第36話 がんばれ!宿泊の攻防戦💛4 (突風)

「それじゃあー、この共有テントを見本に、それぞれ男性テントと女性テントを建ててください。…………ここは広いから、少し離して建ててみようか……」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「……いい?みんな、女子は4人いるから一度に4つの角を持ってテントを建てるわよ!」

 細谷先生がリーダーになって、指示を出していた。


「「「………いいわよー………」」」


 それぞれがテントの角に立ち、アルミの横棒をテントの小袋に挿したり、4つの柱になる縦棒を地面に突き立てたりしていた。


「後は、棒とテントを密着させる紐を縛ってちょうだい……」


 そう言いながら、細谷先生は、ベルフィールの傍に近づいて来た。


 彼女は、紐を縛りながら小声で、

「……ねえベルちゃん、ところでさ……あなた、教頭先生と暮らしてるって、本当なの?」

と、微かな笑みを浮かべながら聞いてきた。


「暮らす?……うーん?……えっとね~ご飯は作ってもらってるよ」

 ベルフィールは、あっけらかんと何のわだかまりもなく答えた。


「食事の面倒を見てもらってるということ?」

「うん、そうだよ。

……それに、洗濯もしてくれるよ。

……うちの掃除もしてくれよ。

……あ、私のうちはね、教頭の隣ね。

……お風呂はね、教頭のうちで入るの」


「どうして、自分のうちがあるのに、自分のうちのお風呂に入らないの?」


「だって、掃除するのが面倒くさいじゃない!

総司の家、じゃなかった、

教頭の………

あのね、家以外で総司って名前で呼ぶとね、怒るんだよね、どうしてかな?

………あのね、教頭の家のお風呂だけ使えば、お掃除するのは、一つだけだから楽じゃない」



「んんー、はなっから自分で掃除を気は無いんだなー

…………じゃあ、どこで寝てるんだい?」


「そうねー、ご飯食べて、お腹いっぱいになったとこかな……」

 ベルフィールは、隠すことなく明け透けに涼しい顔で話した。

 返って、聞いている細谷先生の方が、申し訳なさそうにしていた。


「あああー、ということは、教頭先生の家で寝てるのかな?」

「ええっと、大抵は、家まで負ぶって連れってくれているようだけど

………時々は、ソファーの上にいたりする。

………家まで持って行くのが面倒くさいって怒られるんだ、えへっ」

 ベルフィールは、なぜか嬉しそうに笑っていた。


 養護教諭の細谷は、もうそれ以上聞くのをやめた。






「……じゃあ、最後に、場所を決めてロープを張るから、4つ角を持ってー」


 細谷先生の指示で、テントの4か所に、鈴木、松田、細谷、ベルフィールと張り付いた。


「じゃあ………全体、少し右に動くよーーーー」


 細谷先生の指示で、まさに今、動こうとした時、近くの林の方向から突風が女子テントめがけて吹いてきた。


「「「きゃあああーーーー」」」


 4人は、テントにつかまったまま、風にあおられ、そのまま上空に押し上げれてしまった。


 一瞬で上空20メートルまで、吹き上がった女子テントと女子4人。


「手を離しちゃダメーーーー」

 すぐに、ベルフィールが叫ぶと同時に、魔法の呪文を唱えだした。


≪……万物の精霊達よ!我に力を与え給え!

    テントと共に空を舞う力を我ら4人に付与せよーー≫


 四角いテントの底面がそのまま拡張し、そのまま4人を包み込んで落下を防ぎ、風に浮遊した状態でゆっくり回旋しながら地上に戻ってきた。

 地面に着くと同時にテントは元の形に戻った。


「ふ、ふぁーー……助かった!!」

「い、いまのが……魔法なの?……」

「驚いたなあーーΣ(・□・;)」

 3人は、地上に降りても、まだ、立てなかった。


「お、お、おい……どうした?……なんだ?今のは??どうしたんだ???」

 岸川教頭が、血相を変えて走って来た。


「んーん、よくわかんないなーー………あっちの方から、すごい風が吹いて来て、飛ばされちゃったんだ」


 ベルフィーナが指さしたのは、風除けのためにある林と言われていた方向だった。


「(変だなー、あっちから風は来ないはずなのにー)まあ、みんな無事でよかったなー」

 岸川教頭は、首を傾げた。


「それにしてもベルちゃんの魔法はすごいなー………あれだもんあ~教頭先生も、うかつなことはできないんだな~」

と、細谷先生は、チラッと岸川教頭を見てから、ポンと肩を叩いて、


「苦労するなー、まあ、がんばれ!」

と、励ました。


 岸川教頭は、今一つ何を励まされたか、よくわからず、

「ああー」

と、だけ答えた。

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