人類最強
知ってた。
この世界に来てから早一年以上。
俺は自分の運の無さには懲り懲りしている。
あっちへ行ったら何かに巻き込まれ、こっちへ行けば何かに巻き込まれる。
そんな人生を1年も過ごしてきたのだ。
特に日本帝国ができてからはそれをより強く感じるようになっている。
国を出てどこかへ出かけた時は基本何かしらの事件に巻き込まれ、最終的にはドンパチをせざるをえないのだ。
そして、それは今日だって例外では無い。
鳴り響いた爆発音。各国の代表たちが状況を一切理解していない中、俺とレミヤそしてアーサーが動き出す。
修羅場を潜った回数だけならば、ここにいる誰よりも多いと自負している。生まれてこの方、権力を握って椅子にふんぞり返った奴らとは違うのだ。
こちとら叩き上げだぞ。お前らも1度グダニスクにでも行ってこい。
「どこのどいつだよ。全世界に喧嘩を売った馬鹿共は」
「........監視カメラの映像から察するに、恐らく
「あたかも俺も同類として扱うんじゃねぇ。俺はここまで馬鹿じゃない」
「確かに、マルセイユを吹っ飛ばしたのは世界でも
喧嘩売ってんだろレミヤ。そのポンコツな頭をスクラップにしてやろうか。
俺は相変わらず人へ喧嘩を売るのが上手いレミヤにある意味感心しつつ、席を立って部屋を出ていく。
そして、気づいた。
その隣にちゃっかり配信者大統領が居ることに。
彼女は元ハンターであり、今も尚その活動を続けている生粋の戦士。
この程度の爆発で慌てふためくような軟弱者では無い。
が、怪我とかされると困るんで帰ってもらっていいですかね?後、なんでカメラ構えてんの?
「ミズアーリ。あなたは安全な場所にいて下さると助かるのですが........」
「それはお互い様では無いのですか?日本帝国にはミスターグレイ、貴方が必要でしょう?」
「........それと、なぜカメラを?」
「それはもちろん、配信のネタになるからです。あ、まずい部分はちゃんとモザイクをかけれますから、大丈夫ですよ。私の能力はそこら辺の融通が効くのです」
「大統領閣下。お願いですから下がってください。まだこの国には貴方が必要です」
「嫌ですよ。私だってこの
アーリの護衛をしていたであろう美人な人がアーリ。下がらせようとするも、当の本人は聞く耳を持たない。
多分、彼女の腹の中では自分の人気取りのことを考えているんだろうな。
アーリは元配信者。そして、彼女はその中でも凄まじい人気を誇っている。
ネタへの嗅覚は一級品だ。そして、そのネタを使って好感度を上げるのも。
「ボス!!」
「レイズ、仕事の時間だ。手早く終わらせて議会に戻るぞ。血と硝煙の臭いを嗅ぐよりかは、あと退屈な話を聞いていた方がマシだ」
「了解ですが、武器がありません。俺は皆さんと違って弱いんで、あまり役に立てないっすよ」
「うちの頭のイカれた連中と比べんな。お前も普通に強いよ」
俺はそう言いながら、ナーちゃんによって影に隠された愛銃を取り出す。
そして、予備として使っている神様からの贈り物戻り出すと、レイズに投げ渡した。
「そいつを使え。少しは使えるだろ」
「敵は殲滅いたしますか?」
「当たり前だ。1人2人残してあとはぶっ殺せ。配信されているらしいし、できる限り綺麗な言葉遣いだけは心得ろよ」
「え、
「ダメに決まってんだろ。逆になんでいいと思ったんだよ」
馬鹿かな?さすがにファックはダメでしょ。日本人の俺でもわかるよ。
そう思いながら歩いていくと、警備服を着た奴らが曲がり角から出てくる。
随分と慌てた様子だ。
「た、大変です大統領!!
「チッ、テロリストが........貴方達はほかの警備員と共に来賓の保護を。自由の国とは言えど、度が過ぎた自由は許されておりませんよ」
ここでようやくアーリも相手が何者なのかを察する。
やっぱりテロリストは嫌われてんね。俺も未だにテロリスト扱いされるから分かるが、本当にテロリストって嫌われている。
勘弁してくれよ。俺は好きでやった訳じゃないってのに。
「了解いたしました」
あと、お前ら嘘が下手すぎだ。
不自然に目が泳ぎすぎてんぞ。
「雑だな」
パン!!
弾けた音が廊下に鳴り響く。
警備が懐から出した一丁の拳銃。それは、引き金を引かれ、隣にいたもう一人の警備を撃ち抜いた。
隣のヤツは普通だったのか?
否。
両方ともテロリストである。
こういう時、ワイヤーは楽で助かる。使い慣れたこの能力の中でも最も具現化した回数が多いであろうコイツは、俺のメインウェポンなのだ。
........ただのワイヤーがメインウェポン。なんだか悲しくなってきたな。
「なっ........!!」
「嘘が下手なんだよ
パンパン!!
俺はそう言いながら、引き金を引き、警備の振りをしたテロリストの頭を躊躇無く弾く。
不意のワイヤーで手を封じられたテロリストは、反撃することも出来ずにあっさりと死体となった。
「な、何が........」
「どうやら連中はかなり下準備をしてきたらしい。前日から煮込んだカレーみたいに、こっちを美味しく調理できるようにな。警備員に紛れるとは、爆破するだけがテロじゃないってか」
全く勘弁して欲しいものだ。敵か味方か区別をつけながら殺し合うのは慣れてないというのに。
あ、でもこう言うのに強い奴がいるな。情報という面で彼女に勝てるやつはいない。
「レミヤ。おばちゃんに連絡を取れ。お得意様が死ぬぞって言えばわかるだろ」
「既に情報を貰っておりますので、始末はお任せ下さい。アーサー、今日のあなたは
「わかってるよ。とは言っても、グレイにそれが必要だとは思えないけどね」
いや、必要だよ英雄王。俺、ただの人間だからね?
助けて英雄王!!
【
この世界のテロ組織のひとつ。グレイがおお暴れしているため最近世間に忘れられがちな可哀想な奴ら。目的はその名の通り世界の再構築。
かなり優秀な人材が集まっており、普通に政府と繋がりもある。
今更ながら思うが、警備兵にテロリストが混ざってるってやばくね?
警備を主導したやつの首は間違いなく飛んだな。というか、どうやってテロリスト共もこの中に入り込めたんだよ。
警備がザルなのか、それともテロリスト共が一枚上手だったのか。
この世界には催眠系の能力も存在しているし、テロ対策は前の世界よりも大変なんだろうな。
そんなことを思いつつ、俺はこちらにやってくるテロリスト共の頭をぶち抜く。
おばちゃんから送られてきた情報と、レミヤの情報力があれば内部に潜入した奴らをあぶりだすのは簡単だ。
つーか、おばちゃんこの襲撃の事知ってただろ。教えてやれよ。世界中の重鎮が集まってんだぞ。
「僕の出番はなさそうだね」
「なんで護衛よりも護衛される側の方が戦ってんだよ。お前も仕事をしろアーサー。いいのか?今この瞬間は中継されてるんだぞ?お飾りの英雄王だってバレるぞ」
「そうは言っても、僕が仕事を始める前に大抵は終わっちゃってるからなぁ」
俺がシューティングゲームをしていることを楽しそうに眺めるアーサー。
お前、一応俺の護衛だよな?なんで俺より働いてないんだ。
仕事をしろ仕事を。俺は暇じゃねぇんだぞ。
目につく奴らから片っ端に始末をし続け、やがて爆破を引き起こした場所へとやってくる。
するとそこには滅茶苦茶大量のテロリスト達が、何やら準備をしていた。
なんだあれ?すっごいロマン砲みたいに見えるんだが。
「魔力超大砲........!!まずいっすよボス。あんなんぶちかまされた日には、全世界の国のトップの首がすげ変わりますよ」
「むしろ変わった方がいいんじゃね?と思うが、一応仕事相手も居るしな。死なれた方が困るか。で、あれは何?」
「魔力を集めてぶっ飛ばすだけの兵器なんですが、めちゃくちゃ強いんですよ........あれ?でもあの兵器が開発されたのってMEX(メキシコ)で、しかも、その計画は途中で破棄されたはずじゃ........」
あっ(察し)。
ダメだよMEX(メキシコ)君。君、どんだけ馬鹿をやらかしているのさ。
どうやらMEXの中にあの兵器を提供した馬鹿がいるらしい。自分達の立場が悪くなると思わなかったのか?
取り敢えずあれわ無力化して、確固たる証拠を........
そう思い、俺が能力を使用しようとした瞬間、フッと隣にいたはずのアーサーの姿が消える。
そして、次の瞬間。その場にいたテロリスト共はほぼ全て壊滅した。
........は?
........は???
その間、わずか一秒未満。
これが人類最強だと言わんばかりに力を見せつけたアーサーは、自分の背景に血を撒き散らせながらのんびりと歩いて帰ってきた。
「二人、主導者らしい人は気絶させたよ」
「アーサー、お前強いんだな」
「一応人類の守護者にして英雄王だなんて呼ばれてるからね。多少は強いよ。もちろん、グレイ程じゃないけどさ」
「ふざけんな。俺はただの人間だぞ。お前と一緒に───」
ドゴォン!!
アーサーって強ぇと思っていると、今度は何やら大砲を撃ったような........大砲を撃ったような?!
ヤバっ、証拠を残すためにアーサーが大砲を破壊しなかったのが仇となったか。
残りコンマ数秒もあれば、この無駄に金のかかったビルが吹っ飛ぶ。
「ピギ─────」
「ピギェェェェェェェェェェェ!!」
俺がピギーに助けを求めるよりも早く、ピギーが鳴いた。
その場に居た、否、その街にいたもの達は誰もが死の恐怖に支配され、誰もが膝まづいて頭を垂れる。
唯一、アーサーとその周りにいた仲間たちは、聖剣の加護によって助けられた。
ナイスだアーサー。その聖剣ちゃん、やっぱり俺にくれよ。
大砲の放った砲弾は魔力によるエネルギー。つまり、ピギーにとってはそこら辺のアリよりも弱い存在である。
結果、砲撃が当たることはなく、そして全ての窓ガラスが弾け飛びながらもビルは無事であった。
「........ボス。鳴くなら言ってください」
「し、死にかけましたよ........」
「俺に言うな。今のはしょうがないだろ。あー、アーリ大統領?ご無事ですか?」
「こ、これが世界最強........」
うん大丈夫そう。
こうして、テロリストは英雄王によって始末され、最後っ屁も規格外に破壊された。
なお。配信を見ていた視聴者達からは大好評だったらしく、また、レイズの声が配信に入ってしまいまたしてもMEX(メキシコ)への憎悪が強くなるのだが、それはまた別の話だ。
後書き。
またしてもやらかすメキシコ君。グレイ君に絡んだがばかりにクッソ不利になる。
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