金の成る木


 POL(ポーランド)がまたしても潰されてしまいそうであると言う事を聞いてから四日後。


 俺は九芒星エニアグラムの全員を連れて、POL(ポーランド)へやって来ていた。


 POLは金の成る木だ。今の日本帝国では決して欠かせない存在であり、数少ない外貨の獲得手段である。


 守ってやらなくては、俺達が痛い目を見ることになる。一応は借りがある訳だし、助けてやらなければならなかった。


 なんと言うか、第三次世界大戦が巻き起こってから俺達の立ち位置が傭兵に近いな。


 革命の手伝いをしたり、自分の国とは関係の無い国の戦争に参加したり。


 世界各国から命を狙われる傭兵。そう聞くと歴戦の猛者にも思えなくは無いが、あいにく俺はただの人間で頭を弾けば簡単に死ぬ。


 歴戦と言うほど時代は歩んでないし、ただただ運がいいだけの一般人だ。


「何気に、こうして客人としてこの国に来るのは初めてかもな。グダニスクに来た時は思いっきり密入国だったし」

「山越えしたのが懐かしいねぇ。軍の警備網から逃れながらこの国に来たっけ」

「まだ数ヶ月しか経ってないのに、ちょっとした懐かしさを感じちまうな。そんな自分が嫌になるぜ。グダニスクなんて糞の掃き溜めにいたはずなのによ」

「思えば、全てはあそこから始まったな。フラフラと旅をしていた私が、自分の居場所を見つけたのはここだったか」

「私達が集まった場所ですよ。思い入れの一つや二つはありますって」

「その思い入れ。大体血に染ってますけどね」

「それを言ったらおしまいよんミルラちゃん。でも、確かに私達にとって特別な国であるのは間違いないわねん」

「ここでボスと出会ったんっすよね。あれは人生の中で1番の転換点でしたよ。未だにどうやってあのクソッタレたポーカーで負けたのか覚えてますもん」

「フォッフォッフォ。ここでの日々は悪くなかったのぉ」


 POLは俺達九芒星が集まった場所であり、だれもが少なからずこのクソみたいな国に思い出がある。


 俺達の原点にして、全てが動き始めた場所だ。


 そんなに時間は経っていないと言うとに、思い出話に浸りたくなる気持ちも分からなくはない。


 実は、この世界において最も戦犯なのはこの国なんじゃね?俺たちのような存在を無視した結果がこれだろ。


 俺達からすれば、有難いことこの上ないが。


「初めまして。ミスターグレイ。お待ちしておりましたよ」

「初めましてミスタードナルド。お出迎え、感謝いたします」


 ワルシャワ空港のプライベートエリアにて、思い出に浸る俺達を出迎えてくれたのはPOLの現首相“ドナルド・トスク”。


 ........うん。まぁ、ね?USAの前大統領もそうだったのだが、なんで2023年に大統領になったドナルド・トゥスクにこんなにも名前が似ていてかおも似ているんだ。


 平行世界パラレルワールドの摩訶不思議という事で毎回深くは考えないようにしているが、その摩訶不思議な現象を目の当たりにするとどうしても疑問に思ってしまう。


 今は2500年代ですよ?なんで500年近くも前の首相とこんなにも瓜二つなんだ。


 実はお前も転移者じゃないだろうな?と思いつつも、俺は彼が差し出した手を握る。


 本人の前では言わないが、この人は俺達の命の恩人とも言える人だからな。


 世界中が俺を歴史的テロリストとして扱う中、俺に不干渉を貫いたある意味素晴らしい国家の首相なのである。


「アフリカ旅行の準備が無駄になりましたよ。まさか、今一番ホットな国の首相自らがこの国を助けに来てくださるとは。昔の自分を褒めてやりたいですよ。テロリストが自分の立場と命を救ってくれるなどとは、当時は思いもしなかったでしょうから」


 軽い冗談を交えた先制パンチ。


 俺が誰だか知った上で、助けてもらう立場で言うじゃないか。


 下手に畏まられるよりは、俺はこっちの方が好きだからいいけどさ。


「ハッハッハ。高飛びの準備でもしていたのですか?相変わらずこの国は腐った果実が並んでいるらしい。日本帝国にとって金の成る木じゃなかったら、見向きもしなかったでしょうね」

「金の成る木には感謝しかないですよ。これからも、金の果実は大切にしないといせませんね」

「「アッハッハッハ!!」」


 いいね。個人的にはかなり気に入るタイプの人間だ。


 こう言う洒落た冗談が言えるやつは嫌いじゃない。彼とは、仲良くやっていけそうだ。


「それで、FR(フランス)とSHE(スイス)の動きはどうなっているんですか?我々が来た時には既に取り返しのつかないことになっている........なんてことにはなっていないとは思いますが」

「相当な数の軍を集めているようですね。ベルリンまでマラソンをしたと言うのに、元気な奴らですよ。トライアスロンをやっているんじゃないか思うほどにね。だが、競技とは違って多少の休息は必要らしいですよ。今は占領地域の安定化や補給路の再構築に忙しそうです」

「なるほど。そこを叩いたりは?」

「ハッハッハ!!我々は野蛮人では無いのでね。正式に宣戦布告されるまでは大人しくするのですよ」


 あぁ、つまり、先に殴るよりも逃げる準備の方が大切だというわけか。


 清々しすぎていっそ拍手を送ってやりたいぐらいだ。


 この国の政治家はすべからく腐っており、さらに言えば上の地位に立つ者の大半は腐りきっているとは聞いたがここまでとは。


 グダニスクと言うイカれた街しか知らなかったからそれほど気にはらなかったが、こうして実際に話すとクズっぷりがよく分かる。


 政治家ってのはみんなこんな感じなのか?いや、USAの元大統領はまだマシだったか。あっちの方が話していて居心地は悪かったが。


 ただの一般高校生があんなガチガチの大統領と話している時点でおかしいのだ。このぐらいクズで気を使わない相手の方が気は楽である。


「ホテルを手配してある。翌日は参謀本部に案内しよう。安心したまえ。この国は、愛国心などないからね。全部ナチス・ドイツに尊厳をぶんどられた」

「第二次世界大戦ではケーキのようにナチスとソ連に真っ二つにされ、今は負け犬のFRと中立を保っていたSHE(スイス)に食われそうになっている。この国も大変だな。毎回ババを引いているわけだ」

「そのババが、切り札ジョーカーになる事を祈っているよ。アフリカ旅行のキャンセル代金は高いのだ。チケットを買い直したくは無いな」


 こうして、俺達はPOLの地へと降り立った。


 何気に、真面目な戦争に参加するのはこれが初めてかもしれんと思いながら。




【ドナルド・トゥスク】

 ポーランドの政治家。首相(第三共和政第18代、元第14代)。所属する政党は市民プラットフォーム(PO)。欧州連合の元首に相当する欧州理事会議長を務めた。

 国民の支持率が54%と2位タイであり、国民から最も支持されている政治家の1人。

 割と有能ではあるが、ビジネス社会を優先して低所得者の生活を脅かすのではないかと懸念されている。後、賭け事に対して批判的であり、国内の賭博の多くを非合法にしようとしている。特にオンラインカジノについてはマネーロンダリングや個人情報の悪用に使われるケースが多いとして、完全禁止の法律化を目指していた。

 もちろん、カジノ業界とは死ぬほど仲が悪い。




 手配されたホテルは、五つ星ホテルであった。


 何気に人生で初めての五つ星ホテルであり、俺はそのホテルのサービスの良さに驚く。


 何このルームサービスって。ここで飯頼んだら運んできてくれんの?すげー。


 え?マッサージ無料?すげー。


 と、まぁ、田舎者全開である。


 よほど金持ちじゃなければ国内の旅行で五つ星ホテルなんて泊まらないし、家によってはそもそも旅行なんて行かないだろう。


 行ったとしても近場になる。


 ちなみに、俺は旅行に行ったことは何度かあるが基本的にホテルでゲームをして遊ぶませたガキだった。


 旅行先で祭りとかやってても大抵出禁になるからな。金魚すくいでその店の金魚を全部取ろうとして、途中で止められたり、射的で絶対に落ちないはずのゲーム機を落としたりしてたらクッソ睨まれたからね。


 当時はまだまだ可愛い子供だったから、怖い大人に睨まれたのがちょっとしたトラウマになってそれ以降祭りには行った覚えがない。


 後、単純に高ぇ。ポテト200円であんなクソカスみたいなもんを渡してくんな。マック行くわ。


 親が買ってくれるとは言えど、別にウチは裕福な家庭ではない。それに、子供はやっぱりゲームの方が楽しいものである。


 今ではゲーム感覚で革命したり、人の頭を撃ち抜かなきゃならんと言うのが悲しいなぁ。


「はぁぁぁぁぁぁぁ?!おい、てめぇふざけんじゃねぇぞ!!」

「アッハッハッハ!!独占、崩れたりぃ!!」


 で、そんな昔の気質というのは今でも変わることは無い。


 俺たちは五つ星ホテルに泊まっていると言うのに、その施設を満喫することなくみんなで1つの部屋に集まってゲームをしていた。


 やっているのはみんな大好き“いただきストリート”。


 通称、いたストと呼ばれるゲームである。


 まぁ、簡単に言えば難易度の高いすごろくゲームだ。昔は株のことがよく分かってなくて、親にボロ負けしまくったのを覚えている。


「爺さん、良かったのか?俺がハブられても良かったんだぞ?」


 このゲームはドラクエとマリオが出てくるゲームであり、今やっているのはDS版だ。


 懐かしいなぁ。Sランクキャラに理不尽にタコられたのが。


 四人対戦だから、1人溢れると思ったのだが、おじいちゃんは将棋の方がお好みらしい。


「フォッフォッフォ。主をハブってみろ。このホテルが事故物件になるわい。それに、儂は新しい事が覚えられんのでな........こうしてナーやスーと将棋を打つ方が性に合うのじゃよ」

「変わって欲しかったらいつでも言えよ。ぶっちゃけ、俺が強すぎて勝負にならん」

「いや、なんで運要素がそこそこ強いスゴロクゲーでも馬鹿みたいに強いんだよ。お陰でこっちは破産寸前だぞ!!誰かの店を踏んだら絶対死ぬ!!」

「........うわ、お前5倍買いで独占崩されたからって、無理して5倍買いして相手に嫌がらせしに行くなよ.........馬鹿なのか?」

「うるせぇ!!俺はやられたらやり返す主義なんだよ!!」

「どう見てもリターンが見合ってないだろ。ジルハード、お前はこういう系のゲームで熱くなりすぎた」


 こうして、ジルハードは真っ先に破産した。


 お前、馬鹿だよジルハード。





 後書き。

 いたスト、Wiiでやってたなぁ。投資しまくったマスに止まって、お金バーンが気持ちよかった。

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