対等な在り方
人類の英雄にして世界を守るアーサーがやってきたのは、電話をしてから四日後の事であった。
木偶情報屋のオバチャンのツテを借りてGBR(イギリス)のお偉いさんに連絡を取ってもらい、日本と交渉しない?と話をもちかけたところあっという間に承諾。
今最も話題となっている国ということもあり、彼らの動きはとてつもなく早かった。
上手く行けばとんでもなり利益を齎す。3枚の舌を使い分け、世界各地で内戦を起こしたみんな大好きブリカス君が、この話に乗ってこない訳もない。
いつの間に作られたのか、簡易的な飛行場で待っていると一台の飛行機が降りてくる。
そして、扉が開くと同時に英雄王の姿が現れた。
「相変わらず光り輝く嫌味ったらしい野郎だ事。あんな見た目をしてるから、野郎共にケツをファックされたがるんだ」
「何度見てもいい男ねん。私の好みでは無いのが残念でならないわん」
「アーサーも心の底から安心しているだろうよ。こんな化け物にケツ穴を狙われたら、今すぐにでも聖剣が抜き放たれるんだからな。野郎のケツを狙ったら、国が滅びましたとか笑い話にもなりゃしねぇ」
「ローズ。頼むから問題を起こすなよ。お前の癖にとやかく言うつもりは無いが、時と場合は考えてな」
「2人とも殴るわよん?私だって常時発情する猿ではないのよん」
嘘つけ。お前は割と好みの男を見つけると、目でケツを追ってるぞ。
アーサーは老若男女問わず人々を魅了するだけのものを持っているが、ローズの趣味では無いらしい。
マジで良かったよ。ホモ野郎が英雄王のケツを狙わずに済んで助かってる。
「やぁ、グレイ。僕と別れてから随分と楽しそうな事をしているじゃないか。五大ダンジョンの1つを攻略した挙句、
「五大ダンジョンに関しては何も言うことは無いが、USA(アメリカ)の頭が変わったのは俺のせいじゃないからな?あれは腐敗にまみれた政治屋が悪い。自分達の懐だけを考えた結果が招いた事態だ。
「あはは!!平等に貧乏なほうがまだマシだって事かな?それよりはまだ資本主義の方がマシだと思うけどね」
俺もそう思う。理想だけで言えば、社会主義や共産主義は素晴らしい考えであるだろう。
富の再分配による平等によって、人々が苦しむことも無く平和に暮らせるのだから。
しかし、どれだけ働いても入ってくる金が同じであれば人々は働かないし、その上指導者達だけが金を巻き上げていたら国は崩壊するに決まっている。
しかし、資本主義も資本主義で、貧富の差が大きくなりすぎる上に権力の差も大きくなりすぎる。そこら辺を上手く調節しなければ、真の平和は訪れることは無いんだろうな。
久々に顔を合わせるなり、俺がやらかした事についてニヤニヤとしながら話すアーサー。
俺は“こいつ全部分かってて言ってるんだろうな”とは思いつつも、アーサーのハグをしっかりと受け止めてやった。
身体ほっそ。本当に男かこいつ。匂いも滅茶苦茶いい匂いがするし、そりゃ世界中の人々が魅了させるわけですわ。
でも残念ながら、俺はただの人間に発情はしない。リィズのように人の形を捨て無ければ、俺は興奮できないのである。
終わってるよ俺。
「で、お前の後ろで俺達を眺めているのが、GBR(イギリス)の外交官達か?確かに舌が三枚ありそうだ」
「酷い事を言うね。いつの話をしているんだい?第二次世界大戦ならもう終わったさ」
「けっ、唾の代わりに油を差し込み、舌がべらべらと回る連中に変わりはないだろ。舌を引っこ抜かれても話してそうだ」
「偏見がすごいや。それで言えば、僕も三枚舌になるんだけどね」
「お前は二枚舌だな。英雄の顔と普段の顔。その違いだけがある。本当にブリテン出身か?舌が3枚無ければ非国民だろ」
「アッハッハッハッハッ!!なら、僕はこの国の国民にでもなろうかな。この国なら、舌が何枚だろうが許されるでしょ。何せ、魔物が国民の国だからね」
アーサーは楽しそうに笑うと、足元でナーちゃん達と既に楽しそうに遊んでいるフェルを抱き上げた。
おー、大きく育っているな。出会っときは死にかけの子羊だったというのに、今では立派な犬畜生だ。モフモフしてて可愛いな。
「フェル。覚えているかい?少し前に君を助けてくれたちょっと頭のおかしい僕の友人だよ」
「ボフ!!」
「覚えているらしいな。よう。アーサーのお守りは疲れるだろ。偶には冷たくしてやってもいいからな。どうせコイツはそんなフェルにも興奮する
「ボ、ボフ?」
「なんて事をフェルに教えるんだ。この
........否定はしないんだな。
アーサーがフェルを見ている時の目が若干怪しかったから適用におちょくってみたが、やっぱりこいつ性癖が捻じ曲がってやがる。
嫌だよ人類の英雄様が、犬畜生のケツに聖剣を突き立てて気持ちよくなっている姿なんで見たかない。
世界中のファンは大発狂するだろうな。英雄色を好むとは言うが、色が濁りすぎている。
アマゾン川ですらもう少し綺麗だぞコノヤロー。
「ボフ、ボフ!!」
「ん、どうしたフェル。そこの英雄様よりも、俺の方がいいのか?」
「ボフ........ボフゥ........」
「ほーなるほど。確かにお前もまだまだ子供だしな。親に甘えたい年頃か」
「ボフッ!!ボフー」
「分かった分かった。どうせ今日は交渉とかもしないし、みんなで遊ぶか。おいアーサー。お前の癒しはお前に甘えたいらしいぞ。飼い主なんだから、飼い犬の我儘ぐらい聞いてやれ」
「........言葉がわかるの?」
「いや?なんとなくそう言っているぐらいしか分からんよ?でも、表情とか尻尾の動き方で何が言いたいのかは分かるだろ。お前はフェルをファックしたいのかもしれんが、フェルはお前に甘えたいらしい。応えてやれよ。飼い主の義務だぞ」
どうやらフェルは、アーサーに甘えたいらしい。
既に大人の思考を持つナーちゃんですら、偶に滅茶苦茶甘えてくるというのにこの犬っころは甘え方の一つも知らないとは。
アーサーは飼い主としての自覚が足りんな。スーちゃんみたいなほんわかポヨポヨな子はともかく、自分に懐いてくれているペットと言うのは飼い主に甘えたいものなのだ。
その御機嫌をとってやることこそ、飼い主の仕事である。
アーサーはそれが分かってないな。発情する前に仲を深めろ馬鹿野郎。
「レイズ、レミヤ。客人を適当に案内しておけ。校章はまた後でいいから、今日はゆっくしてくもらっていいぞ」
「了解っす。ボスはどうするんすか?」
「ピエロの仮面を被っことしかない哀れな飼い主に、ペットとのコミュニケーションと接し方を叩き込む。せっかくいいパートナーができたって言うのに、これじゃ意味が無いからな」
「了解致しました。護衛は?」
「あー、リィズ。お前も来るか?」
「行くよ。フェルとも遊んでみたいし、この前ピギーに構ってあげられなかったしね」
『ピギー!!』
リィズがそう言うと、ピギーが“やったー!!”と喜ぶ。
ピギーはリィズの事がかなり好きだもんな。自分に恐れつつも、その恐怖を押し殺して接してくれるリィズに、ピギーは心を打たれたのである。
「ほら、行くぞダメ飼い主。次いでに、最近家に来た可愛い子たちも見せてやるよ」
「分かった。フェルが何を言いたいのか正直理解はできてなかったし、これを機に色々と学んでみるよ。あ、そういう訳なんで、皆さんは彼らの指示に従って下さい。多分何もされることは無いので」
「は、はぁ........」
こうして、外交官達を置き去りにしてアーサーに飼い主としての在り方とコミュニケーション取り方を教える講座が始まったのであった。
【ブリカス】
ブリカスとは、「ブリテン」と「カス」の合成語で、日本国内におけるイギリスやイギリス人に対する蔑称であるが、イギリスの行動を批難する目的にも使用される。発祥は2ちゃんねるの軍事板界隈とされる。
派生として「フラカス」「アメカス」などがある。
大英帝国およびその後継のイギリス連邦の歴史の大半は世界史を取り扱うと必ずと言っていいほど彼らの陰謀や外道行為がちらつくために「イギリス=目的のためなら手段を選ばない(エゴイスト)」というイメージが定着してしまっている。
もちろんこの世界のイギリスもブリカスムーブを割としている。今回のモロッコ内戦もその影響だったり........
犬畜生に欲情する救いようのない英雄王を連れてやってきたのは、とある浜辺。
人の性癖に関してはとやかく言うつもりは無いが、唯一のパートナーとも言えるペットの考えていることすら分からないダメ英雄に最低限の基礎は叩き込んでやる必要がある。
せっかく出会えたパートナーなのだ。仲良くやって欲しいというのが、友人としての本音である。
「いいか、アーサー。こいつはそんじょそこらの魔物と同じでは無いんだ。お前の唯一の理解者であり、フェルもお前が唯一の理解者なんだ。分かるか?」
「うん。なんとなくは」
「コイツを下の存在に見るな。対等だと思え。何かを頼む時は必ず感謝をして、何かをしてあげる時はそれが当然だと意識しろ」
さんざんフェルのことを犬畜生だのなんだの言っているが、フェルは魔物でありとても賢い頭を持っている。
だから、我慢するということを知ってしまっている。
それはお互いの理解に最も不要な要素だ。もちろん、ときと場合は考えなければならないが、甘えたい時に甘えられないというのはお互いの関係性が上手く行ってないのである。
少なくとも、俺はそう考えていた。
出、アーサーはフェルを無意識的に自分が庇護する対象だとしてる下に見ている節がある。
飼い主として間違っては無いが、それではフェルと良い関係は築けない。
常に対等であり、2人だけの時はお互いに我儘を言い合って聞いてやる。それが俺の考える正しい在り方だ。
事実、俺はナーちゃん達を下に見た事は1度もない。庇護するべき対象としても見てないどころか、いつも守ってもらって申し訳ないとすら思っている。
ほんと、飼い主が弱すぎてごめんね?守ってもらわないと死んでしまうのだ。
「........僕はフェルを下に見た覚えはないんだけどね。無意識にそう思っちゃってたのかな?」
「少なくとも、俺にはそう見えた。俺とアーサーは友人だ。俺とアーサーは対等か?」
「もちろん」
「フェルはお前の友人だ。対等に見なきゃ失礼だろ」
可愛がる存在ではあっても、決して自分がうえで相手が下だとは思っていけない。
立場上仕方がないときもあるが、基本は常に対等なのが飼い主とペットの在り方。
人間心理学の応用で動物の心理すら研究していた親父もそんなこと言ってたかな。犬は格付けがあるが、だからといって自分が上だとは思ってはならない。真な動物と仲良くなりたいなら、お互いの立場は対等であるべきだ。って。
事実、俺は近所の野良猫や野良犬と仲が良かった。喧嘩もしたし、一緒に遊んでたな。
いつの間にか消えてしまって、夜遅くまで探したこともあったっけ。結局、死体となって見つかった時は、本気で悲しかった。
やべ、思い出したら涙が........
「グレイ?」
「と、とにかく。お前らはもっとお互いのことを知るべきだ。先ずは言葉が分からずとも話してみろ。その内、なんとなく何が言いたいのか分かるようになる」
「分かった。やってみるよ。ごめんよフェル。僕はダメな飼い主........いや、ダメな友人みたいだ」
「ボフー」
アーサーとフェルの会話を見守りつつ、俺とリィズはナーちゃんとスーちゃんと遊ぶのであった。
もう少ししたらサメちゃんたちも呼ぶか。
後書き。
アーサー、グレイ君のせいで性癖が終わる。もう終わりだよこの英雄。
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