5話『うぃーーん』
操縦方法。レバーペダル式これは。
記念すべき元祖1作目水の星のグランドでの第1世代の操縦方法。
そして当然この操縦方法よりレスポンスが良いのは
水の星のグランド→グランドⅡ地球の意思→グランドⅢソラの旅人
ちょうどⅡの最終決戦の主人公機グランドⅡからグランドⅢの世代にかけて完熟していった操縦システム、それが天脳システム。
天脳システムとは俺たちがその頭脳で考えるそのもっと外側。
つまり例えばこのリバーシのコックピット内、この空間が電脳であり、
俺がレバーペダルを動かす物理的な動作を必要とせず俺の頭脳とリバーシの天脳が結びついて、こんな風に!
リバーシは野を走る跳ぶ飛ぶ、逆さ宙返りして着地。
それは浦島銀河の思い描いていた通りのアクロバティックな動きであった。
「っと──天脳システムは思いっきりやりたい事を補助してくれるもう一つの精度の良い機体に宿る司る脳ってわけだ」
「つまり素人でもオールオッケーってわけ! でもなく」
『ちょっとおおおお無理! ナニが無料レクチャーーあたたたた……しかも頭いたっ!』
「そう実はこのシステム原作同様に異常にアタマが痛くなる、未だどのシリーズでも未完成なヤバイシステムなのだ」
『痛ったーー……』
「そうちょうどこんな感じでまともに訓練していない素人がやっちゃうと尻餅ついちゃう」
『ふざけてないで!』
ずってんとミドリの野原に尻餅をついたフェアリーナイト、何故かフェアリーナイトの初心者パイロットの佐伯海魅は逆さになって通信ビジョンに映っている。
また、パンツ……昨日は白きょうは黒って……。
またもスカートのナカに秘められていた少々のラッキーを、すこしだけ浦島銀河は見つめてフェアリーナイトとパイロットの助けに向かった。
▼
▽
「おっ、大丈夫かビギナー」
リバーシの差し伸べた手になんとか掴まり、フェアリーナイトはなんとか元の棒立ち状態に起こされた。
んー、これ地味にリバーシとフェアリーナイトの握手か……なかなかエモいな……。
『もうなんなのこれぇ……できないのわかっててやったぁ?』
ひどく苦く痛く崩れた表情の佐伯海魅が通信ビジョンに映る。
誰かのせいでとんでもない目にあったそんな表情だ。
「いやいやわずかながら若いパイロットが【天】である可能性にかけたぜ俺は」
『なにそれ……テン?』
依然痛そうな顔で首をすこし傾げて問い返した。
「要するに天才ってわけ。でも尻餅つく天才はいないからさ」
明るいシラガの表情も今の疲れて酔った彼女にとってイラなくて、息をおおきく吐いた。
『もういいやっ……うっ、吐き』
おおきく吐いたのがトリガーとなったのか────その青白い表情と右手で口元を抑える仕草は…………ただならぬあの予感。
「おいっ、まさかまさかマテ待てえええええヒロインがはじまって数話でゲロを吐くなああああ」
「ろろろろっろおrrrrrrr」
「のおおおおおおおおおおお」
難易度☆のエリアからは結果────接敵してないから学校へと戻れた。
そこそこに……ゲロまみれのヒロインを連れ帰って。
▼▼▼
▽▽▽
とにかく学校の自販機で購入したスポーツドリンクは渡した。
その間に女子の汚れた白い制服はプラモ制作用に時々使っていた俺の白い予備ジャージに……なっていた。それを推奨したのは俺だが……。
とにかくのとにかく……
いきなり天脳システムを体験させたのはまずったか……。
明確に俺のおふざけ半分が過ぎたものであったと思わざるを得ない、これは後悔。
許されるかは運だけどここは素直に……
「なぁ。すまんさっきのは俺のミスだ……」
「ほんとそれ……」
部室に俺が運び込んできていた安物の小さな茶系のアースカラーのソファーに寝込んでいる。
海魅はすぽっとその渋い色合いのソファーに仰向けで全身が収まっている。
部長の申し訳なさそうなセリフにどこかチカラのない返事をした。
「な、ナニ食いたい? 吐いた分なんか入れないと栄養がってグランドⅡのシーンであったんだ」
そんなロボットアニメで得た知識を彼女に言ってしまったのはふざけてしまったかとちょっと発言を後悔しながらも、
「…………ぷりん」
そう一言、天を向いた青い瞳から返ってきた。
その一言を逃すはずはなく、
「プリン! お、おっけすぐもど」
「硬めのプリン」
「お、おっけ硬めのプリンか! 最近は硬め勢力が盛り返してきてるってきいたな! よしいって」
「硬めの牛乳プリン」
「お、おうっ硬めの牛乳プリンか! 最近は硬めの牛乳プリンせいりょ」
「って牛乳プリンに硬めもくそもないだろ! スタンダードなタイプしかそれもどこのコンビニも1種類ぐらいしか取り扱ってねぇだろ! 硬めと柔め2種類あればそれはきっと奇跡だぞ!」
急ぎ部室のドアから出ようとしたときのドア前でのプリンリクエスト2連射にしっかりと部長は反応。
いつの間にか青い目はじーっとドアの方を向いていて、
「あ、あーーっとにかく行って来るからな硬めの牛乳プリンな! なかっても恨むなよおお吐くなよおお! 浦島銀河近場のコンビニへ緊急出撃! っし!」
急ぎ制服姿の白髪部長の浦島銀河は部室を出て近場のコンビニを目指してダッシュしていった。
▼
▽
『なんでこんな目に……はぁ。ゲロとかみられてぴんぴんにサイアク』
『なんであんだ硬めの牛乳プリン……いやこれは新発売……』
▼
▽
演技ではなく息を切らした浦島銀河が戻ってきた。
彼が出ていって5分程でまた部室へと戻ってこれたのだ。
「うぃ……なんでこんなに?」
息を整えて近付いてきた彼から横たわる海魅が受け取ったのはプリンひとつにしては大きいレジ袋。重い質量であった。
「プリンだけじゃなくて部長セレクトのカラダに良さげなもん、なんでも食えよフェアリーナイトより安いさ」
体勢をソファーに座らせ、海魅ががさごそコトコトとレジ袋から取り出してみた全部。
カットフルーツが透明容器に入ったヤツとバナナ、硬めの牛乳プリンとやらかめのプリンと、板チョコアイスとカチ割り氷。
けっこうな品数であった。
とりあえず部長の思う寝込んでいる病人に良さそうなものが取り揃えられていた。
その部長セレクトの軍勢を作業台に並べてみて、青い目はじーっとしばし見つめて答えた。
「んー。保健室いけばよかった」
「なっ!? おま……たしかにそうだった!」
「ばーぁか」
「……たぁぁ」
嫌味な馬鹿ではない、見つめて一言ばーぁか。
返す言葉もなくたじろぎ少々うなだれるしかなかった部長。
女子はくすりと笑い、んっと彼の方に手を伸ばした。
「んっ、これ開けて」
「おぅ! って硬めの牛乳プリンの蓋ぐらい開けれるだろおおおお握力2のお嬢様ヒロインかああああ」
「うんっ」
「たわけえええええ! ──はい」
すぐさま近付いて即びりっと白と赤の絵柄の牛乳プリンの蓋は開かれて、中身の詰まった容器は病人のヒロインに手渡された。
「スプーン」
「すぷあっ」
「すぷあっ?」
スプーンいりますか? とは聞かれなかった。最初から気を利かせて入れてもくれなかった。
つまりあの顔も覚えていない店員のミスでありこれは俺のミス。
スプーンがなければお嬢様ヒロインはプリンを食べれないのだ。
じっと見つめてくるのは当然あるよね? スプーンよこせの圧、
この圧に対する策をシラガの部長は目を泳がせて考えていく。
▼
▽
導き出された答えは────黒。
「仕方がないこれでクエ」
「なにこれ?」
手渡されたちょっと濡れた110分の1の黒。
「パワーシャベ、スプーン」
「ちがうでしょこれ」
「チッ、インフィニットフルパッケージホーク金剛夜叉のパワーシャベルだ。そしてホークじゃなくて今はスプーン! なんてな!」
「馬鹿じゃん」
「バカです、洗ったよ」
▼
▽
ちゃんと洗われたと言われている黒いパワーシャベルはすくう。
丁度いい感じにチョウドいい量を頼りないプラスチック製のコンビニスプーンよりも力強くガッシリとした武装が牛乳プリンの白をすくう。
そして艶めく海魅の唇へと口内へと運ばれていく。
その目を閉じゆっくりと味わうファーストスプーンを固唾を飲み見守る部長。
「うんこれは、」
「これは?」
「硬すぎる牛乳っプリン!」
「硬めであってすぎちゃいけないだろ! 新発売ですよ!」
「だねっ? 硬いよ」
「だなっ、硬そうだな」
「「あはははは」」
部室は謎の笑いに包まれた。その後に牛乳プリンがひとくちふたくち運ばれていく。
『うぃーーん』
なんて言っちゃう可笑しなテンションになっている海魅。
それを見て笑ってしまった銀河。
なんとも銀河のさっきまであった負い目はいつしかなくなり、ヒロインの彼女はふざけながらも彼の買ってきた新発売の牛乳プリンを食していくだけ。
彼女は一人では見舞いの品を全部食べ切れないというので、銀河部長ももう片方の金色のパワーショベルで参戦した。
わたしの今日のアオハルはシラガの無料レクチャー、結果ゲロまみれのわたしがなぞのパワーシャベルですくって食べるちょっと硬めの牛乳プリンだった。
アオハルレーダーはやっぱりすこし……バグっちゃってるみたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます