第68話 夏の思い出🌻6(誕生その2…真実はどこに?)

 見るからにカッコイイその青年の姿をしたアンドロイドは、黒のスーツを身にまとい、颯爽さっそうとベッドから降りてきた。

 何だか今までの“バスパ”と全然イメージ違って見えた。


 目ざとくジョンを見つけると、まるで召使めしつかい執事しつじのように片膝を付き、こうべれ深々と礼を尽くしていた。


 おまけに、口から出た言葉が、

「ジョセフィーヌお嬢様…………

どうぞ、この私に、お世話をさせてください。きっと、あなた様にご満足いただけるように、尽くしますので…………」

と、きたもんだ。

これは、まるで上流貴族の風景みたいだ。



「え?え?……私?……お世話?……う、うん…いいけど……いや、待って!……何を世話するの?……え~~~!どうしよーーー?」


「ほーらセンセ、ちょっとやり過ぎなんだよ!……見なよ、ジョンがパニック起こしてる」


「あははははは……総司、心配するな!」



 まったく鎌田かまだセンセの発明はすごいんだけど、昔から調子に乗り過ぎて失敗するこが多かったなあ~

 小学校の運動会で、速く走れるシューズなんか作ったのは良かったんだけど、うちのクラスだけ全員100メートル8秒台で走ったもんだから、ちょっと問題になったもんな~。

 校長が、ストップウオッチの故障だと言い張ってなんとかウヤムヤにしたんだ。

後で校長にクラス全員、すごい怒られちゃったし。

あれは、センセの悪乗りのせいでのとばっちりだったよな~



「でもねセンセ、ジョンだって、いつもあんなのが傍にいたら気が休まらないんじゃないかな~」


「さすが総司そうじだなあ……女の子の気持ちがよくわかっておるなア…………だから、これじゃあ!」


 鎌田センセは、小さなリモコンのようなものを取り出した。


「ジョンちゃん、これを持ってみなさい……」


「え?これですか?」



 近くに、まださっきのアンドロイドが控えているので、落ち着きがなくなっているジョンは、恐る恐る渡れた小さな機械を持ってみた。


「よし、そのリモコンを握りしめて“フラッシュ・ゴー!”と、力いっぱい叫んでみてくれんか?」


「え?叫ぶんですか?」


 そりゃあ、訳も分からずアニメのヒーローのように叫べと言われても、恥ずかしいよなあ……


「センセ、僕が代わりに叫ぼうか?」


「いや、ダメじゃ……総司じゃ意味がないんじゃ……ジョンちゃんじゃなけりゃダメだんだ!」










「……もー、わかったわ!……叫べばいいんでしょ、叫ぶわよ!!

…………………………≪フラッシュ・ゴー!≫……」


 すると、傍にいたアンドロイドが、立ち上がったかと思ったら、急にまばゆい光を体から放射し始めた。


「わあー!まぶしいよー」


 まわりにいた全員の目が、光にくらんでしまった。

光を遮ろうと、手で覆ったり、物陰に隠れようとしたが、発光の威力は膨大で、間に合う者はいなかった。


 やがて、光が収まり出してくると、新しい人影が浮かんでいるのが分かった。








「え?……誰?……誰なの?」


 傍に立っていたはずのジョンが、また、うろたえ出した。


 なんとそこには、ショートヘアの可愛い女の子が、紺のジャンパースカートにブルーのアウタージャケットを着こなして立っていた。




「わお!ジョンちゃん!……元気だった?……ウチともよろしく頼むわよ!……悪い奴らは、ウチがなんぼでもやっつけてあげるから安心よ……仲良くしようね😉!」



 かわいい顔でフランクな感じなので、ジョンも今度は大丈夫だろう。

それにしても、威勢がいいのはどこの女の子も一緒なのかな?

 戦いについてはベルも強いし、メグミだって負けちゃいないもんな。



「えっと?……どなたでしょうか?」

 恐る恐る、ジョンが尋ねたてみた。


「ウチは、アンドロイドだっちゅーの!忘れたか?……さっきまで傍にいたっしょ!」


「えーっと??????………指令~~」


 ジョンは、益々訳が分からなくなり、とうとうキング指令(玉佐間たまざまさん)に助けを求めた。


「あのー先輩……私にもわかるように………」



「んんー。

 これはな、イカとタコの性質を利用した……“外表組織がいひょうそしき変形転用へんけいてんよう”じゃ……

 簡単に言うと、中身は同じ機械のアンドロイドなんじゃが、外側の皮膚として作った組織は、あるレベルの周波数を受け取ると、任意の形に変形するようにプログラムしたんじゃ。

 今回は、男バージョンと女バージョンだ」


「おっちゃん、ちょっと待って!

 ……でもね、さっきのアンドちゃんと今のアンドちゃんは、しゃべり方も違うよ。きっと、性格も違いうんじゃないの?」


 メグミが、変身したアンドロイドを思い出して、姿形だけの変形ではないことに気がついた。


「おおお、メグちゃんよくわかったなー。

 このアンドロイドには、“人格回路じんかくかいろ制御装置せいぎょそうち”を組み込んであるんだ。外側の形態で、自然と人格も変わっていくんだ」


「へー、すごいじゃない、おっちゃん!……これなら、ジョンちゃんの気持ちに答えることが出来そうだね」


「それになあ……変身ユニットは、ジョンちゃんの声紋で、ロックされたから、誰でも自由にという訳ではなくなったんじゃ……もちろんアンドロイド本人の意思でも変えられないんだぞ!」


「そっか……だから、ジョンちゃんとの相棒って言ったんだね!」

 メグミも感心の表情を浮かべた。






「……そっか……わかったわ……

 ねえ、それじゃあ私に名前を付けさてもらえないかしら?

 ……今までは“バスパ”って呼んでいたけど、今度は、男の子と女の子に変身するんだから、名前も2つあった方がいいと思うの……」

 少し落ち着きを取り戻したジョンが、みんなに提案した。


「あのね……男の子が“アンディ”、女の子が“アンディス”ってどうかしら?」


「どうしてその名前にするの?」

 メグミが尋ねると、ジョンは少しモジモジしながら恥ずかしそうに


「なんか優しそうな名前だし……それに……昔、好きだった人に……あはっ!…イヤッ!」


「あーはいはい、いいと思いまーーす」

 最後まで聞かずに、メグミは賛成したし、男達も意義はなかった。

 ベルも、自分には関係ないとばかり、元気に賛成していた。


 かくして、新アンドロイドの名前は、アンディ(♂)とアンディス(♀)に決まり、ジョセフィーヌの相棒としての今後の活躍が期待されたのである。




※アンディとアンディスの両方のイラストを同時に掲載するとこんな感じになりますが、実際には、両方が同時に出現することはありませんので……あしからず。

https://kakuyomu.jp/users/kurione200/news/16817330667801370187

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