第24話 運動会危機一髪 1 (計画前夜)

「ベル、今日の帰りに、買い物付き合ってくれないかな?」

 放課後、岸川教頭が珍しくベルを誘っていた。


「ん?……いいけど、どうしたの?」

 ちょっと嬉しそうなベルフィールは、自分の好きなオヤツでも買ってもらおうかと考えた。


「明後日、運動会だろ。……今年は、君もいるから、お弁当を作ろうかなと……」

 岸川教頭は、それとなく言いながら、照れ隠しに頭を掻いた。


 6月の最終日曜日は、古里山小学校の運動会である。

伝統があり、地域の人達も楽しみにしていて、たくさんの人が集まる。

 大人も子供もみんながお弁当を持ちより、お昼を学校で過ごす、昔からの習わしだ。


「いいなあ、総司のお弁当か……

運動会だから、特別なお弁当なんだろう?……楽しみだなあ」

 ベルは、もう食べるのを思い浮かべてうっとりしていた。



★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★



「“キング”指令?……で、いいんですか?」

「ジョン君が、その方がカッコイイって言うんだよ……

せっかく活動するんだから、名前を呼ぼうってね」


「ええっと……それで、オイラが

……“トール”ですか?……たぶん背が高いからですよね」


「そんで、ワシが、“タンク”なんだべか?……しゃべり方も注文付けられたべな」


「まあまあ、彼女の言う通りにしよう。なんせ、あのマイクロウィルスの借金をすべて返済してくれたんだから、凄腕会計係様だ!」


「ところで、キング指令、そのジョンがいませんが、どうしたんですか?」

 トールが、隠れ家の指令室を探してみたが、見当たらず、不審そうに尋ねた。


「実は、今、次の計画が進行中で、今日はその話で、君達にも集まってもらったんだ……」

「次の計画ですか…………」

 ちょうどその時、ジョセフィーヌが帰って来た。今日は、いたって普通のロングドレスを着こなし、可愛い女子を演じているようだった。


「キング指令、交渉相手とも話をうまく進めることができました。

後は、トールさんとタンクさんが、頑張ってくれるだけです。」

 ジョンは、そう言って2人を見て、ニッコリ微笑んだ。

 

なぜか、2人にはジョンの微笑みの方が、長年付き合ってきた指令の怒鳴り声よりも威圧感を感じてしまったのだった。

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