プラロボ4話
アオい梯子の先には秘密基地、その女子高生のアオハルレーダーは止められない。
梯子を上り不思議と天を突き抜けてまたアソコに────
「────はぁはぁオマエな、勝手に上るなよ!」
またパンツ見ちまった……。
佐伯海魅を追って秘密基地へとやってきた浦島銀河。
梯子を上っていた際の少々のラッキーよりも、その女子高生がまた勝手をしないかがひじょうに心配でついていったのであった。
薄暗い部屋に中央に光る機器がある、秘密基地。
「部員だから当然」
「おいいつから部員になった」
「サッキ~~」
「サッキってな……あっ! おまえまたぺたぺた親戚の子みたいにアチコチ触るなよ!」
「その例えナニ……? はいはい見てるだけ、ふんふーん」
ふんふんと小刻みに頷くリズムを取りながら部屋を歩きまわりはじめた白い制服の黒髪に、
「その高飛車ヒロインの活発な見てるだけがイベント発生しそうで怖いんだけどな……」
「は? なんて? ヒロイン?」
彼がぼそりと言った言葉を拾い海魅は彼に振り向いた。
「え……ホラッ勝手に機体に乗って出撃するどうしようもないヒロインっているだろ! おまえそれ!」
と指差す。少し取り繕って指を差した、あくまでもトラブルを発生させる系であるヒロインであると補足して。
「はぁ? わたしがそんな馬鹿なわけないじゃん。ま、ヒロインってのはイケてるからそうね。ふんふ~~ん」
「じ自分で言っちゃう……?」
「あんたが言ったからねーー、ふーんヒロインふんふーんヒロイン」
「やっぱこんなヒロインいねぇわ……」
「あっそ。じゃ行こ」
部屋の物色をやめ、立ち止まり銀河を見つめて海魅はしれっと言う。
ここからそのヤル気のありそうな表情が行くといえば梯子を下り帰るでもなく、昨日行ったアッチのことである。
「は? 行かない」
「いくよ」
「なんでだよっ! 昨日おまえ俺が来なけりゃ死にかけてたろ」
「ふーんシミュレーターでしょ? 死なないじゃん」
至って平然と言葉をすぐさま返す。彼女は別に怖がっている様子もなく。
シミュレーターという彼が放った言葉を信じるというよりは言ったそっちに責任があるかのように言うのだ。
「んぎっ!? あ、あーそりゃぁ……シミュレーターでも痛いものは痛いだろとにかくあぶねーの」
シミュレーターでも痛いから危ない、それが浦島銀河の出したそれらしい言い分であった。
たしかにあのロボットの中のたたかいで揺れる痛みがあったと顎に手をやりながら一瞬思い出し考えた海魅。
でも生きてるじゃん? ふんふーん全然納得しないんだから、なにへたに隠してんだか。へたへたふーん。
「ふーんでもアソコ何回も行ってんでしょ、じゃないといきなり素人がロボットで戦えないじゃん?」
「だーれが素人だ。そりゃちょっと気になって下見ぐらいはするだろ、部長として? 安全確認? そして試運転?」
「それフツウにたのしんでるだけじゃん」
「ん、んんーーー? ──たのしんでない……!」
「顔ワラってるけど」
たのしんでないという割にはニヤけている、嘘が下手な部長を真顔で見つめ指摘した。
「──はははは」
そう表情をすぐに見抜かれて指摘されては部長はワラわざるを得なく、シラガをぐわっとかきながら彼女のどことなく圧をかけてくるクールな表情へと返した。
「とにかくいかせて」
「じゃあとにかく言う事きけよ、ヒロイン」
とにかくいきたい女子ととにかくこのヒロインの暴走を止めたい男子。
男子は目を凝らしてバーンとチカラ強く女子を左手で指差した。
「イヤだけど」
淡々と答える青目のヒロインは動じない。
「やっぱこんな天邪鬼……ヒロインじゃねぇ……」
差した指は苦笑いながらチカラ失せ地に落ちていった。
「そりゃ人間おなじじゃないっからねーー」
急にちょっと笑いおどけた青目の女子を挟んだ中央の機器ごしに見て、
たしかにおなじ人間じゃないな……。
これ以上の制御は不可能と腰に両手を当てた銀河はそんなことをこのヒロイン女子高生に対し思った。
▼
▽
その後プラロボ部の部長と部員(仮)は話し合い一度下の部室に戻って仕方なしに持ってきた2体のプラロボ。
灰色のリバーシとつい先ほど完成させたばかりの130分の1フェアリーナイト。
「本当にプラロボがあんなデカくなんの?」
「さぁなぁー、もしかして俺たちが小人になっているのかもだぜ?」
「いいよそういうの、そんなにおもしろくないし」
小さく指でジェスチャーまでした男子の冗談を、クールに女子は
「おいっ! ったく。じゃあしっかりフェアリーナイトを持ってろよ、また生身で機械竜に追われたくないだろ」
「わかったって」
「よし本当にわかったな」
「わかったって」
「盛り上がりの無いさっきと同じトーンな気がするが(逆にそっちの方がむずいぞ)……じゃあ行くぞ!」
「はいはいおー」
気の抜けた返事を最後に、
中央のエアホッケー台のような機器に、その中のどこまでも広い宇宙のようなマップの拡大した指定したヒトツに、
ふたりはアオく呑まれていく。
秘密基地に煌煌と光るアオい光に────────
▼エリア8765 難易度☆▼
「きゃ────────え、ちょっと!?」
『よ、元気か』
「なんかナカにいるんだけど! あんたどこ?」
『そりゃロボットだからな、俺はリバーシの中で、お前はフェアリーナイトのナカだあーーーー! でこれ通信ビジョン』
手を振っているのは不思議にも宙に浮いた通信ビジョンに映るシラガの生徒であった、ワラっている。
「なんなの……情報量おおすぎ……」
▼
▽
『またこのスクラップだらけのところ』
「んー。そうだなちがうところもあったけど基本こんな感じだぜ」
『なんか暗いね』
どころどころ剥げたミドリの野にスクラップの山、小山が、積まれている。
空は青いが、どことなくこのセカイの雰囲気は暗い。
パイロットシートから周囲の自分だけがソコに浮いたような全周囲モニターの高い目線の景色を見た佐伯海魅はそう感じた。
「んー……はは、そうともいえるかな。そんなことよりとにかく動かしてみろよ」
『この子を? どうやってやんの?』
「かーーっしゃーない。ここから先は部長浦島銀河のグランド主人公級レクチャー(有料)だぜ」
おデコを天に向け抑えて十分に溜めて────通信ビジョンに映る元気でオーバーリアクションなシラガは指をチカラ強く女子高生に指している。
『さっさとおしえて』
彼女はエネルギッシュな部長のソレを目撃しても、対応いたって冷静。
「おっとこれ以上の雑言はヒロインの怒り買っちまうな」
『…………』
そして沈黙。通信ビジョンに映る彼女は口を真一文字に閉じた無の表情である。
硬くチャックは閉められており、刺さるアオい視線は痛く、彼が再びしゃべり始めるまでしゃべる気はないようだ。
とんでもなく痛いマジックを貰ってしまったシラガはまたいつものように髪を掻き苦笑いで誤魔化し、彼女が無言で言うようにさっさとふざけるのはやめてしゃべり始めた。
「オンナの沈黙ほどおそろしいものはない……さすがにただの女子高生がいきなり手足のように動かせる天才パイロットじゃないからしっかり無料レクチャーするぜ」
「だからはやくして」
『分かった本当にはやくするぞ! よし、先ずは────────』
シラガ部長の黒い瞳に熱が宿る、メラメラと燃えている彼の表情に内心のアオハルレーダーをピンピンと立たせて青い瞳の女子高生は閉じた口の口角をアゲてプラロボ操縦の初心者として玄人の無料レクチャーをしっかりと聞き入った。
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