笑え

過去死々累々

ヘッダーは今日も「あの人垢作り替えたんだって」

最早電子に移された人々の墓場

「人格を殺した」とは言い得て妙だ、数年前


褒められた人間じゃない

人間にすらなれなかったから人でいる事をやめた

本当の所命を絶ちたかった、数年前

いやもしかしたら今もかもしれない


人の痛みを知ってると宣いながら誰かを傷付け

今度は上手くやるって結末は同じで

変わらねえな 変わらねえな

自分嫌いすら変わらない


嗤いたければ嗤えよ どうせ僕は変わらない

「諦め」なんて言葉は誰しも持ってる

ただ諦めが悪いだけ

笑っちまうな 笑っちまうな


どうせ人生上手くいかねえ

描いた未来図はすっかりアンティークな絵画

それを捨てきれないのは僕が幼いからで

いや、それだけは唯一の宝物だからか


そこはかつて戦いがあった場所だそうだ

未来を睨み「それでも」と独り戦っていた人の

今や草花生えて戦いの跡なんか綺麗さっぱり

そんな戦いすら最早フィクションの域で


どうせ戦記はそうして綺麗に片付けられて

「そんな嘘だろ」と一笑に片され

さっき古本屋の10円コーナーに並んでたよ

所々カビも生えて


時間ってやつはそうして食んでいく

大好きなあの人の笑顔とか

いやそれすらも過去になって久しい

それに泣き、それもきっともう昨日、数年前


それを「過去だ」と笑える人はきっと強い

僕は笑えないから変われなくて

だから今日も湿気た歌を歌って

沈む夕日が涙で霞んで


そんな景色が職場に通う電車の車窓に見えたよ

そしてその景色も過ぎ去って戻らず

それに流す涙すら刻一刻と別れ

人生なんかそんなもんだから


泣く時は泣け、笑える時は笑え

悩める時は悩んで、歩けるなら歩け

立ち止まりたいなら止まればいい

どうせ過去になる、それを轍と呼べ


君の過去なんか僕は知らないし

君の過去を知りたいとは思わないけれど

その傷跡を見れば相当なもんだったんだろう

きっと僕より大変だったんだろう


どうせ誰にだって死ぬ日は来る

その時にその涙が綺麗なデコレーションになる

でも死に際に泣くのは忍びないから

だからせめてその時に笑えるように笑え


決して笑うことを忘れないでくれ

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