5 出逢い
「藍良くんと蔵田くん、だよね?」
拓馬が声を掛けると、一瞬驚いた表情を見せる2人。
小さい方の男がぱっと目を輝かせて口を開いた。
「もしかして、江咲くんと西原くん!?俺は藍良歩、歩って呼んで?経済学専攻なの、よろしく!」
歩は茶色いくせっ毛をぴょんぴょん揺らしながら、拓馬の手を取って握手をし、上下にブンブンと振った。
本当に大学生なのだろうか、小さな体躯とその行動も重なって些か中高生のようにも見える。
歩のテンションに圧倒される拓馬と佑を他所に、歩は嬉しそうに横に居るもう1人を振り返った。
「2人の方から来てくれて良かったね、カズ!見つけてくれて本当にありがとう!俺達今日編入して来たばかりで、右も左も分かんなくって困ってたの」
「あぁ、助かったよ。あの、歩…彼が困ってるからそろそろ手を離した方が」
「あっ…ごめんね!?」
「歩が煩くて悪いな。蔵田和樹、法学専攻だ。よろしく」
カズ、と呼ばれた和樹が立ち上がって微笑んだ。
背は佑や拓馬より10cm程高い、180cmは超えているだろうか。
動けば肩まで伸びた黒髪がさらりと肩に掛かる。
色素の薄い綺麗なグレーの瞳に吸い寄せられそうで、佑は言葉が出せなかった。
「もう!煩いとか失礼だなカズは!でもごめんね、自己紹介の途中で逸れちゃったね」
「いーや大丈夫だよ?俺は西原拓馬、法学専攻ね。こっちが江咲佑で経済学専攻。よろしく。俺も呼び捨てで構わないよ」
「江咲佑。よろしく」
佑にも握手を求めようとする歩に、佑は手を彷徨わせて引っ込めた。
何と伝えたらいいか迷って、結局ありのまま伝えることにする。
「あの…握手、苦手なんだ。ごめん」
「そ、そうなんだ!ごめんね、気にしないで?」
「いや、こっちこそ」
気まずそうに手を引っ込める歩に、拓馬がフォローを入れてくれる。
「あーごめんな、佑はこんな感じだけど、すっげー人見知りなだけだから。慣れるまでだから気にしないでな?んで、仲良さそうだけど2人は知り合い?」
「そーなの、中学から一緒でね!」
拓馬はそのまま歩と話し込んでしまう。
佑は和樹と2人取り残されてしまい、どう話したものかと焦った。
初対面の人間と2人きりで話をするなんて、佑が最も苦手としているものだ。
拓馬が一緒だから大丈夫だろうと高を括ってしまっていたが、当然だが自分から話さないわけにもいかない。
和樹は口数も多い方ではなく、歩のように自分から色々と話してくれるようなタイプではなさそうだったため、少し気まずい沈黙が流れた。
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