増える敵
イカれた報酬
ヨハネの黙示録を模したダンジョン、黙示録のダンジョンはなんやかんやあったものの普通にクリア出来てしまった。
なんか能力があまりにも噛み合いすぎたのが悪い。俺の能力が初めてまたもな活躍を見せてくれた気がする。
主に、食事と飲み物の確保で。
人はものを食べなければ生きていけない。水を飲まなければ三日で死ぬ。
そんな激弱で軟弱者の人間にとって、食料を無限に出せて飲み物も出せるのはとても素晴らしいことであるのは間違い無い。
小学生時代にやったアホな事が、今になって自分を救ってくれたのだ。
ありがとう小学生時代の俺よ。
ガリ勉馬鹿じゃなくて本当に良かった。フランスパンとジャガイモで野球を始めるような馬鹿で本当に良かった。
メントスコーラとかやってて良かった。お陰で俺は、この世界で生きていられるよ。
「おぉ。戻ってきたぞ地球よ。俺は生きている!!」
「まさか本当に耐久レースをする羽目になるとはね。流石に疲れたよ」
「精神的に疲れたな。1人で攻略とかしていたら、かなりメンタルがやられていたかもしれん」
「赤騎士も消えたみたいだね。これで五大ダンジョン“黙示録”はクリアだよ」
久々に帰ってきた地球は、あいも変わらず平穏そうであった。
天使のラッパが鳴り響いた様子もなければ、俺達のケツをファックしようとしていた騎士の姿もない。
そして、緑色に光るダンジョンのゲートは俺達が出ていくと同時に消え去った。
これで、少しはこの場所も安全になっただろう。もしかしたら、その内またこの場所に人々が集まり街が国が出来るかもしれない。
「ダンジョンに入って2ヶ月も経過するとは、想像以上に時間を食われたな。お陰で随分とゆっくり出来たけど大変だったよ」
「そうだね。2ヶ月も過ぎたから、この世界がどうなっているのか分からないや。多分みんな生きて入ると思うけど、世界はどうなったんだろう?もう戦争は終わっちゃったのかな?」
二ヶ月もダンジョンに幽閉されていたからちょっと忘れていたが、今世界は第三次世界大戦の真っ只中。
しかも、我が祖国日本帝国はほぼ全ての国を敵に回しており、下手な事をすると滅ぶ可能性だって有り得る。
そんな状況下で俺達は、このクソッタレのダンジョンに吹っ飛ばされたのだ。
やってらんないね。俺達を飛ばしてくれたファック野郎にお礼参りがしてやりたいよ。
そんなことを思いつつ、俺はその場に座り込むとゴロンと寝転がる。
そして、首に下げられた一つのペンダントを手に取った。
そのペンダントには、どこか見たことがあるラッパが小さくなったものが付いている。
「まさか、こんなのがダンジョンをクリアした報酬とは思わなかったぞ。どうすんねんこれ。地球では絶対に使えないぞ」
「せめてそのラッパが何番目のラッパなのか分かれば使い道もあるんだけどね........第四のラッパとかだったら、地球が滅んじゃうよ」
「ピギーも流石に何番目かは分からないと言っていたし、ちょっと趣味の悪い装飾品として使うぐらいしかないな。手放したら手放したで悪用されそうだし、肌身離さず持っておくしかないよな」
第七のラッパによる試練を終えた後、それは姿を現した。
これでクリアしたのかな?と思っていると、突如目の前に見覚えのあるラッパ達がずらりと並んだのだ。
まさか、最後は全部が鳴り響いて世界が終わるのかと思ったのだが、どうもその様子が違う。
試しにひとつ触ってみると、そのラッパは小さくなってペンダントの形となって俺の首にぶら下げられ、残った6つのラッパはどこかへと消えてしまった。
つまり、これがダンジョンをクリアした報酬なのだろう。
でも、正直要らん。
どの笛も地球じゃ吹けねぇよ。どの効果が出たとしても、この世界が終わるぞコノヤロー。
あのダンジョンは、最後の最後に核兵器よりもやばい物を残していったのだ。
絶対吹いたらやばい。間違いなく世界が終わってしまう。
こんなもの今すぐにでも捨てたいが、誰かが見つけだして興味本位に吹かれても困るのですてられない。
そんな訳で、このクソみたいなラッパは俺の所有物となってしまった訳である。
ピギーに引き続き、次は審判のラッパかよ。
俺の周りに集まる物が、大抵世界を終わらせるものばかりなんだけど。
まぁ、もし使いどころがあるとすれば、ダンジョンの中ぐらいだろう。あれは一応別世界判定になるから、地球への被害は無いはずだ。
「それで、どうやって帰ろうか。さすがに歩いて帰るには時間が掛かりすぎるよ」
「あー........明日考えよう明日。今日はもう疲れた。ちょっとゆっくり寝たい。フカフカなベッドは使えないけど、ここなら今は安全だしな」
「それもそうだね。緊張感はあまり無かったけど、やっぱり心のどこかで不安は感じてたんだし少しゆっくりしてから考えよっか」
リィズはそう言うと、俺の隣に座ってゴロンと寝転がる。
あー、空が青くて綺麗だ。雲ひとつない快晴。これぞ、この世界の青い空。
なんと素晴らしきかな地球よ。これぞ、我らが星の青い姿だ。
でも、ダンジョンは消してくれ。こんなにも疲れるダンジョンはもう懲り懲りだ。
「少し........寝るか」
「そうだね。少し寝よっか。周囲の警戒はやっててあげるから、のんびり眠るといいよグレイちゃん」
「助かるよリィズ」
俺はそう言うと、一旦全てのことを忘れて目を閉じるのであった。
あぁ、ふかふかのベッドに寝転がって心ゆくまで寝たいよ。あのダンジョン、地面が硬かったから、寝ていると体が痛いんだよな。今もそうだけど。
【ユーフラテス川】
西アジア最長の川。ティグリス川と共にメソポタミア(川の間の土地、の意)を形作っている。源流は東トルコにあり、シリアとイラクを通過した後ティグリス川と合流し、シャットゥルアラブ川としてペルシア湾に注ぐ。
メソポタミア文明の発展に貢献した川でもあり、ナイル川、インダス川、黄河(または長江)に並ぶ四大文明を支えた川のひとつ。
グレイとリーズヘルトが五大ダンジョンの一つ、黙示録のダンジョンの攻略を終えた頃。
自分達のボスが消えたことに焦りを感じていた
グレイが消えてから三日。
彼がどこへ行ってしまったのか、検討もつかないので片っ端から探し続けるしかない。
“三日?”と思った者もいるだろう。それはダンジョンと地球での流れる時間が違うからだ。
グレイ達は確かに二ヶ月間あのダンジョンの中ですごしたが、地球では僅か三日間の出来事でしかないのである。
そのため、戦争も終わってなければ、むしろ苛烈さを増している状況なのだ。
グレイは家に帰っても、枕を高くして寝る事は無理だろう。
「どこに行ってしまったんですか........全然見つかりませんよ」
『今全力で探しているが、全く見当たらないね。というか、全世界を探す羽目になるから三日そこらで見つかるハズもないさね。気長に探さないとね』
「分かっていますが、焦ってしまうのが人と言うものですよ。後、
『あぁ........それは心配だね。大抵こういう時は、デカイ事を起こすからね』
グレイを探し始めて三日。
組織の中では最も情報に長けたレミヤは、木偶情報屋と連絡を取りながら世界中の監視データを調べ続ける。
グレイが消えてから即連絡を取り、全ての業務をこちらに回してもらっているが、いくら優れた情報屋とは言えど、急に消えた人間の行方を探るのは難しい。
未だ、グレイの影を見つけることすら出来ずに悶々とした時間を過ごす事になっていた。
「連絡が来ないということは、連絡が取れない場所に居るはずなんですけどね........連絡が取れない場所なんて腐るほどありますよ」
『全くだ。むしろ、今どきじゃ連絡が取れない場所の方が多いぐらいさ。ダンジョンの中にはいられたら、何もかもが見えやしない。人を殺すにはいい時代になったもんだね。そういえば、戦争の方はどうなったのさ。私はUSAへの対応で手一杯なんだが........』
「ほぼ全て制圧が終わりましたよ。生き残った人もいるでしょうが、主要都市及び中小都市も全て壊滅させました。歳の割に元気が良すぎて困りますよ。まだボケた老人を介護する方が楽だと思うほどに」
『アッハッハッハッハッ!!CHの連中も運がないねぇ。あのイカれたじいさん相手じゃ、手も足も出ないか。バルカンの連中まで叩き潰してんだから、怖いもの知らずがすぎるよ。それでいながら、本国は無傷。とんでもない国が誕生しちまったね』
ほぼ壊滅していたCHだったが、確実に息の根を止めるために上泉吾郎が先頭となってありとあらゆる都市を無差別に攻撃した結果、CHは完全に崩壊した。
これにより、東アジアは日本が実質的に権力を握るようになる。
東南アジア諸国はCHが消えたことにより借金を踏み倒し、今はその金を他の事に回せると喜んでいるはずだ。
上手く行けば、東南アジアそのものを丸め込めるかもしれない。
一応その基盤は作ったものの、肝心のボスが居なければ始まらない。
彼が望むであろう事はやってはいるが、結局のところグレイがいなければ何も進まないのだ。
そんなグレイを相殺し続ける中、突如部屋に勢いよく入ってくる影がひとつ。
誰かと振り返れば、そこには息を荒げたアリカがいた。
「アリカ?どうしたのですか?」
「グレイお兄ちゃんの居場所が........はぁはぁ。が、わかったぞ。場所はヒマラヤ山脈だ」
「........何故?」
「これを見ろ」
そう言ってアリカが見せてきたのは1つの記事。
そこには“黙示録のダンジョン消滅。クリア者はこの2人か?”という題名の記事が乗っている。
魔力の乱れによって衛星写真がかなり乱れているが、レミヤが、アリカ達が見間違えるはずもない。
これは、グレイとリーズヘルトの二人だ。
レミヤは一瞬何を言っているのか分からず固まり、そしてもう一度記事を読み直してその内容を理解すると天を仰ぎ頭を抱えた。
「........あの人、一体何をやっているんですか?」
「私に聞くな。私も知らん。でも、これで迎えに行けるな!!」
可愛らしい満面の笑みを浮かべるアリカ。
アリカにとって、グレイとリーズヘルトは仲間の中でもかなり特別な存在だ。
そんな2人が無事だと知って、心の底から安心したのだろう。
当の本人たちは、自分たちが知らぬ間に五大ダンジョンの一つを攻略してしまっているが。
レミヤは色々と言いたい気持ちを抑えながら、とりあえず迎えの準備を始めるのであった。
後書き。
グレイ君、ヤベー報酬を手に入れる。
それはそれとして、200話目です。こんな頭の悪い趣味100%の小説がなんと200話も続いています。読んでくれてありがとう。コメントが無かったらメンタル折れてるかもしれん。
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