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ただいま日本


 サメちゃんに乗って海を渡ること2週間。とんでもない速さで海を渡ってきた俺達は、我らが故郷日本帝国へと帰ってきていた。


 なんかサメちゃん家族が増えてその数が数百体に膨れ上がったが、まぁ、可愛いので良しとする。


 ママサメ級のクソデカサメが三体と、子供サメを見守るお兄ちゃんお姉ちゃんサメが百以上。そして子供サメが2~300体程度。


 これだけの戦力を確保すれば、一旦は海軍として機能してくれるはずである。


 だって1番小さい子供サメでもジョーズに出てくるサメよりでかいからね。俺が最初に出会ったサメちゃんが1番子供だったらしいし。


 ダンジョン生まれのサメはあまりにも規格外で困る。泳ぐ速さも船より圧倒的に早いし、なんか普通に強いし。


 移動中はママサメに乗せてもらっていたのだが、背中が広すぎて快適であった。


 食糧問題も俺一人で解決出来てしまうし、暇つぶし用のゲームも完備。


 流石に食事のレパートリーが狭すぎて飽きることもあったが、それでも工夫すれば色々と作れる。


 塩は海から取れるし、なんか子供サメちゃんがでっかいカジキとか取ってきてくれるし。


 1番驚いたのは、ママサメの上で焚き火とかしてもいいと言われた事かな。ダメでしょ。海の生物が火に強かったら。


 と、まぁ、そんなわけでサメちゃん達との交流を深めながら俺達は日本に帰ってきたのである。


「ボスの能力って本当にサバイバル向きだよな。食料も出せて飲み物も出せる。火も起こせれば、暇つぶし用のゲームも出してくれる。やっぱり無人島に何か一つ持っていくとしたら、ボス一択だわ」

「ボスの能力ってかなり器用ですもんね。その気になればなんでも出来てしまいますし」

「傷を治すことが出来ないぐらいか?とは言っても、私がいれば問題ないしな」

「グレイちゃんの能力はすごいんだよ!!と言うか、使う本人がすごい」

「それはそうねん。どれほど優れた名剣を持っていようとも全ては使い手しだいだわん。ボスはとんでもなく優れた使い手だから、能力が便利に見えるのよん」

「一理ありますね」


 仲間達はそう言いながら、ここまで送ってくれたサメちゃんを撫でる。


 この2週間でサメちゃん達との仲はかなり深まり、誰もがサメちゃんヲタ可愛がるぐらいには仲良くなった。


 特にアリカは子供サメから好かれており、“次は僕!!次は私!!”と頭を撫でてもらおうと順番待ちをしている。


 そして、アリカも結構楽しそうにしていた。


 子供同士、なにか通じるものでもあるのだろう。


「ここが俺達の国日本だ。ご飯については直ぐに解決するだろうから、少しだけ待っててね」

「ゴフー」

「あはは。やめろよくすぐったい」

「ゴフー!!」


 俺が世話になったママサメ達を撫でてやると、ママサメたちは機嫌良さそうに俺に体を押し付ける。


 正直ゴツゴツとした鮫肌は痛かったが、流石に口には出さずくすぐったいとだけ言っておく。


 ママサメ、意外と傷つきやすい性格をしているから気を使わないとな。


 定期的に会いに行ってあげないと拗ねるかもしれん。こいつ、実は子供サメより可愛いんじゃないか?


「ナー」

(ポヨン)

「ゴフー?」

「ナー!!」

(ポヨン!!)

「ゴフー!!」


 ナーちゃんやスーちゃんもサメちゃん達と楽しそうに交流している。


 やはり、話せる魔物というのはある程度の社会性がありそうだ。ママサメが1番可愛がっていたのもこの二人だし、暇な時はこうして魔物達で話し合う事もあるだろう。


 まぁ、俺の護衛は最悪ピギーで何とかなるしな........本当はピギーも紹介してやりたかったが、流石に子供サメ達の前で出すと泣かれてしまいそうだから辞めたけど。


「ごめんなピギー」

『ピギー』

「気にしてないって?そうは言っても、寂しいもんは寂しいだろ。今日は遊んであげるからな」

『ピギー!!ピギッピギー!!』

「え?リィズも一緒に?わかった、後で行っておくよ」

『ピギー!!』


“やったー!!”と言わんばかりにおお喜びするピギー。


 なんというか、人じゃないやつ程可愛いのは何でなんだろうな?


 下心とかを感じないからか?アリカのような人懐っこく小動物みたいな可愛さも好きだが、俺はこう言う素直に甘えてくる魔物の方が可愛いと思ってしまうタイプのようだ。


 もう、片っ端から可愛い魔物でも呼んで、魔物の楽園でも作ってみようかな。


 魔物は自分の本能に純粋だから、アーサーとかも喜びそう。


 フェルの友達とか作りたそうだし、ありっちゃありだな。


「........うわっ、本当にサメの群れを連れてきてるんすけど。え?マジでこのサメ達で海を渡ってきたんっすか?」

「フォッフォッフォ!!飛行機で米国へと渡ったのでは無かったのか?帰りもてっきり飛行機かと思っておったのじゃが」

「ふむ。レイズ殿が訳の分からぬ事を言っているなとは思ったが、実物を見ると余計に理解できないな。なんだこれは」

「人類の王は私達じゃ理解できんよ。あの死の嘆きを叫ぶ化け物を従えているようなやつだぞ?理解なんて到底できないさ」

「ほう。海に生きる魔物か。サメと言っていたな」

「魔物、人、エルフ、ドワーフ、ダークエルフ、タイタン。その全てに偏見を持たず接するお方だ。魔物にも好かれて当然だろうな」


 俺の中で喜ぶピギーと話していると、迎えに来てくれレイズ達がやってくる。


 なんなら、王達まで来てるじゃん。暇なの?


「ただいま。USA(アメリカ)との交渉は失敗したわ。すまん」

「あれのどこが交渉なんすか........どうせ今回USAでの大事件は全部ボスが関わっているんでしょう?流石にUSAが真っ二つに割れたというニュースを見た時は飲んでいたお茶を吹き出したっすよ」

「フォッフォッフォ!!あれは傑作じゃったのぉ!!冷戦期に大韓民国を真っ二つにし、ドイツを二分したあの米国が、物理的に真っ二つとなったとは笑えるわい!!」

「いやいや笑えないっすよ。どうするんすかあれ」

「んー、なんとかなるでしょ。大統領の首も変わったし、なんなら俺達はUSAでヒーロー扱いだからな」

「どこの世界に革命戦争を引き起こさせるヒーローがいるんすか。次はキューバにでも行きますか?」

「流石にキューバの父チェ・ゲバラになる気は無いなぁ」


 俺達が海を渡っていた頃、USA革命戦争は終わり新時代を迎えようとしていた。


 ハルデン政権は瓦解し、今は豚箱にぶち込まれて厳しい取調べを受けているという。


 警察は国家の犬だが、国家の反逆者には容赦がない。相手が権力を手放したジジィともなれば、警察の威信にかけて全てを調べあげるだろう。


 そして、新たな大統領となったのがなんと俺たちが助けたあの動画配信者のアーリ。


 無政府状態は不味いという事で早急に選ばれた大統領であるが、俺たちに助けられたことで神輿に担がれたらしい。


 なんというか、巻き込んでごめん。何も出来ないけど頑張ってくれ。


「それで、こっちはどうだ?この二ヶ月でなにか変わった点は?」

「滅茶苦茶変わってますよ。ドワーフの技術がとにかく凄まじくて、吸収力も高いからあっという間に文明が再生しているっす。鉄や石炭、希少金属もダンジョンからゴロゴロと出てくるので資源大国とも言えるレベルっすね」

「今の時代は石油もさほど必要では無いからのぉ。魔力さえあればなんとでもなるのが今の時代。後は鉄や貴金属さえあれば、大抵のものは作れてしまうわい」

「いい時代になったもんだ。中東に頭を下げなくていいなんて、便利な世の中になったな」

「今はそれよりも金やミスリルの方が大事っすからね。排気ガスを出しながら車を走らせる時代は終わったんすよ」


 時代が変われば、エネルギーのあり方も変わる。


 魔力という新たなエネルギーを発見した人類は、その魔力を新たな資源とした。


 そして500年の時を経て、今は魔力が主流のエネルギーとなっている。


 電気やエンジンに使われる動力はほぼ全て魔力で補えてしまうので、石油の価値がかなり低いのだろう。


 石油から作れるものもあるはずだが、それは魔物の素材で解決できそうだしな。


「魔石もかなりの量が取れるので、輸入は必要ないっすね。ほぼ全てが自己完結できるっす」

「こうしてみるとダンジョンの恩恵が身に染みてわかるな。ダンジョンは資源の宝庫。国がこぞって欲しがり、管理するわけだ」

「そういう事っすね。ちなみに、ミスリルはミスシュルカ経由で輸入できるっす。タダ同然で手に入れられる上に、それなりの量があるんで物が作り放題っすよ」

「あー、俺らの手に入れたダンジョンか。管理とか全部任せているから、俺達のものと言うには少々抵抗があるあそこね。確かにミスリルが取れたな」


 ミスリルはかなり貴重な鉱物でありながら、需要がとんでもなく高い。


 一昔前の半導体のような役割を担っているので、文明が発展する度に必要とされるのだ。


 そんなミスリルが算出されるダンジョンの1つを俺達は持っいる。管理は軍団に任せているし、ほぼノータッチでどうなっているのかも知らんけど。


 お陰で滅茶苦茶金が入ってくるしな。プラスミスリルもタダ同然で使えるとか最高かよ。


 やっぱり軍団のみんなにはこの国に来てもらって、観光でもしてもらうか。


 なんか知らん間に下部組織になっているし、偶には労ってやろう。


 もし、騒ぎを起こしたら、その瞬間サメの餌にするが。


「ちなみに、今ちばん流行っているのはバイクっす。みんなゴリゴリに改造した違法バイクを乗り回しているっすね」

「おい待て。まだこの国は交通整備とかされてないだろ」


 なぜにバイク。乗り物としては確かにかっこいいところもあるし、流行るのは分からなくもないがそれよりもやるべきことがあるだろ。


 それともあれか?山も踏破できるマウンテンバイクってやつか?


「バイクを走らせる専用のコースがもう作られているっすよ。コンクリートの作り方を教わったドワーフたちが、あっという間に建てたっす。すごいっすよ。機械使うよりも作業速度が早いもんだから、あっという間に道が出来上がるっす。ドワーフヤベーって思いましたもん」

「何を言っているのかさっぱりで、俺の頭は今混乱しているよ。よし、話を聞いても分からないから見に行くぞ。あ、後サメちゃんたちはウチの海軍にするから、仲良くしてな」

「すいませんボス。俺はボスの言っていることの方が理解できないっす。海軍?あのサメが?トルネードでも起こして空に飛ばすんすか?」

「シャークネードじゃねぇよ。お前も同じことを言うな」


 俺はそう言いながら、サメちゃん達に別れを言うと色々と変わったであろう我が国を見に行くのであった。


 ところで、タイタンの王が人間とさほど変わらない大きさをしていたんだけど、なんで?


 体の大きさとか調整できるものなの?

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