15 4人の時間

4人が仲良くなるには、時間は要らなかった。

元々親友同士の2組であったし、物静かな佑と和樹、明るめの拓馬と歩で、お互いに波長が合って居やすかったせいだ。

1ヶ月経つ頃には、学校内外問わず基本的に4人で、選択科目の際もそれぞれ同じ講義を取っているメンバー同士で行動するようになっていた。


歩は散々悩んだ末にダンスサークルに入部し、この日は練習は休み。

たまたま拓馬もサッカー部が休みで、佑と和樹はサークルに入っていないため、夕食は4人で一緒にどうかと話していたところだった。


「拓馬ー、俺、今日の夜鍋がいーなー」

「よし、じゃあ俺の家で鍋しよーぜ!」

「やったぁ!楽しみだな~!」


飛び上がって喜ぶ歩を、ほら嬉しいのは分かるけど落ち着きなー、といなす拓馬。

そんな楽しそうな2人の後ろを歩きながら、佑と和樹は多くの言葉を交わす事は無くついて行く。

4人で過ごすときには、最近ではこの組み合わせが多くなったような気もする。

和樹がちらりと佑の方を窺うと、その視線に気付いた佑が首を傾げた。


「カズ?どうした?」

「いいや、何でもないよ」


そう答えながら、和樹はまだ迷っていた。

あの日拓馬が言っていた通り、出会った頃に佑から感じていた壁のようなものは次第に感じなくなり、話している時の表情も穏やかであることが増えてきた。

ただ、初日以降聞けなかった佑が抱えているであろう何かしらの事情は分からず、相変わらず身体が接触しそうになるとさっと避けられるだけで、流れに流れるまま時間が経ってしまっていた。

今も一緒に歩いてはいるけれど、歩のようにくっついてくるようなことはなく、人が半分はいるくらいの隙間が開いている。

しかし、拓馬に聞いたとしてもはぐらかされてしまうし、佑に直接聞いても恐らく嫌がるだけだろうとも思う。


「佑!カズ!ほら置いてくよっ」

「うち食材無いし、この後そのままスーパーに寄って行こうと思うんだけど、いい?」


ぴょんぴょんと飛び跳ねながら歩が手を振り、拓馬も振り返って立ち止まり待っている。

分かったと返事を返しながら、まぁこの事は今はいいか、と自分で納得させる。

佑が自分から話す時が来るまでは、そっとしておくのが1番だろう。


「俺、辛いのがいい。佑は?」

「あ、俺も。キムチ鍋がいいかなぁ」

「あぁ、いいね。食べられないものとかあんの?」

「トマト鍋だけは無理かな…トマト嫌いなんだよね」

「そうなんだ、意外」


辛いもの好きでトマト嫌い。

また佑の新たな一面を見つけたな。

そんなことを思いながら、和樹は歩みを進めるのだった。

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