第44話 ああ、それは良い。滑稽だ
「要するにあのホウキをどうにかすればいいんだろ?」
とは言ったものの、前回魔女と戦った時はホウキが売れると思って攻撃しなかったんだよな。
ホウキに対する情報が少ない。
防御魔法消せるなんて知らなかったし。
骸骨野郎は思案すると、
「私があのホウキを引きつけよう。この身体だ、攻撃を食らおうが何しようが回復するし、魔女のアーティファクトを食らっても『聖遺物・グラム』のおかげで奴隷になることもない。なんとかする。その間、君はライラたんを守りながら、面倒な影たちを片付けてくれ」
そう、ライラを守る必要がある。
防御魔法を解除されてしまう以上、彼女を守るにはそうするしかない。
そのとき、あっと気づいたように骸骨野郎は言って、
「ただ、空を飛ばれるのが問題だな。私にはどうすることも……」
「そのときは呼び寄せればいい」
俺は骸骨野郎に言った。
「俺が前、魔女と戦った時はな、魔女は接近戦に弱かったんだよ。だからホウキを近くにおいて操って戦っていた。いまはライラを背負ってるから俺は無理だが、お前ならできる」
「魔女相手に接近戦、か……」
「なんならマンドレイク引き抜いて魔女にぶん投げろ。悲鳴に耳を塞ぐだろ」
「ああ、それは良い。滑稽だ」
骸骨野郎の声は笑っていた。
すでにぞろぞろと影の奴隷たちがやってきている。
その数、二十。
四つある手の内、アーティファクトを握っていない手がすっと伸びて、俺たちを指さす。
奴隷たちが駆ける。
「行ってくる」
骸骨野郎は言ってホウキへ向かっていった。
俺たちの方へ矢とナイフが同時に飛んで来たので、ライラを抱きかかえると、その場から走り出した。
地面に飛び道具が刺さる。
「ライラ! 背中に回れ!」
俺は言ったが耳栓をつけた彼女は眉間に皺を寄せている。
「なんて言ったんです!?」
聞こえていない。
指示が出せない!
こんなことなら畑じゃなくて直接魔女の家に行くんだったと後悔する。
なんとか彼女を背負い直すと、俺はまた駆け出した。
飛んできたナイフを掴む。
ライラが悲鳴を上げる。
「なんです! なんなんです!? どうしてナイフが飛んでくるんです!?」
「掴まってろ!」
俺は背に乗るライラの腕を引いて身体を密着させる。
ライラの頭が俺の頭にくっつく。
「あ! 声聞こえました!」
「あ? ああ、身体の振動でだな! しばらくそうしてろ! 俺の後頭部に頭くっつけてろ! 会話できないのはキツい!」
なるべく大きな声を出してライラに言う。
「ナイフはなんなんですか!?」
「アレは暗殺者だ!」
「暗殺者!? 何で!?」
「
「あのヤニカス! 邪魔ばっかりしますね!」
別に邪魔しようと思って
骸骨野郎はホウキが空に飛んだとみるや、マンドレイクを引き抜いて魔女に投げつけた。
魔女は四本あるうち腕二つを使って頭を抱えるようにして耳を塞ぎ、一本の腕を振ってマンドレイクを切り裂く。
やはり、
魔女にもマンドレイクは効く。
魔女がホウキを近くに呼び寄せ骸骨野郎と対峙しているのを確認すると、俺はライラを背から下ろした。
「え! え! 何で下ろしたんです!? あわわ!」
俺はライラの額に自分の額を押しつけた。
頭突きしているみたいだと思う。
「聞こえるか」
「聞こえますけど! 近いです!」
「我慢しろ。いいか。俺は今から
「え! でもホウキが……」
「大丈夫だ、骸骨野郎が引きつけてる。何かあったらすぐに戻る」
言って額を離すと俺は彼女に防御魔法を張った。
防御魔法はそこにあり続ける。
ホウキが来ない限り、消えない。
よし。
ライラから目を離して、そいつに対峙する。
しばらく追いかけてきていた男。
鎧には翼を広げたグリフォン。
元王立騎士団の証。
骸骨野郎の友人の影が、冒険者を数人連れてそこに立っていた。
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