第34話 幻想! フリーズン・ラブ!
「ほへぇ〜 幻想的!!」
「シュヴァル」は氷で出来た街。建物の材質は全て氷。街の道も全て氷で作られている。御伽の国にいるような神秘の街並み。
上にはドーム状の薄い膜がある。あれは外の吹雪を遮る役割をしている。それと同時に雪で見えない太陽の光だけを吸収し、街に与えている。
人の視界には太陽は見えない。でも、触覚では太陽の暖かい日の光が当たっている。なんとも不思議な感覚。
街に太陽の当たれば氷は溶ける疑問が浮上。ここで魔法が役に立つ。街中にある氷は溶けないように魔法が付与されている。だから、街中で電灯が灯っていても周辺の氷は溶ける心配はない。
「なんか......観られているね」
「そうだな、どうするユミナ。殺すか」
「レオ、どちらが狩れるか競争しますか」
隣で物騒な発言をしたライオンと変態騎士。
「いいよ、もしもの時だから。最終手段ってやつ」
「ま、ユミナがそういうなら俺は従うだけだ」
「お嬢様......」
「心配しないで、護衛は増やすよ」
レオの背に妖狐とフェンリルを乗せる。
「良し、バッチリ。キューちゃん、ウルウル。不埒な輩が接近したら即、攻撃よ」
主の命令に了解の吠声を鳴らす二匹の小さき使い魔達。
「ユミナ、狐はわかるが。狼の能力は......」
胸を張る私。二人からしたら、無いに等しい。涙拭けよ、ユミナ。
「ウルウルの能力をそのままキューちゃんに付与する」
「おっかない事を平気で考えるな......これが俺の主か」
「いやぁ〜 照れますな」
「これは......褒めるべきなのか??」
「立派です、お嬢様!!!!!!!」
レオと黒狼のウルウルはやばい主人に仕えてしまったと微妙な面持ちを出す。それなりに主人と行動を共にしている妖狐のキュウは、がんばれ新人共、っと達観した顔を出しつつ周囲の警戒を怠らない姿を見せた。ヴァルゴは通常運転。
「でっかい木」
街の中央に置かれている大きな木。クリスマスツリーに使われている木と形状が似ている。
シーズンになったら装飾でも付くのかな。きっと素敵なイルミネーションになるだろう。
そうなれば、白陽姫ちゃんとゲーム内デートコースとして活用するしかない。まだまだ夏なのに冬のイベントのことを考えるとは先取りすぎる。
「シュヴァル」は外の悪天候が嘘ってくらいの盛況だ。氷と光が共存している街なのか、きらめく街並みの風景をじっと見てしまう。吹雪の静寂を嘲笑う祭りって感じでずっと滞在したい気分だった。
木製の縦長椅子に座っている私。
「暖まる〜」
「シュヴァル」の限定アイテム。ホットアップルジュース。飲むと一定時間【保温】効果が付与される。重々しい防寒具を着なくても活動ができる。他にも果実系統のホットジュースや食べ物、ワインやビールなどの大人な飲み物も存在する。
「ユミナ、いつまで待つんだ」
地面にくつろいだ姿勢で横になっているレオ。ウルウルはレオの背中が気に入ったのか背で寝ている。
キューちゃんは私の膝でお昼寝中。寝てても私の使い魔。ちゃんと警戒はしてくれている。近寄る者を感じると吠えたり威嚇する行動を見せる。よくできた使い魔達だよ、本当に。
ヴァルゴは面白そうだと街をぶらり探索中。
「メッセージによれば、数分だって〜」
白陽姫ちゃんからのメッセージで今、向かっている最中らしい。いつもは「サングリエ」で活動しているが、用事で次の街でもある「ムートン」に滞在していたらしい。だから、それほど時間がかからない内に合流できる。
「どんなアバターなのかな〜」
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