古の竜
それだ‼︎
知らない間に救世主となり、オールハイルグレイとか言う馬鹿げた言葉を作られてしまったが、悲しい事に戦争は続くしかない。
そして、俺をトップにしやがった腐れファッキン共にもとても悲しいが、利用価値があるため情報提供だけはしてやらないといけない。
レミヤからいくつかの情報を送って貰い、後は流れに身を任せるしかないのだ。
この世界に来て九ヶ月。俺はこの世界での生き方を知っている。
こういうことになった場合は、もう諦めて全てを受けいれ、そして流れに身を任せるしかないことを。
上手く行けばDEU(ドイツ)を解放できるし、俺が組織のトップとなったからそれなりの繋がりもできるはず。
もしかしたら、日本の属国にまでに出来るかもしれない。
ネガティブに考えすぎるのもダメだ。今回に限って言えば、俺の敵が触れた訳では無い。
むしろ、味方が増えたと言うべきなのでグチグチ文句を言い続けるのはやめておこう。
そんな、風に自分を無理やり納得させながらも、行軍は続く。
「んふふ、アリカちゃんは可愛いねぇ。あーいい匂いもする」
「アハハ。リーズヘルトお姉ちゃんこそ。いい匂いがするよ。とても落ち着くいい匂いだ。それに、抱きしめる手も優しい。でも、もう少し強くして欲しいな」
「はいはい。アリカちゃんは甘えん坊だねぇ」
車の中でイチャイチャしているアリカとリィズ。
この二人は元からかなり仲が良く、大体の時間を一緒にいる。
アリカはリィズの事を本当の姉のように思っているし、リィズはアリカの事を本当の妹のように思っているのだ。
これはキマシタワーですわ。
いいぞもっとやれ。
「ボスぅ........目の前で好きな子が寝盗られている気分です。今なら血の涙が出そうです!!」
「ミルラ、諦めろ。お前のその性癖を除いても、お前に勝ち目はないぞ」
「なんでですか!!」
「お前、指が溶けるような毒物の実験体になれるのか?毒を食ってピンピンしてられるのか?アリカは確かにリィズの事が大好きだが、その中には間違いなく実験台としての好きも入ってるぞ」
「........私の命、アリカちゃんのためなら惜しくありません」
「いや、護衛が減るのは普通に困るからやめて?命は一つ、大切にしろよ。お前、アレだからな。勝手に死んだら両親に性癖とか全部バラすからな」
「本っ当に勘弁してくださいボス。死んだ後に死体蹴りをするだなんて鬼なんですか?この悪魔!!人でなし!!」
イチャイチャするアリカとリィズの傍らで、血の涙を流すミルラ。
寝盗られた気分て、そもそもお前はアリカの女でもないだろ。
寝とるもくそもねぇよ馬鹿。
ただでさえ俺は救世主やらオールハイルグレイやらで頭が痛いというのに、こんな馬鹿げたことで俺を疲れさせないでくれ。頼むから。
「と言うか、俺がハグしてやってた時は何も言ってこなかったじゃないか」
「ボスはいいんです。だって性別違いますし。女の子が男に惚れるのは当たり前じゃないですか」
「........?ゴメン何を言ってるのか理解できないかも。女同士だったらダメなの?」
「ダメです。私の心が耐えられません」
なるほど分からん。
組織の中では割とまともな部類だと思われていたこいつも、やはり頭のネジが飛んでやがる。
ジルハードとレイズぐらいだぞ。ちゃんと頭がまともって言えるの。
元ギャングボスのおっさんと上司を弾いた元軍人が、この組織の中で1番まともってどうなってんだよ。
俺は割とガチ泣きしそうなミルラに腕を掴まれる。
このカオスな空間から逃げ出したい。誰か助けて。
「ローズ、俺は疲れた。助けて」
「無茶言わないで欲しいわん。女の子の恋心は複雑なのよん?」
「お前は生物学上男だろうが。それはそれとして、このままだとミルラにミルクを与えてよしよししなきゃならん。俺はこんなでかいベイビーを持った覚えは無い」
「........そうかしらねん?でも言うじゃない。不憫は可愛いって。今のミルラちゃん、とっても可愛いわよ?」
まぁ、元々かなり見た目はいい。見た目は。
頭の中が残念すぎて残念美人という言葉がこれほどにまで似合うやつもいないが、見た目はいいのだ。
そして、不憫な子は可愛い。
確かに今のミルラは可愛いよ?それ以上に頭の中身がヤバすぎでちょっと引くが。
一回親父さん辺りに殴られた方がいいと思うんだ。親はいつまでたっても親だからな。今から教育しても遅くはない。
おたくの娘さん、ダークヒーローに憧れて家でした挙句、今じゃ11歳の女の子にガチ恋するペドレズですよ。
どんな教育をしてるんですか。
「ちなみに、ひとついい方法があるわよん?」
「何?」
「リーズヘルトちゃんも愛しちゃえばいいのよん。そうしたら、愛する2人がただイチャイチャしているだけ。むしろ微笑ましく思えるわん」
「OK。お前に聞いた俺が馬鹿だった。地獄の中にさらなる地獄を作ろうとするな。頼むから」
「それだァ!!」
真面目に聞こうとした俺が馬鹿だった。
そう思った矢先、泣きそうな顔をしていたミルラが復活する。
........おい、こいつまさか........
「私、別にリーズヘルトさんが嫌いな訳でもないですし、むしろ好きな部類に入ってますしもういっその事愛しましょう!!そしたら、お得じゃないですか!!」
「おい、ローズ。余計なことを言ってくれたな」
「私のせいじゃないわよん。元々そういう素質があっただけよん。それに、ずっと泣かれるよりはいいじゃない」
「地獄の業火に焼かれるよりは地上の炎に焼かれた方がマシみたいな考え方をするんじゃねぇ。クソをクソで上書きするなよ。どうすんのこれ」
ミルラは1度暴走を始めると止まらない。
あぁ、初期のミルラを返して。あのちょっと俺達のノリに着いていけなかった頃の可愛いミルラちゃんを返して。
「リーズヘルトさん。愛してます!!」
「ん?私もミルラのことは好きだよ。嫌いになる要素がないし」
「それじゃ、抱きついてもいいですか?」
「私はいいよー」
「私もいいぞ。変なところを触ったら、グレイお兄ちゃんに言いつけるからな」
「大丈夫です!!そこら辺は弁えてますので!!」
で、リィズ。お前もそれでいいんかい。
あーもう好きにしてくれ。本人達が楽しいならそれでいいや。
本気で嫌がってるなら止めるけど。
「ふふっ、みんな楽しそうねん」
「はぁ........そうだな」
「レミヤちゃんは参加しないのかしらん?みんな仲良く遊んでるわよん?」
「あの、私もあの変態と同じにしないで貰えますか?ローズさん。私、アブノーマルでは無いので。それと、私の体はハグに適してません。全身機械なので、冷たくて硬いです」
「あー、確かにハグされた時滅茶苦茶硬かったな。つーか、ちょっと痛かった」
黙示録を攻略したあとのハグとか。
あとの時はギャン泣きされていたからそっちに気を取られていたが、よくよく思い出せばレミヤのハグは痛かったよ。
優しかったけど。
「そんな訳で、私は参加しませんよ」
「それは残念ねん」
「そういうローズさんは参加しないのですか?」
「私は生物学上男なのよん?相手が男ならまだしも、女の子相手にそんなことは出来ないわん。普通に嫌われそうだしねん」
「........急に常識的なことを言うなよ。お前、本物か?」
「やだ、失礼すぎて涙が出そう。私だってこの姿である時は色々と考えているのよん。女の心を持つからと言って、女の子である訳じゃないのよん」
すげー常識的なことを言ってやがる。
そういえば、ローズは見た目と癖がちょっと特殊なだけでそれ以外は割と常識人だったな。
あれ?もしかしなくとも、この組織男連中の方が常識的だな?
爺さんも本気で暴れなきゃ常識人だし、俺は言わずもがな。
ジルハードとレイズはこの組織屈指の常識を持っているし、ローズも見た目に目をつむれば常識的。
対して、ペドレズと実験バカと沸点激低。
リィズはまだしも、アリカとミルラは酷い。
そして、更に言えばレミヤもかなりやらかすしな。常識はあるし理解しているけどそれはそれみたいな所があるし。
「........もしかして、この組織って男連中の方がマトモだったりする?」
「........そうかもしれないですね。1人を除けば、割と常識的な方が多いですし」
「そうねん。1人を除けばねん」
「そうだな。1人を除けばな」
ローズは見た目がな。今はスーツ姿だけど、普段着は酷いし。
ローズもそれは自覚しているのだろう。
「........多分気づいてませんよね?」
「一番の非常識人よん?でも、本人は常識人だと思っている。悲しい世の中ねん」
「そこが可愛いと言いますか、面白いところですよね」
「そうねん。可愛いわん」
ボソボソとなにやら内緒話を始めるレミヤとローズ。
俺は影の中からナーちゃんを呼び出すと、両手で抱き上げて顔の目の前まで持ってきた。
一番常識的なのは、この子達かもしれない。
素直で優しく逞しく。
それでいながら遊んでくれるいい子たちだ。
「ナー?」
「ナーちゃんやスーちゃんが1番常識人かもな。人じゃないけど」
「ナー!!」
鼻と鼻をコツンと合わせると、ナーちゃんはとても嬉しそうにパタパタと手足を動かす。
そして、俺の手から降りると肩まで登ってきて頬擦りをした後ぺろぺろと頬を舐めてきた。
可愛い。
「あれ?そういえばスーちゃんは?」
「スーちゃんなら上で将棋してますよ。おじいさんと」
「マグネット仕様の将棋は揺れる場所でも出来て便利と言ってたわねん」
車の上で将棋をするなよ。
俺は爺さんはちょっとおかしいなと思いながら、ナーちゃんと遊ぶのであった。
後書き。
ミルラはオープン変態。優しい世界。
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