第107話 空の決闘

吸血鬼の国の姫様でもあるリーナさん。突然の決闘を申し込まれた私は、自分の実力を認めさせるために決闘を了承した。で、場所は......草原のフィールド。


「妾の所有しているエリアじゃ。存分に戦うが良い」


 私達が立っているのは草っ原なんだけど、地上ではない。言葉がおかしいが、実は正しい表現なんです。『リリクロス』のとあるフィールド。縦長に伸びる山の頂上に直径50メートル位のエリアが存在する。それが私が今いる場所で、リーナと戦うフィールド。広大な場所なので、余程の事がない限り下に落下はしない。


 試しに下を見たが......雲一面だった。


「雲よりも高い場所って......」


 空気の心配はない。アイリスが生活する上で必要な問題を解決しているとか。



「にしても、生活って。障害物がないけど」


 周りを見ても生活に必要な物が何もない。家とか諸々。ここで何やっていたのかしら??






「さぁ、始めるわよ」


 腕を組み、苛立ちを見せるリーナ。

 こう言っては失礼になるけど、私......何した? 全く、心当たりがないけど??


「始める前に、勝敗はどうする?」


 私の提案にさらに苛立ちを見せるリーナ。


「自分が勝てると思っているのかしら?」


「いや、こういう戦いを始めてやるから......よくわからなくて......」


 最悪、”死”で勝敗が決まればシンプル。私は負ければ、リスポーン更新をせずにこの草原フィールドに来たから、吸血鬼の国に戻る。でも、リーナはNPCで王族。


 吸血鬼の王族、ひいては女王の娘を殺せば確実に指名手配扱いになる。そうなれば、吸血鬼全体が私を殺すために動くだろう。絶対に面倒事になるので、リーナさんとの決闘はしっかりルールを決めておく。


 ルールはきっちり決めるのは、もう一つある。王族を抜きにしてもNPCが死ねばこのゲーム内から消滅してしまう。頭の片隅にニヤけずらが非常に似合うオフィがチラつく。あれは残留思念の括り。肉体は消滅している。


 とにかく、一部の例外を除けば、個であるNPCは必ず消える。それもあっての提案だったんだけど......余計逆立ててしまった。


「ふん。まぁいいわ。ご安心を。わたくしには指輪がありますので」


 左手をかざすリーナの指には確かに指輪が嵌められている。う〜ん、既視感があるデザイン......


「その指輪は?」


「外交にきた、老魔法使いにいただいたのよ。「これを持てば死なない人生を数回おくれるから」っとね」


 私は額に手を当て、深いため息をついた。後方からも私と同じ反応がある。100パーセント、ヴァルゴだろう。


「ち、ちなみにリーナさんがお会いした老魔法使いのお名前は?」


「”オーフィ”とか言ったかしら」


 やっぱり......何、伸ばし棒をつけて偽名ぽくしているのよ!? しかし、は何をやってるんだ。全く死んだ気がしない。いつか、しれっと復活とかしないよね。本を燃やせば阻止できるかな......


 

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