4 班分け
前期のオリエンテーションが始まった。
簡単な講義と時間割の組み方の説明の後、席の前の方からレジュメが配られ、それを見た学生達がざわつきだす。
「何の騒ぎ?」
「佑、これだ」
拓馬が指したのは、前期に開講される講義一覧が印刷されたレジュメ。
確認してみると、2年生の前期も学科合同の講義が殆どで、一部選択科目が設定されている。
3年生からは専攻別科目が入ってくるため、経済学専攻の佑と法学専攻の拓馬とでは、今後は一緒に講義を受けることも少なくなっていくだろう。
「ふーん…今期もほぼ学科合同で講義なんだ。選択科目どうしようかな」
「あー違う違う、講義一覧じゃなくって、その下見てみなよ」
「下?」
学生達が注目しているのはそのレジュメの一番下、飾り枠の中に書かれている内容だった。
「え…3泊4日の文化学部合同キャンプ?」
「裏に班も載ってんよ?」
「あ、本当だ。班一緒じゃん」
各学科毎に組み分けられた班は1班4人の構成で、同じ班に佑と拓馬の名前がある。
残り2人は見覚えのない名前だった。
「藍良歩と、蔵田和樹?」
「多分あの編入生達だろ、知らない名前だ」
「えらく組み合わせ偏ってない?」
「それぞれ結構仲良さげなメンバーを揃えてるっぽいな。ま、いーじゃん?俺が居るのは心強いだろ?専攻別だったら確実に班分かれてたしな」
「まあ、そうだけどね」
口でははいはいそうですねー、と否しつつ、確かにそうだと思いながら佑は2人を見た。
例の2人はレジュメを覗き込みながら話をしているのが見え、笑顔を見せる小柄な方に、背の高い方が少し微笑んだ。
あの2人が知り合いなのだとすれば、人見知りの佑にとって、顔を知っている程度の班メンバーと一緒に3泊4日も一緒に過ごすなんて考えられない。
しかも泊まりなら尚更嫌だった。
「班はこれで変更なしな。今日は解散するから、班の奴らと顔合わせしとけ」
そう言い残し、教授達は皆講義室を出て行ってしまった。
恐らく他の学生たちも同じ学科で顔見知り同士で班が組まれているのだろう。
一斉にわらわらと動き始める学生達の中でも、困ったような顔をしてきょろきょろしている2人に目がいった。
「拓馬、俺ら探してるっぽいよ」
「よし行くか。佑、人見知りでもちゃんと話はしろよ?」
「分かってるって」
2人は荷物をまとめると、藍良歩と蔵田和樹らしき人物達に近づいていった。
話しやすい人たちだといいな。
そう思いながら、先陣を切って歩いていく拓馬に佑も着いて行く。
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