これはゲームこれはゲーム
聖剣にも意思が宿ると知ってから三日後。ようやくアーサーとフェルは国へ帰った。
本国に連絡を入れたら専用の飛行機がやってくるとか、どこかのお偉いさんかよ。
いや、実際偉いんだけどさ。
人類の英雄という肩書きは凄まじく、その肩書きだけでGBR(イギリス)はかなり優位な立ち位置を取れるんだから。
その英雄、狼相手に発情して腰を振る変態野郎ですよ。
絶対バレると思うんだよな。アーサーの性癖。
で、全く関係の無いアーサーに憧れを押し付ける連中が騒ぎまくると見た。
アーサーはいわばアイドル的存在。そりゃ、世界的人気なアイドルに女が出来れば、人々は叩くだろう。
お相手が魔物の狼となれば尚更に。
一応、どうしても困ったらウチにおいでとは言ってある。新たなる国日本帝国は、基本的に相手が誰だろうがその恋愛を認める気でいるからな。
どうせ規制したところで本人たちの愛は変わらないんだから。
もしかして、この国が1番LGBTQが緩いんじゃないか?あ、心は女だからって言って男が女湯に入ったりするのはダメだからな。
それは女として認めていないのではなく、単純に生物学的分類をさせてもらうから。
つーか、それ専用の施設も作ってもらうか。その方が面倒がない。
街がまだまだ作られている途中だからこそ取れるやり方だよな。完成した物に何かをさらに付け足すよりも、こっちの方が断然いい。
王達にも話しておこう。他人に迷惑をかけない限りは性的趣向のあり方は自由だって。
そんなクソどうでもいい事を考えていると、シュルカの部下である軍曹が俺の元に訪れた。
そういえば、シュルカと軍曹(ドリエス)はこの国に来ていたな。POL(ポーランド)と俺達の仲介役として。
「この国はどうだ?不便にしている点とか、こうして欲しいという要望があれば聞くぞ。その通りになるかは別だがな」
「お気遣い感謝しますミスターグレイ。今のところは不満もありませんよ。素晴らしい国です。少なくとも、グダニスクよりも羽を伸ばせて私は気分がいいですよ」
「そりゃ、あんなイカれた街と比べたら、サハラ砂漠のど真ん中に行こうが
「........はい。ミスターグレイ。単刀直入に言います。我々に力を貸して頂きたいのです」
単刀直入すぎて、話が何も見えてこないよ。
もう少し詳しく話せ。俺が相手の考えていることを常に読み取れる人だとでも思っているのか?
「もう少し詳しく話してくれよ。一を聞いて10を知れるほど、俺は有能じゃない」
「失礼。ミスターグレイ。我々がユーゴスラビアを再建しようと試みている革命家であることを覚えておりますでしょうか」
「
「はい。我々は第二次世界大戦後の第一次ダンジョン戦争により、完全に解体されてしまったかの国を蘇らせ、他国とも分かり合えるだけの国を作ろうとしております。そして現在、バルカン諸国はCH(中国)と戦争を始めようとしているとの情報を耳に入れたのです。それはつまり、我々が手を出せる唯一のチャンスでもあります」
「なるほど。要は戦争中に革命を起こして、政権を乗っ取ってやろうってことだな?」
「端的に言えばそうなりますね」
自分達は革命軍と名乗って居るものの、彼らはガッツリテロリストである。
セルビアの極左テロリストにして大セルビア主義を掲げたテロリスト集団。
かつて、セルビアで大統領を暗殺しようとして失敗し、あのクソッタレの街グダニスクに逃げてきた指名手配犯なのだ。
旧ユーゴスラビアの再建を目論み、この世界に混沌をもたらすもの。それが彼らなのである。
なんやかんやあって何故か俺達の下に着くことになった上に、上納金を納めてくれているけど。
なるほどな。バルカン諸国が戦争をする、つまり、兵力を外に向けた後に国内で暴れれば革命が成功する可能性が高くなるわけだ。
だって兵士を外に出すのだから。
この世界は個が軍を圧倒する事もある時代であり、主戦力さえ居なければ何とかなることも多い。
戦車相手にたった一人で戦うことすら出来るのである。
その為、今の戦争は兵士を送り込む事が常套手段。空の脅威は変わらないが、それでも兵士の重要さは上がるだろう。
で、その中でも俺達には手伝って欲しいという訳だ。
“金を払ってんだから、こういう時ぐらい力になれ”と言われている気がする。
うーん。困ったな。
バルカン諸国が戦争をするとなると、間違いなく日本も何らかの形で巻き込まれるだろう。
今の所CH(中国)が大きな動きを見せてないから平和であるが、バルカンアジア戦争が始まれば俺達も忙しくなる。
個人的にはバルカン諸国に勝って欲しいんだよね。4000年以上もお隣さんを続けてきたあのクソッタレの国を潰してくれれば、さらに安全を確保できるから。
しかし、彼らの提案を簡単に蹴ると、それはそれで問題が起こる。
どんな形であれ、俺たちの下に着いた組織の要望を断われば新たな敵を作ってしまうだろう。
さすがにそれも勘弁願いたい。世界各地で敵を作っているとは言えど、流石にテロリストからも恨まれるのは勘弁だ。
特に、彼らはうちの国のことをよく知っているからな。
んー、どうしたものか。
個人的には、お隣の脅威をなくしたい。そして、それにはバルカン諸国にも頑張って欲しい。しかし、恨みも買いたくない。
どちらかを取れば、どちらかを失う。究極の選択だな。どっちも取る訳にはいかないというのがいちばん厄介だ。
いや、これもしかしてどっちも取れるのでは?
バルカン諸国に協力する振りをして、裏でテロの準備でもしたらいいんじゃね?
CHを速攻で潰して、その後革命させればいいんじゃね?
現在、アジアはCH(中国)の力が強く、かなり悪どい方法で他国の言うことを聞かせていると聞く。
金を押し付けて、借金を口実にアジア諸国をまとめているのだ。
そして、借金に追われた国々としてはその金を踏み倒したいだろう。
国が滅べば借金は消える。寧ろ、やり方次第では金すら毟り取れるかもしれない。
あれだな。バルカン諸国が戦争を起こす前に、CH(中国)の支配に苦しむ国々に声をかけて対中国同盟でも作った方がいいかも。
そのための交渉材料だってある。借金に困ってるよね?なら踏み倒しちまおうぜ!!って話しかけたら上手く行きそう。
別に戦争に参加しなくたっていい。とにかく、CHを孤立させれればそれでいいのだ。
あとはバルカン諸国と手を組んだ振りをしてCHを攻撃し、どさくさに紛れてバルカン諸国の主戦力まで消せば完璧である。
そこまで上手くいくかどうかは知らんけど。
「革命に参加するのは無理だ。この国を守る必要があるから。バルカン諸国とアジアの戦争は、間違いなく巻き込まれる」
「........そうですか」
「だが、手を貸すことは出来るぞ」
「と言いますと?」
「バルカン諸国と手を組むふりをして、ノコノコと戦争にやってきた奴らをどさくさに紛れて潰しちまうのさ。自国が崩壊していく中、兵士達はアジアの大地に散るってことさ。上手くいくかは知らんが、多少は手を貸せる」
「なるほど。しかし、裏切ったとなれば国の立場が危うくなるのでは?」
「もともと危うい立場だろうに。1歩間違えればこの国は世界の的なんだぞ。何せ、国家元首がテロリストだからな。気が狂って核が落ちてきたとしても不思議じゃない」
こちとら未承認国家やぞ。国際連合にすら加盟していないヤベー国なのである。
つまり、国際法とか知ったこっちゃないのだ。
だって今は国じゃないし。
やったね。好き勝手できるよ!!気分次第で戦争仕掛け放題だ!!
間違いなく全世界を敵に回すけど、ぶっちゃけ今更感あるしな。
「出来れば俺達はアジアを掌握したい。少なくとも、隣国に刺されるような真似は勘弁したいな。で、それにバルカン諸国を利用する。俺達ができるのはその辺が限界だ。それに、同じ志を持つ同志が革命をしてこそ、意味があるんじゃないか?社会主義なんざクソ喰らえって言ってる俺達が手伝ったら意味が無い」
「感謝しますミスターグレイ」
「あー、あとそうだな。セルビア政治家共の汚職でも晒しあげるといいよ。革命は、国民に反感を買わせるのが1番早い。USA(アメリカ)で起こった革命戦争なんかがいい例だ。何せ、革命が正義になるからな。人は正義という言葉に弱い」
「ご指導、感謝します」
時間的に間に合うのか知らんが、少なくとも市民は味方につけた方がいいぞ。じゃないと、革命が悪となるから。
つい最近、なんか革命が起きてたからな。ちょっとだけ革命の在り方が理解出来た気がするよ。
革命はクソ喰らえ。面倒事しか持ってこない。
「取り敢えずはその方向で行くと思っておいてくれ。情勢時代で立ち回りは変わるから、なんとも言えないけどね」
「かしこまりました。それでは失礼いたします」
ドリエスはそう言うと、ぺこりと頭を下げて部屋を出ていく。
あぁめんどくせぇ。ようやく平和が戻ってきたかと思ったら、今度は戦争ゲームかよ。
内政は何とかなっているから、次は外交か。
ブリテンはふっかけた上に不可侵を結んだからいいとして、今度はアジア諸国を味方につけなきゃならん。
「あー、めんどくせぇ。なんで一般高校生がこんな事をせにゃならんのだ」
『ピギー?』
どうしてこうなったと思いながら、独り言を呟くとピギーが反応してくる。
え?封印を破って鳴こうかって?ダメだよ絶対。世界が滅ぶよ。
「ダメだよピギー、封印解除をして鳴いたら国が滅ぶどころじゃ済まんだろうに。おバカか?」
『ピギー』
「そうだったって........頼むからその封印は解くなよ。ピギーはテンションが上がると自分の力すらも忘れるからな。俺達と長く居たいなら、封印は解かないでくれ」
『ピギー!!』
わかってる!!と胸を張って(見えてないけど)答えるピギー。
分かってたら素で“封印解く?”とか言わないのよ。ピギーはおっちょこちょいだな。
そのおっちょこちょいで世界が滅びかねないとなると、やっぱりピギーってヤベーわ。こいつ一人だけ格が違いすぎる。
「次はアジアの国々を相手に交渉しないといけないのか........はぁ、仕事が増えるな。全部ぶん投げて任せたいけど、流石に王達にも任せらんないしなぁ........レイズにも投げれないのはダルい」
そもそも上手くいくのかすら分からん。
話し合いで負ける気はしないけど、所詮はただの一般人。俺だって全知全能の神じゃないので、限界は必ずある。
「これはゲーム。これはゲーム。大規模リアルタイムストラテジーなんだ。4Xなんだ」
俺は、自分にこれはゲームと言い聞かせながら、今後の立ち回りを考えるのであった。
後書き。
新作を投稿しました。タイトルは「異世界魔王、勇者として召喚されたので異世界を謳歌してみたい(勇者の仕事も一応やる)」です。
完全趣味のこれとは違って、放置ゲーの方に似た二人旅系のお話ですがよかったら読んでね。
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