解放ゲリラ
なんか凄い人が集まってたな。
逃がしてあげたボックス君とシャーリーは随分と活発に動いていたようで、なんとレジスタンスの半数近くを集めたらしい。
どうやって集めたのかは知らないが、やれば出来るじゃん。
5000の軍ともなれば、それなりに戦えるだろう。
所詮は捨て駒でしかないが、補給路を一時的に封鎖するには十分な数である。
「抵抗軍は思っていたよりもフットワークが軽いらしいな。五千の軍だとよ」
「そりゃすげぇ。使い方次第では大きな打撃を与えられそうだな。もしかしたら勝てるかもしれないぜ?」
「正直、勝ったところでどうなんだって話もあるけどな。DEU(ドイツ)国民の多くはFR軍が介入したことによって治安が良くなったと喜ぶ人も多いんだぞ?」
「あぁ、その事ですが、どうやら大都市に限った話らしいですよ。辺境の街や周囲の村では略奪させるらしいです。おそらく、上巻の目が届いてないのでしょうね。私が調べた限りでは、強姦に強盗、更には殺人までなんでもありの無法地帯でしたよ」
レミヤはそう言うと、1つの映像を見せてくれる。
おそらく、監視カメラの映像だ。
逃げ回る子供の背中を鹿狩りのように撃ち抜き、ゴミを脇道に捨てるかのように蹴り飛ばす。
兵士達の顔までは見えないが、その動きからして楽しんでいる節があった。
戦争で倫理観のタガが外れたか。
人を殺しなれると、倫理や道徳なんてものがどれほど役に立たないかを実感する。
しかし、しかしだ。
そんな頭のイカれた連中でも、最低限守らなければならないラインというものが存在している。
グダニスクに生きる多くのゴミ達ですら守る、本当に最低限のライン。
小学生にもならない程に小さな子供は、悪いことをしない限りは殺さないという最終ラインがあるのだ。
え?お前も赤子をぶっ殺したことがあるだろって?
マルセイユテロは不可抗力だよ。未だになんでダンジョンをクリアした扱いになっているのかも分からないし、爆発したのかも分からない。
あくまでも自分の意思で殺す話だ。不可抗力の話を持ち込んだら、おれが世界最悪になってしまう。
で、グダニスクのジャンキーですら守るような最低限のラインを彼らは易々と乗り越えた。
彼らは最早人ではない。魔物にも劣る呼吸する生ゴミである。
「可愛そうに。これぞ戦争の被害者だな」
「引き起こした本人がよく言うぜ。しかし、可哀想なのは同意だ」
「おいジルハード。俺は直接的な原因は作ってないぞ。そもそも、CHがバルカン諸国に特殊部隊を送り込まなかったらこんな事にはならなかったんだからな」
「まぁ、それはそうだけどな........」
銃弾を詰めたのは俺かもしれんが、引き金を引いたのは結局のところ国だ。
尚、俺達もその引き金に乗っかっているので、人のことは全くいえなかったりする。
後、今思い出したけど普通にCHにいた人間を皆殺しにしてるから、俺らも同類だったわ。
自分の手でやってないから忘れてたけど、俺も呼吸する生ゴミだったわ。
ま、こんな狂った世界が悪いって事で。結局のところ、俺達もクズなことに変わりは無いし、反論はしません。
「レミヤ。この映像を全世界にばらまけ。今の世界情勢じゃあまり見向きされないだろうが、少なくともDEU(ドイツ)国民の感情を煽ることは出来るだろ。俺達のような未認証国家とは違い、正式な国家による虐殺だ。その意味は大きいぞ」
「畏まりました」
「私達も子供は腐るほど殺しているから、人の事が言えないのは悲しいな」
「ある意味どちらも戦争の被害者ということですよアリカちゃん。悲しい事に、5歳児でも銃を持って撃てますからね。敵である以上情けをかけるのは無駄ですよ。それよりもクソなのは、子供に爆弾を持たせて突っ込ませるような連中です。敵対組織として殺すならばまだしも、味方が子供を殺す姿は見るに耐えませんよ」
「実体験か?」
「えぇ。昔、ナイジェリアに仕事で言った時のお話です。VIPを殺す為に、現地の子供に爆薬を括り付けてやってきたんですよ。私達は当然、子供だからと言って発砲はしませんでした。それが間違いでしたけどね。同僚は3人死に、1人は二度と動かない生きた植物になりましたよ」
なるほど。俺達よりも、そっちの方がクズと言う名に相応しいのかもしれんな。
結局のところ、どっちもどっちだが。
「そう考えると、やはり私は運がいいな。あんなクソみたいな親な元で生まれたが、それでも幸運だった訳だ。少なくとも、爆薬を抱えて突撃するようなことはなかった」
「そんな世界が間違っているんだがな。悲しい事に、これが現実だ。俺達は、割り切って生きるしかないんだ。綺麗事を並べる奴らは、基本的に自分の手で人を殺したことがない。飢えたことがない。奴らにもこの戦場を味わって欲しいもんだね」
「全くだ。特に、人権団体の連中にはな」
俺はそう言うと、空を見上げる。
さて、抵抗軍はどこまでやれるのだろうか。ベトナム戦争の時みたいに、大金星を上げてくれてもええんやで?
【ベトナム戦争】
当時南北に分断されていたベトナムで社会主義陣営の北ベトナム(ベトナム民主共和国)と資本主義陣営の南ベトナム(ベトナム共和国)との間で勃発した戦争であり、冷戦中に起こったアメリカ合衆国とソビエト連邦の代理戦争とされる。経済力・物量の差から「象と蟻」の戦いと揶揄された。
勝利したのは北ベトナム。実質アメリカの敗北となり、ジャイアントキリングを果たしている。ベトナムは大国に対して馬鹿みたいに強く、当時世界最強であった元(モンゴル)にすら勝っている。
あれ?でもフランスには負けていたような.......つまりフランスは大国じゃないってコト?!
その日、彼らは運命の日を迎えていた。
総勢5000の抵抗軍は、FRが使っている中でも最も大きな補給路を攻撃しようとしていたのだ。
彼らの戦術は至って簡単。待ち伏せて、奇襲である。
「爆破ドローンを量産できたのは有難いな。流石は財閥様だぜ」
「ふん。この程度ならば簡単に用意できる。しかし、時代だな。この小さな機会ひとつで簡単に空爆できるようになるとは」
「ドローンに取り付けたカメラで安全に遠くから爆撃が可能になる。しかも、コストがアホみたいに安い。ミスターグレイの“空には気をつけろ”ってのは、これを示唆していたのかもしれんな」
時代は移り変わり、戦争のあり方も変わった。
多くの国が第二次世界大戦の影に囚われている中、抵抗軍は世界で初めてドローンを用いた爆撃機を作成したのである。
500年も経って今更?と思うかもしれないが、この世界は今まで魔物を相手に戦うことの方が多かった。
そのため、ドローンに爆弾を取り付けて無人機爆撃を行おうという思考が生まれなかったのである。
何故ならば、魔物には意味が無いから。
弱い魔物には意味があるかもしれないが、それなら銃を撃った方が、剣を振った方が早い。
そんな訳で、人同士の戦争において文明の進歩が遅かったのである。
僅か数千ゴールド程度で作れ、多少練習すれば誰にでも作れる爆撃機。
これは、世界の戦争の在り方を変えるものであった。
「とりあえず5000機作った。全員で操作して、でかい部分に突っ込ませる。そして、奴らが混乱している中で特攻し制圧。物資は奪って、道を封鎖。全部上手く行けば1番大きな補給路が潰れる。そのあとは、都市の奪還だ。補給路制圧は俺達の実績作り。成果があればそれだけ人が集まりやすい。ミスターグレイはそこまで考えてこの情報を渡してくれたんだろうな」
「流石はテロリストの天才だな。FRに打撃を与えつつ、それでいながら勢力の拡大を図るとは」
「そういう........お、来たぞ。最初は地雷で吹っ飛ばす。それで奴らの動きは止まるだろうか、あとは好きな場所にドローンを突っ込ませて爆破しろ。それだけで何人も死ぬはずだ」
物資を詰んだ車や装甲車がやってくる。
流石に装甲車を貫く威力は無いなとロットンは思いながらも、無線で指示を出して全員がドローンの操作を始めた。
技術の向上により、ドローンの操作もかなり楽となっている。
今では、1日もあれば素人でもそれなりに動かせるほどには、ドローンはお手軽な道具となっていた。
「........3、2、1。
ドゴォォォォォン!!
仕込んでいた地雷が起動し、前を走っていた装甲車が吹き飛ぶ。
態々危険な改造を施して、威力を底上げした地雷だ。
その威力は凄まじく、一撃で装甲車のタイヤを使い物にならなくさせる。
そして、前が止まれば後ろも止まる。
レジスタンス達は、今だと言わんばかりなドローンを操作すると次から次へと空から爆撃を開始した。
ドゴーンドゴーンドゴーン!!
爆撃機を使っている訳でもないのに、空から爆弾の雨が降る。
未知の攻撃にFR軍は混乱。偶然その場の指揮を取っていた1人の爆撃に成功し、さらに場は混乱を極める。
車を吹き飛ばし、中に乗っていた者に恐怖を与え、装甲車の上で休んでいた者は殺される。
そして、5000発の爆撃を終えたその直後、彼らは旗を掲げて銃を構えた。
「突撃ィィィィィィィ!!」
真っ白な旗の中に赤く光るgの文字。
日本帝国の国旗を模したその旗は、全てを赤く染めあげようと雪崩のごとく襲いかかる。
特に、Aランクハンター達の働きが凄まじく、装甲車の中で籠る兵士たちを装甲車事吹き飛ばしていた。
「........おいおい。こりゃ勝てるんじゃないか?」
「油断するなロットン。儂らは次の作戦に移るぞ。ある程度場を荒らした後、合図で撤退。その後、この山を崩すのだろう?」
「そうだな。土砂崩れを人為的に引き起こす。俺達も移動しよう。勝利のために、確実にやらなきゃな」
こうして、彼らは劇的な勝利を上げた。
被害百名以下で、補給路を完全に制圧してしまったのだ。
後の歴史に語られるDEU(ドイツ)の大勝利。そして、今後のDEUと日本帝国の関係を示す、世紀の一戦になるということをまだ彼らが知る由もない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます