こいねがう

カエデ

こいねがう

一度でいい。あと一度でいいから彼の笑う顔が見たい。あの日を境に彼が私に会いに来る時は必ず悲しい顔をするようになった。以前は私を見ると満面の笑みで駆け寄ってきた。その顔を見ると私も思わず微笑んでしまっていた。

彼は私の話すこと全てに相槌をうちながら楽しそうに聞いてくれた。

そんな彼とくだらない会話をするのが好きだった。

そんな彼を見るのが私は好きだった。

そんな日常が好きだった。

でも今は彼ばかり私に語りかける。私の話を聞きもせずに。

「もう来なくていいよ」

そんな声も彼には届かない。それでも私は諦めずに言い続ける。言う度に胸が苦しくなって涙が溢れそうになってくる。それでも私は言い続ける。それが彼の幸せのためなのだから。もう会うことも話すことも出来ない私の事なんて忘れて早く次の恋を見つけて欲しい。またあの頃ように笑うようになって欲しい。たとえ私があの笑顔を見ることがなくても私の事なんて忘れてどこかで幸せになってくれればそれでいい。私のせいで彼に不幸にならないで欲しい。

だから私は今日もこいねがう。

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こいねがう カエデ @kaede000108

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