第17話 ユーファネートに興味津々の王子様
「なるほどね。そこまで考えているのかユーファネート嬢は」
「その通りですわ。今後は、ライネワルト侯爵家の協力の
「なるほど。今まで使わなかった物を有効活用するのか。その発想は素晴らしいね。他にもなにか考えているのかい?」
説明を感心したように頷き、疑問点には鋭い質問が飛んでくる。そして回答すると発想力の豊かさを賞賛してくる。そんなレオンハルトの対応に希のテンションは完全に振り切っていた。
「まだまだありまわ殿下。ライネワルト侯爵領で落花生を大量生産し、飢饉に備えて確保します。そもそも落花生は乾燥させれば長持ちしますし、翌年の種植えにも利用します。あまりにも生産が増え過ぎれば加工品として庶民向けや、殿下も気に入ってくださった甘さ控えめお菓子として販売もできます」
希は自分の隣に座るレオンハルトに説明を続けていた。最推しレオンハルトの生姿が目に入るごとに、テンションが沸騰したようになっていく。さらになんとレオンハルトとの距離が徐々に近付いており、そろそろ肩が触れ合いそうであった。
(レオンハルト様の肩が! 肩が触れそうなの。なに? 今日が私の命日なの? 最後に素晴らしいイベントが起こってるの!?)
レオンハルトへの推しパワーが火を噴きそうである。少しでも気を抜くと財布からお金を出しそうになる。財布は持っていないが。
少し冷静になり、テンションマックスを維持したままレオンハルトと会話を楽しむ希を、ギュンターが面白くなそうに見ていた。
「おい、レオン。ユーファに近付きすぎだぞ」
「そうかな? ユーファネート嬢の話が楽しくて近付き過ぎたようだ。ギュンダーの言う通り淑女への態度がなってないね。離れ――」
妹が取られるのが嫌なのか、ギュンターが顔をしかめている。本当に変わったな。そう思いながら希から距離を取ろうとしたレオンハルトの動きが止まる。
「ユーファネート嬢?」
「嫌なわけがありませんわ! もっと近付いてくださいませ!」
「ガシッ」と擬音が聞こえる勢いでレオンハルトの
「どうしようかギュンダー? 君が愛するユーファネート嬢からのお願いを無下に断る事は出来ないかなー」
「おまっ! からかっているだろう!」
レオンハルトにからかわれていると分かり、ギュンターは舌打ちしそうな顔で、優雅に紅茶の用意をしているセバスチャンへ小声で確認する。
「おい、セバス。ユーファがレオンに取られそうだぞ」
「なにか問題が? あれほど嬉しそうにされているユーファネート様を見れて私は幸せです。ギュンター様、お代わりは如何でしょうか? お菓子の追加は?」
「いらない。おいユーファ。ちょっとセバスを連れて席を外すぞ」
急に立ち上がったギュンダーが希に声をかける。
「どうかされましたか?」
「ん? そろそろお父様とお母様を呼んでくる時間だろ?」
分が悪いと思ったギュンターがセバスチャンを連れて逃げようとしていた。焦ったのはセバスチャンである。ユーファネートの執事として、この場から離れるわけにはいかない。希からの接待役を言われているのである。
「ユーファネート様」
「いいですわ、お兄様。セバスチャン。私は殿下とお話をしてるから大丈夫よ」
希の言葉にセバスチャンが少し悲し気な表情を浮かべたが、敬愛するご主人様が楽しく過ごされる時間を少しでも多くしないと。と、気持ちを切り替えたようで、ギュンターと共に部屋から出ていった。
二人を見送った希はレオンハルトを改めて眺める。美しさ、尊さ、愛おしさ、凜々しさ、どの角度から見ても最高であり、リアルで見れるなんて私は幸せ者だわ。なんて考えていた。
「その、ユーファネート嬢。あまり見られると、さすがに恥ずかしいかな。ところでユーファネート嬢の話に、僕も一口参加をしたいのだが?」
自分を凝視する希の態度に、しばらくは黙って付き合っていたレオンハルトだったが、声をかけなければ、彼女は1日中見ている気がして、「そんなことはさすがにないか」と苦笑する。
「え? 殿下もリゾートスパに興味が?」
「いや、そっちは母上が興味を持ちそうだが、ではなく落花生増産の方だね」
「興味を持って下さるのは嬉しいですが、レオンハルト殿下が事業に肩入れすると、周囲になにか言われませんか? それならば主体となって動いていただいてもかまいませんが」
「いや、そんな横取りみたいな事はしないよ。横槍を入れるような
ギュンダーと二人で進めている事業に参加したいと発言するレオンハルトに、希は大喜びする。
「殿下にご協力いただけとは光栄ですわ。」
「それに君と事業を一緒に出来るなら、何度でもこっちに来れる。それにしてもユーファネート嬢は本当に面白い。どれだけ僕の好奇心を掻き立てるのだろうか」
爽やかな笑顔でユーファネートの手を握りながら耳元で伝えてきたレオンハルトに、希はときめきで目がくらみそうになる。
「ああ、それと僕の事は『レオン』と呼んで欲しい」
「え? なんて?」
レオンハルト様はなんと言った? 愛称で呼んで良いつったか? 課金してもかなわない。最高難度のなのよよよ! 様々な思いが頭を駆け巡る希だが、このチャンスを逃してなるものか。そう思いながら顔を真っ赤にさせ小さく呟いた。
「はい。レオン様」
「よろしくね、ユーファ」
真っ赤な顔で恥ずかしそうに
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