地獄への門
残すは一つ
国際連合に出て、日本が正式な国家として認められる事となってから2週間後。
俺は今日の仕事を終えると、最後の五大ダンジョン“
あのクソッタレの神に与えられた試練。五大ダンジョンの攻略も残すはこのダンジョンのみである。
ここまで長かったような短かったような。
そんななんとも言えない感情を持ちながらも、俺は結局のところ神はクソだという結論に至る。
五大ダンジョンは攻略できているが、その過程があまりにも無理ゲーすぎた。
俺は運良く生き残ったが、一歩間違えたらあの世に行っていたことだろう。というか、あの世に行く以外の選択肢がない。
マルセイユを吹っ飛ばした主犯格としてテロリストにされた挙句、グダニスクとか言う頭のイカれた街で勢力争いに巻き込まれ、気がつけばそこのトップとなり、その過程であっちこっちの国から恨まれまくった。
POL(ポーランド)が俺を捕まえようとかしてこなかったから助かったが、POL(ポーランド)からも追われてたらまじで終わってたな。
サンキューPOL(ポーランド)俺、お前のこと好きだよ。
あの国のおかげで、今はこうしてそれなりに平和な国でアホすぎる仲間たちとワイワイできている。
一応国家元首としての立場も固まったので、表向きに俺を殺しにくるやつも減る。
俺はようやく、ようやく、身の安全を多少なりとも保証されたのだ。
いやー長かったね。いや本当に長かった。
何せ、この世界に来て3日目で全世界から指名手配を食らってたんだから。
ちなみに、公式な指名手配は既に取り消されている。
レミヤ曰く、その分裏での懸賞金がまた跳ね上がっているらしいが。
勘弁してくれよ。いや本当に。
その金額、なんと100億超え。
当たり前だが、過去に裏社会でこんなにも懸賞金をかけられた奴は存在しない。
裏社会でもそこそこ有名だった俺は、今となっては一攫千金の宝くじだ。
お支払いは命で。正しく、一世一代の大ギャンブルである。
まぁ、日本帝国って世界樹ちゃんの加護があるので密入国が一切できない上に、国にいる間は世界樹に守られているので間違っても俺を殺せない。
もし、この懸賞金を受け取る奴がいるなら、それは“時間”か“病”のどちらかになるだろう。
そいつらに金が必要なのかどうかは知らんが。
「五大ダンジョン“
「一応、蜂と蛇が出てくる場所までは攻略されているらしいが、それ以上のことは何も分からないダンジョンだな。不気味だぜ」
「過去にSランクハンターが5人ほど攻略に挑んだらしいですが、1人を残して全員地獄に飲まれたそうですね。そのひとりの証言によってここまでしか分かっておりません」
「何がクリア条件なのかすらも分からないのは面倒だな。内部に入ってそこから探さなければならん。天国みたいな特殊なダンジョンの場合は大変だそ」
「まぁ、ボスの能力で食料や水に関しては困ることはありませんがね」
五大ダンジョンは全員で挑むつもりだ。
黙示録のような急に吹っ飛ばされて攻略開始でもない限りは、基本的に全員で挑んでいる。
その為、調べるのもみんな一緒にだ。
この国にいる時は割とバラバラに動いている仲間達も、この日ばかりはみんな集まる。
手放せない用事の時は来ないけどね。そこら辺、ウチはわりと自由なのだ。
「蜂........確か、リィズの能力が蜂に関する能力だったな。親戚か?」
「私は五大ダンジョン生まれじゃないよ。でも、どっちの蜂が強いのか勝負してみるのは楽しそうだねぇ」
「それ、俺らも巻き込まれるからやめてね?リィズの能力は仲間たちにも作用するんだから」
リィズの能力“
生物の肺に寄生するたまごを生み出し、肺から羽化した蜂が宿主の首を切り落とすホラーチックな能力だ。
しかも、働き蜂達は当たり前のように強い。
半径20m程は生物が生きられない状況となるため、仲間達がいると使い辛い能力でもある。
俺の記憶にある限り、能力を使ったのは数える程しかないはずだ。
だって殴った方が早いからね。この子、能力もさることながら、本体も馬鹿みたいに強いからね。
「リィズの能力は援護とかには向かないからな。昔、ダンジョン抗争の時に見たことがあるが、あれははっきり言って滅茶苦茶だった。ボスより目立ってたぞ」
「割と弱点も多いんだよ?肺が頑丈すぎる生物には羽化しても殺されるし、そもそもスーちゃんみたいに内部が全て消化器官のような魔物には力が出せないからね。スーちゃんは私の天敵だよ」
「どこの世界に肺が頑丈で食い破られない生物が存在するんだよ」
「エンシェントドラゴンとかは、体内が高熱すぎて卵が死ぬとかありそうだけどねぇ」
逆に言えば、エンシェントドラゴンレベルじゃないとその能力を無力化できないって事じゃないか。
あれ?そんな能力を無力化できるスーちゃんって実はエンシェントドラゴンだったりする?
(ポヨン?)
「........可愛いし、それはないか。ポヨポヨしてて可愛いね。いつも護衛ありがとね」
(ポヨン!!)
何気にこの組織の中では古株のスーちゃん。
仲間になったのはジルハードが加入した後だから、本当に古参中の古参なんだよね。
ちなみに、この組織で“古参”と言うと俺、リィズ、ジルハード、スーちゃんの3人と一匹となるらしい。
どうやらレミヤ以降は古参という感じではないんだと。何が基準なのかは知らんが、なんかそんな雰囲気がある。
食い意地だけで着いてきたスライムが、こんなにも頼もしく可愛い子になるとは思ってもなかったよ。
いやほんとに。肉ちょうだい!!ってやってきたスライムが懐いて、今じゃ俺の防弾代わりだからな。スーちゃんもまさか、防弾チョッキ代わりをやらされるとは思ってなかったはずだ。
「地獄に関する神話、逸話も多いわねん。見方次第では、この国の下も地獄と言えるし。どの話をモデルとしているのかはちょっと分からないわねん」
「蜂と蛇が出てくると言うところで絞れるはずなのですが........中々見つかりませんね」
「フォッフォッフォ。わし、こういうの苦手」
五大ダンジョンには1つ大きな特徴がある。
それは、世界的に有名な逸話、神話を元にしているという事だ。
世界樹は九つの世界。黙示録はヨハネの黙示録。天国はダンテ神曲。悪魔の国は、おそらくソロモンの書。
多少なりとも神話や逸話について調べたことがある人なら、聞いたことぐらいはある有名な話がモチーフとなっているのだ。
この法則にハズレはない(今のところは)。
というわけで、地獄に関する話を調べているのだが、話が多すぎてどれをモチーフにしているのか全くわからない。
こういうの調べ物が苦手なおじいちゃんは早くもギブアップしているし、皆の顔も弱冠疲れていた。
調べ物はみんな苦手そうだな。多分、こういう一個一個調べるのが苦手な奴が多いのだろう。
アリカは自分の興味のある事じゃないと辛い顔をするしな。
レミヤは普通そうだけど。
「........休憩にするか。これ以上やってたら精神発狂者が現れても不思議じゃない」
「そうですね。思っていた以上に皆さん忍耐力がないようで」
「クソどうでもいいつまらない話を読み続けるのはキツイよ。ケロッとしてるグレイちゃん達がおかしいの」
「そうだな。興味のないものをよくもまぁここまで調べられるものだ。これが薬草に関する事だったら今頃、熱中していただろうが」
「もう5時間も調べてんだから普通は疲れるんだよ。俺達がダメなんじゃない。お前らがおかしいんだ」
5時間なんて大した事ないだろ。こちとはオールで死ぬほど眠いゲームをやってた事もあったんだぞ。
あぁ、クソほど面白くない単純作業ゲーをクリアするまで寝れない縛りをやらされた時を思い出す。
思い出したくないよォ!!お袋の顔が浮かぶよォ!!
今思えば一種の虐待だろあれ。今の時代なら訴えても勝てそうだよ。
お袋との苦い記憶を思い出していると、レイズが静かに手を上げる。
「あー、休憩なら俺ちょっと失礼していいですかね?ちょっとこの後予定が入ってまして........」
「予定?」
「カルマの買い物に付き合う予定があるんすよ。既に1時間ぐらい待たせちゃってるんで........連絡は入れましたけど」
........それ、もっと早く言えよ。
こんな詐欺師のどこがいいのかは知らないが、我らが純粋な乙女カルマちゃんはレイズの事が気になるお年頃である。
レイズがこの国にいる時は基本的に一度はデートに誘うぐらいにはレイズの事が好きであり、仲間達も薄々というか、思いっきり知っていた。
あのねレイズ。デートがあるならそっちを優先していいからね?
打算的な話だが、異種族同士の結婚を王がやってくれたら、他の国民もやりやすいのだ。
その架け橋となってくれ。俺は知ってるぞ、何気にレイズもカルマの事を気に入っているのは。
「はよ行け馬鹿野郎。お前、先に言えよ。そしたら今日の仕事は放棄してよしって言ったのに」
「いや、流石に皆さんが仕事している中で遊ぶのはちょっと........」
「言い訳はもういいから、はよ行けや。頭ブチ抜くぞ」
俺は銃を取り出して“はよ行け”と脅す。
あのねレイズ。それ結果的に俺がカルマ王から小言を言われるから。
カルマちゃん、レイズに関係することになると割と俺に文句言ってくるから。
この前だってあっちこっちに連れ回しすぎだって言われてるから。
俺がそう言うと、レイズは“じゃ、失礼します”とだけ言って部屋を出る。
そして俺達は全員何も言わずに席を立つと、急いで変装を始めるのであった。
レイズのデート?乙女のカルマちゃんと?
そんなの見ない訳には行かないよなぁ?!
イチャイチャしろよ!!なんなら既成事実でも作れよ!!ヤレ!!イケ!!押し倒せ!!
幸せな家庭を作ったらお前は外に連れていかないからな!!
要は、全員ゲスかった。
後書き。
次回、全員でデートを覗く。
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