」

「そうだな、そろそろこのトンネルも出口だぞ……」



 ここは、イルカやアザラシの展示館。暗いトンネルを抜けた向こうが、大きなプールになっている。


「うわああああーー!ソージ、ソージ、お空に海がある!!」


「お空に海?……ああ、まあこれは、海の中に潜ったという設定なんだよ」


「へー、海の中か~…………すごいね~イルカを真下から見るなんて、しかもあたしが服を着たまんまだよ!服が溶けなくて便利だね~」


「あははは……ベルの感心するところは、そこなの?」



 目をキラキラさせて、上を見上げて、アクリルガラスで覆われた天井に釘付けになったベル。

 優雅に泳ぐイルカ🐬やアザラシ🦭、その他の魚🐟も、すべて下から見上げると、ちょっと変わった景色に見える。

 ベルは、魚に夢中になったが、それでも僕の腕はしっかりと抱えて離していない。




 僕達は、ここの通路を抜けて、次はどこを見ようかと相談しながら動物園の中を歩いていた。





「ソージ!あれ見て!」


 急にベルが大きな声を出したので、何か面白い展示でも見つけたのかと思い、指さされた方を目で追って見た。


「ん?別に何も展示施設は、無いぞ?」


「展示じゃないよ、あそこのレストランの前!」


 そう言われて、50メートルほど先にある園内レストランのショーウィンドウのあたりを見てみた。

 すると、そこにはまぎれもなく、僕達の知っている人達がいたのだ。





「お、お、おい……ベル、そんなに急ぐなって……」


 目標に向かって走り出したベルは、僕と手を繋いでいるので、危うく引きずられるところだった。


 ちょうど後ろからだったので、近くまで行ったが気づかれなかった。

 ベルが、ニヤニヤしながらいたずらっ子ぽく、脅かそうと近寄った時、そこに立ち止まって彼女は動かなくなってしまった。


 何とそこで、目の前の2人は、抱き合ってお互いの耳元で囁き合い出したのだ。





 しかたなく、僕が、軽く咳ばらいをすると、2人はようやくこちらに気が付いた


「あ!……や、やあ、ベルちゃん!……ははは、偶然だね!」


 そう言って、片手を挙げて挨拶をしたのは、植野うえのめぐみだった。そう、我らの防衛隊通信管制係のメグミだ。


「いやああ、ひ、ひさ…しぶりだな。総司よ!」


 そして、隣で手を繋いでいるのは、鎌田剛かまだつよし、我らの技師長だった。




「あれ~、メグちゃんとおっちゃん……なんか仲良くしてる~~」


 ベルが、2人を見回して、笑顔で肩を叩いたりしてる。




「いや?……そんなことはないぞ。わしらは、前から仲良しだし……」

「そうそう、ベルちゃんとも仲良しじゃない?」


 2人は、トボケタふりをして話を逸らそうとしているのが、よく分かった。




「えっと!……センセ、もういいよ……おめでとう!それに、メグもおめでとう!」


 僕は、前から怪しいとは思っていたけど、2人のお付き合いは嬉しいとことだと考えていた。


「あ、あは、はははは……。総司よ、すまんなあ~、お前達より先になあ~」


 センセは、頭を掻きながら大いに照れていた。





「え?どういうこと?……ただの仲良しじゃないの?……」


 今度は、ベルがおどおどし出した。




「ベルちゃん、私達ね、今度結婚するの!黙ってて、ごめんね!」


「「 ええええ!……結婚するの?お付き合いを始めるんじゃなくて?」」




「ああ、わしも歳じゃからなあ~幸せは逃がさんようにせんといかん!」


「もう😠、ツヨシ君は、まだ若いの!……今まで研究ばっかりで、どうせ彼女も居なかったんだから、今度は少し楽しみましょう!」


「ベルちゃん、総司、そう言う訳だ。

正式には、もうそろそろ、お前たちの処にもメールが届くはずじゃが…………」


 そう言えば、こっちに来てから、いろいろあり過ぎて、メールのチェックをしてないや。


「ソージ、これこれ!……今何か届いたよ!」


 ベルが自分の携帯を開けて、僕に見せてきた。そこには、センセとメグからの結婚報告の知らせが、メールで届いていた。

 着信は、1月1日午後0時00分になっていた。


 僕の携帯にも同じものが届いていた。



「今届いたよ。センセ、急すぎるよ!……そんなに急に言われても………」


「うん?大丈夫だと思うぞ!よく見てくれ」



 そう言われて、メールをよく読むと、結婚式は1月3日に………僕の実家のホテルで!



「センセ、明後日じゃないですか?…………準備はいいんですか?」


「お前達が、お正月実家に帰るって聞いたから、合わせたんだぞ!

 それに、もう準備はな、お前のお母さんが仕切ってくれてるから大丈夫だ!

 ……玉佐間達も、もう到着してるはずだしな……」



「うっ!……そう言えば、僕達、今朝、ホテルで会いましたよ!

 ……そうか、結婚式って、センセ達のだったんですね」



「うわあーーい、結婚式、結婚式……今度こそ本当におめでとうメグちゃん、おっちゃん!」

 ベルが、2人に抱き着いて、はしゃぎまくっている。


 いつの間にか、センセとメグのまわりにペンギンが集まってきていて、その小さな手?(羽根?)で、ペタペタ🐧と、拍手を送っていた。

 どうも、園内を回るペンギンのお散歩タイムと重なったようだ。


 つられて、周りにいるお客さん達も、笑顔で拍手を送ってくれた👏。



 その後、4人で園内を回ったり、園内のレストランで食事をしたりしたんだけど、センセとメグのアツアツ🧑🏻‍❤️‍👩🏻ぶりに、僕は少々胸やけを起こしそうになっていた。


 ベルと言えば、何か気になることがあると見え、ひっきりなしにメグやセンセの様子を眺め、時々メグに纏わり付き、真剣な顔でヒソヒソ話をしていた。



 僕は、なんだか心臓の鼓動が早くなるのを感じたが、わざと気にしないように動物園では、一人ではしゃいでいた。







「ふぁぁああー、つかれた~……………」

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