第3章 悪の組織が本格始動

第23話 季節の変化が……

「教頭先生、宿泊学習の計画です、確認をお願いいたします」

「ああ、わかりました……しかし、今年も、そんな時期ですか、山田先生……」

 教務主任の山田先生は、抜けるような青空を窓越しに眺めながら、眩しそうな目をした。


「実施は7月ですが、そろそろ準備をはじめないと間に合いませんからね……」

 慎重派の山田先生は、それでも40歳を超えたばかりであるが、忙しい教頭(悪者退治で)に変わってほとんどの校務を引き受けてくれている。

「いやー気が付けば、運動会もいつの間にか終わり、もう6月だもんな……君には忙しい思いばかりさせて、すまんね……」


「……そうそう、教頭先生も、少しは働かないとね……まあ、こうやって、見ていると、普通の仕事も少しはできるんだね~」

 隣の机に座って、教頭の方を眺めながら、ベルフィールが呑気にコーヒーを飲みながら、教頭の仕事を評価していた。


 呆れた教頭は、

「おいおい、お前も宿泊学習に行くんだぞ……主幹なんだから、頼むぞ!」

と、今更のように日常の校内業務も確認してみた。

「え?……学校の仕事もするの?」

と、ベルはとぼけていた。

「決まってるだろ!あのウィルスをやっつけてから、敵の動きがなくなって、すっかり暇になってしまったんだ……(なんか、いやな予感はするけど……)」

 教頭が、山田先生の作った計画書を見せようとすると、

「じゃあ、ちょっと、買い物に行ってくるかな~」

と、ベルは、そそくさと職員室から出て行こうとした。


「ちょっと、まて!今から、何の買い物に行くんだよ~」

「えっと、宿泊学習のオヤツを買いに………」

「1ヶ月先だっていうのに……早すぎるわい……」

 教頭先生に、怒られたベルフィールだった。





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【その頃、悪の組織のアジトでは……】



「……指令がいけないんですよ!」

「何がだ?」

「最初に、安いからって、あんなウィルスを買うから!」

「そうだ、そうだ!」


「だって、安かったんだぞ!

……敵と戦うには、コストを考えんと……

指令とは大変なんだ、勝てばいいってもんでもないんだ、安く勝てんとな……」


「何言ってんです

……ウィルスは安くても、その後の餌がめちゃくちゃ高かったじゃないですか。

あれは、ウィルス詐欺ですよ、絶対!」

「そうだ、そうだ!」


「おかげで、ぼくらは、ウィルスがやられた後も、餌代が借金になって、バイト三昧です。」

「そうだ、そうだ!」


「だから、悪かったって!……謝るよ!」

「本当に、悪いと思っているんですか?」


「おおお、お前ら、疑うのか?」

「だったら、証拠を見せてくだい!」

「見せてください?」


「へへへ、おまらが、たぶんそう言うと思って、今日は重大発表があるんだ!

 よーく聞け!………経理担当の美人アルパイトを雇ったぞ!!……

 さあ、どうぞーージョセフィーヌさん……」


「「おおおおおおおおおーーーーーーーーーーー」」


「皆様、こんにちは。わたくしは、ジョセフィーヌと申します。ジョンと呼んでいただいて、構わないですわよ!」


「す、すごい美人ですね。指令!……どうやって、見つけたんですか?」

「ん?……それはな……たまたまSNSで、我らの地球征服の奮闘ぶりを日記にアップしていたら、ぜひ仲間になりたいと申し出があってな、即OKしたんじゃ……」


「(怪しいなあ……、また、指令は、騙されているんじゃないかなあ…)」

「(まあ、そうだとしても……今回は、いいんじゃないかなあ……)」

 部下Aも、部下Bも、それほどジョンが気にいったのだった。


 スタイルが良く、身長が高い。紙はブロンドで、ツインテール。お淑やかなしゃべり口調とは裏腹に、セクシーなボディーラインがはっきり出るショートパンツにタンクトップ。ただし、その上に羽衣のような薄い布地を何枚も重ねたベールを全身に巻き付けたような衣装は圧巻である。

 そしてその布は、決して体に接してはおらず、すべてが中空に浮いた感じに見えることから、後に天空の魔女とも呼ばれるようになるのである。


「指令、すごい人が来ましたね……」

 部下Aは、鼻の下が伸びすぎて笑いが止まらなかった。

「しかも、あの仮面がカッコいいですね~」

 ジョンは、どこをどう見ても美人なのだが、目元だけを隠すように、蝶型の仮面を付けていた。唯一、これが働く条件で、給料などは言い値で構わないということだった。


 もちろん部下達も即決で、明日からすぐに働きにくることが決まった。


 いよいよ、夏本番を前に舞台は整ったようである。

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