第38話 がんばれ!宿泊の攻防戦💛6 (神秘の火花)

「教頭、こんな感じでいいのか?」

「ああ、……さすが、力仕事はベルに限るな~」

「何言ってんだよ、これも訓練なら、みんなでやった方がいいじゃないのか~」


「まあ~あんまり細かいこと言うなよ……夕ご飯の後だから、みんなも疲れてんだよ………いいじゃないか~」





「さあ、みんなーーーーキャンプファイヤーの準備ができたぞーーーー」


 他のみんなが、手持ち花火の準備をしている間に、ベルフィールが1人でキャンプファイヤーの“やぐら”を組んでしまった。しかも、太い丸太で10段の“やぐら”を。


「わーーー、すっごい!」

 松田先生が、目を輝かせて喜んだ。

「本格的っすねー」

 園部先生も感心していた。


「早く点火しましょう…………これは、着火式が必要ね……やっぱり点火の女神役は、ベルフィール先生でいいわよね!」


「「「「意義なーーし」」」」


 細谷先生が、怪しげな笑みを浮かべながら、ベルフィールを引っ張って自分達のテントへ入って行った。


 しばらくして、細谷先生は、白い布をドレスに見立てて体に纏ったベルフィールを連れてキャンプファイヤーの“やぐら”の前に現れた。

 

「うん!……これより、点火式をはじめます………大いなる火の女神様―――――――」

 大げさに細谷先生は、セリフを言って、着火棒をベルフィールに渡した。


「これより、この大地に、めぐみの火をいただきますよう、お願いいたします………」

 そう言って、ベルフィールの着火棒の先にガスライターで火をつけた。


「おお大地の精霊よーーー、この火のめぐみを受け取るがいいーーーーー」


 ベルフィールは、🎵🎶🎵🎶華麗なBGMに合わせて、火のついた着火棒をもって舞った。

 そして、キャンプファイヤーに、点火した。

 火は、ゆっくりと“やぐら”の根本に燃え移り、少しずつ、少しずつ、上に燃え移っていった。


 みんなは、小さな炎と大きく舞うベルフィールを黙って目で追った。

 どちらも、幻想的な雰囲気を漂わせていた。

 だれもが、炎と踊りと雰囲気に吸い込まれていた時、いきなりBGMがオクラホマミキサーに変わった。

 そのとたんに、先生達から大きな拍手が沸き起こった。


「よーし、踊ろう………我々も………ベル、こっちにおいで……」

「え?私、これ踊れないよ……」

「大丈夫だ……教えてやるから……さあ、手を出して……」


 岸川教頭は、ベルフィールの手をとると、片手を肩にまわして寄り添いながら同じ方向を向いて進んだ。

「……総司、わたしの踊り見てくれた?……」

「……あ、ああ……火の神様、きれいだったよ……踊りも上手だったよ……今だって」


 みんな、ベルフィールの踊りの虜になっていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 キャンプファイヤーも終盤になった頃、小田先生が水の入ったバケツを持って来た。


「さあ、そろそろ……やろうか」

「そっすね、今なら、燃え残りのキャンプファイヤーの火で花火ができっすね」

「終わったら、バケツに入れるんだぞ!」


 それぞれ、手持ちの花火を選んで、キャンプファイヤーの残り火をつけては、楽しんだ。

「わーきれい!これ、見て!七色に変わるわ!」

「私のも勢いがすごいよ」


「ベル、花火はやったことがあるか?」

「んーん?……きれいなのは、初めてかな……」

「きれいじゃないのって?」

「ドッカンと爆発するやつとか、爆発しても煙しか出ないやつとか……」

「おいおい……それは、ただの爆弾だろ!」


 教頭は、呆れてしまったが、いくつか楽しいきれいな花火を渡して火をつけてやった。

「わーーー、きれいだな!これは、爆発はしないんだな……すっごいな!!」


 ベルフィールが、喜んで花火を楽しいでいると、足元に見慣れぬ黒いものが転がって来た。

「教頭、この黒いのも花火か?」


 そう言われて、教頭が振り向くと、黒いものに、何やら、長い尻尾らしいものが見えた。


「あ、ベル、飛べ。それはネズミ花火だ。それは、変な動きをするんだ。危ないぞ!!」

と、言われると同時に、黒いものは、その場で、火花を出しながらクルクルとものすごい勢いで回り出した。


「わあっ!……えい!とお!」

 ベルフィールは、その場はジャンプして回避したが、ネズミ花火は、回転しながら彼女を追い駆けてきた。

 回転速度が速まり、その分、火花の飛ぶ範囲も広くなった。


「しつこい!……何この花火?……あっちいけ!!……エイ!」

 ベルフィールのつま先キックが炸裂した。


「きゃあー……助けてーーー」

 近くにいた先生達にも、このネズミ花火が悪さをした。


「……エイ……トオ……ヤア……ソレ…………………」

 ベルフィールは、湖の方まで蹴とばしてやった。


「いやあんベルちゃん、助かったよ~、あんな怖い花火は、もう嫌だよ~」

 さすがの細谷先生も腰砕けになっていた。


「ところで、あんな花火を買ったのは、誰なのよ~?」

と、鈴木先生が少し怒りながら周りを見渡した。


「いやいや、買い出しはしたっすけど、だれもあんな花火は買ってないっすから……」

と、園部先生が、青くなって弁解した。


「じゃあ、どうしてあんな変な花火が入っていたのかしらね~」


「いや、変な花火ってだけじゃないかもしれないなあ~(あれは、妙に長く燃えていたぞ、それに誰が火をつけたんだ?先生達なら火をつける前にわかるはずだが……)」

 岸川教頭は、ベルフィールが放り込んだネズミ花火が飛んで行った湖の方を見ながら、頭を掻きむしった。

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