助っ人志願?

(今日は、ホントついていない日だ……)

 母親の言葉が身にしみた。

「お喋りは禁物。淑女レディーは後ろで微笑ほほえんでいなさい」

 自分がお喋りだと言うことは自覚していた。が、今日はホントに黙っているべきだった。

 黙っていたら、こんなことにはならずに……あと好奇心を黙らせておけば、普通に街の観光をしていたはずだ。

 今は……飛行服を着させられている。

 服はダブダブで体に合っていない

 ホワイト・エリオン族の女性ローナ=ヒッコリーは、しつこいぐらいに、身長を聞いてきた。

「……一四一センチね」

 そのわりにはローナは目視で判断した。

 まあ、リジーは二センチほどサバを読んでいたが……。

 服を準備するためだと言ったが、彼女に合う飛行服など早々あるはずがない。

 このホワイト・エリオン族は陰湿だ。ローナが口下手なのかもしれないが、リジーが自分が整備した飛行機に乗るのが、反対しているのかもしれない。だが、仕事を持ってきたレジスターは強く希望した。

「次の場所を探すのが面倒」

 と……。

 相方となるエリナの方は、別に反対はしていない。

 いきなり、見ず知らずの相手と組むのはどうかと思うが、そのあたりを気にしていないのか?

 ただ最終関門のようなここのオーナー、グラウ・エルル族の女性、ケイト=ヴァル=ジークフルートは……。

「ヒクッ……」

 情景説明されている間、ずっとシャックリが止まらずにいる。

「ではよろしいですね?」

「ヒクッ、ヒクッ……」

 レジスターは、それを勝手に了承したと受け取った。


 整備棟を入ってみれば、エリナが笑顔で向かい入れた。

(しかし、よく笑う子ねぇ)

 それよりも目線を奪われたのは、オリーブ色に塗られた機体。

 彼女が操縦するから、多分、旧式化した複葉機かと思っていたら、目の前にあるのは単葉の全金属機ではないか。

 クラブで先輩や後輩のパイロット達が使っていたのも、布張りの複葉機だった。

 リジーはちょっと自信がなくなってきた。

 スピードが違いすぎる。

 乗り慣れた複葉機のスピードは、せいぜい二〇〇キロ台が最高だった。

 しかし、単葉の全金属機だと、その倍は出るはず。だが、もうすでに引き返せないまでに来ていた。

 すでに燃料パイプから補給が開始されている。

「ダイヤモンド製のダイナです」

 エリナは、子供がおもちゃを見せるように目を輝かせている。だけど、写真で見たことのある『ダイナ』とはちょっと違うような気がする。

 後部はそれなのだが、前部がちょっと違う。

 特徴的な卵を引き延ばしたような――機首とコックピットの風防キヤノピーが一体型となった――形では無い。普通の機首と風防が分離した形だ。

 その点は解決されずに、彼女は操縦席に座ってしまった。

 聞けそうな人は……いない。

 目の前にいるレジスターに聞いてみるか、と思った。だが、彼がその違いが分かるかどうか疑問だし、今は輸送作業の詳細を詰めている最中だ。

 輸送作業は簡単に言えば、ある地点に荷物を詰めた金属の筒を落とすというもの。

 すでに機体下には、その荷物らしい細長い金属の筒が、取り付けられていた。

 長さは二メートルぐらいあるだろうか。空気抵抗を抑えるためにか先端は丸い。

 運貨筒うんかとうと言うらしい。

 中身は食料と医薬品が入っているとか。

 この運貨筒は落下させると、パラシュートが開いて、衝撃が少なく目標に落とせると……だが、貿易商が何でそんな依頼をするのか、聞いたが「小遣い稼ぎだよ」と明らかにはぐらかされた。

「エンジン始動させます!」

 エレナの声が響いた。

 すでにローナが確認のためか、右エンジンにいる。

「一番、点火イグニツシヨンッ!」

 モーター音が聞こえる。

 どうやらクランク棒を回すのでは無く、電気式セルモーターでエンジン始動するようになっているようだ。

 クランク棒での始動は結構難しいが、電気式セルモーターは簡単だし、ケガをするとも無い。

 ローナが手を上げた。

 エンジンの始動を確認したらしい。すぐに左エンジンに行く。

「二番、イグニッションッ!」

 続けて左エンジンも始動した。


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