第10話 決着とガルム

 ズプッ……――と、ぼくの手が感触を伝えた。

 そう、肉に食い込ませる独特の感触。

 剣を使っているにも関わらず、相手の温もりがじかに伝わるようなあの感触だ。


 大跳躍を見せたガルムを潜り抜けるように走り込んだぼくは、ガルムの喉元に剣を突き刺していた。


「ぐっ……ガッ……ガアァァァーーーッッ!!」


 さらにぼくは切れ味の鈍った剣にさらなる力を込め、そのまま剣を走らせた。

 喉元から下腹部までを一気に駆け抜けると、支えを失ったようにぼくは前方に突っ伏していく。

 そして血塗れの手で握っていた剣も役目を終えたことを告げるように、根本からその刀身が圧し折れた。


 後方では腹を切り裂かれたガルムが、着地すらできずに勢いのまま滑り転げていく音が聞こえる。


「ゲェ……ッ!! ……はぁっ……はあっ……」


 もう支えがなければ起き上がれない。

 ぼくは倒れた体で転がり、近場にあった太い木の枝を掴むと、枝を突き立てて体を起こした。

 一歩……また一歩とガルムに向かって歩を進めていく。


「どう……だ。ぼくの……勝ち……だ」


『グルゥ……』


 ぼくの声に反応するとガルムは一瞥した後に、唸り声とは違う声を響かせた。


 そして……

 金色の瞳を閉じると、荒げていた声がか細く。そして……消え入った。


 ぼくは勝利の雄叫びを上げることもできず、体の芯から来る震えに戸惑いながら、ただただ深くその亡骸にお辞儀をする。


 お互いに生き抜こうとした結果だ。


 そしてこれで終わりじゃない。

 これが始まりなんだ、と強く……忘れることがないよう心に強く刻み込んだ。


 ぼくがこの傷で生きていれば……の話だけど。

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