第100話 友よ、前進のために誰を信じるのか
端的に言いますと、私は
白陽姫ちゃんは私からの返事を待っている。だからではないと思うが変な気遣いはされていない。
至っていつも通りの巻波家がうつっていた。でも、同時に私の心は深いダメージを負っていたことに気づいた。
少しでも修復しようとヴァルゴたちに
下を向く私をアイリスは見る。
「あのな、ユミナよ」
申し訳ない表情を出しているのは吸血鬼の元女王でもあるアイリス。
「うん?」
「妾が言う事ではないが......もう少し慎みを覚えた方がいいぞ」
「......ごめん」
私の謝罪の言葉を受け取ったアイリスは驚愕している。
「そんな得体の知れないモノを目撃した顔やめてよ。とうとう、頭がおかしくなったの?」
「よ、よかった。
「し、失礼すぎない!? わ、私だって謝罪する気持ちはあるよ!」
「
「あ、あの......アイリス」
「うん? どうした?」
「あ、いえ......何でもない」
いつも通り......か。NPCには私がいつも通りと認識されているのかな。それとも私が言葉にするのを待っているのか。
どちらにしても、今の私はいつも通りの本調子ではない。
早く、白陽姫ちゃんへ答えを言わない......と。
......
............
........................
「それにしても」
アイリスは窓から見える景色を感慨深く見ている。
「妾がいない間に成長したな......喜ぶべきなのだが、寂しい気持ちもある。複雑だな......」
アイリスが女王を務めていた吸血鬼の国———ヴァンパイン。
中央には立派なお城。私がいる建物でもある。
で、昔はお城を囲む様に石造りメインの建物が建っていたらしい。今はアイリスの娘さんが女王に即位している。娘さんが女王になってからは中世のままの街並みは健在だが、城下町には「スラカイト」で見た建物と類似した近代的な建物も追加されている。上手い事、融合している新旧の街並みの景色は、私は結構気に入っている。
「それだけ、当時から変わったって事だよ」
アイリスは私を見てつぶやく。
「ふん! それもそうだな。現にこうして人間の良き友人もできた。年端もいかない小娘だがな。昔の妾が知ったら倒れている事だろう〜」
「一言、余計だよ」
「ほれ、いくぞ!!」
ボルス城よりも立派なお城。内装も調度品も綺麗に手入れされている。ゲームだから見放題だけど、リアルだと絶対に拝めない景色が私の視界に広がっていた。リアルか......
「はぁ〜」
「一つ言っておくぞ、ユミナよ」
「うん?」
「一人で抱え込むな、だ。なんでも一人でやろうとすると身がもたなくなる」
「えっ!? あっ、いや......これは、違くて......」
「全く、お前は恵まれている」
「『恵まれている』?」
「ユミナの周りには優秀な従者達がいるではないか」
「『優秀な従者達』......」
「当然、妾のメイドの方が優秀だけど〜」
大人バージョンになるアイリス。私を見下ろしていたが、腰を落とし私の顔の位置に合わせた。
不意にデコピンをされた。
「い、痛い......」
「信じろ、お前が
真っ白な髪をかきあげる。魅力に全振りで愛嬌のある表情を私に魅せてた。
くっ、やはり美人すぎる。アイリスのくせに生意気......アイリスの色香に惑わされそうだ。
「自分にわがままになれ。やりたい事は本心でやれ。前に進んだ者だけが自由になれる!!」
前に進んだ者だけが自由......か。そうだよね!!
「あ、ありがとう......考えてみるよ」
「お前はそれでいい」
「所でさぁ〜 みなさんは......大丈夫?」
アイリスの後ろが騒がしかった。
覗いてみると、お城のメイドさんや執事さんたちが廊下の端に次々と倒れていく。ゲーム的なエフェクトだと信じたいが倒れている人たちの上に赤やピンク色のハートマークが浮いている。
「不思議がる事か? 妾には見知った光景だ」
なるほど。私がアイリスの色気に当たり続けた結果が、ああなるのか。ありがとう、名も知らない給仕さんたち。ナイスファインプレイー!!
「全く、お前達は......」
謁見の間の両開きの扉に従事している二人の兵士は先ほどの給仕さんたち同様、アイリスの魅力にあてられ倒れていた。警備......大丈夫なのかな〜
「仕方がない。妾が開けるか」
アイリス自ら両開きの扉を開けていく。重厚感がある扉なので重々しい音が響いた。
「帰ったぞ!!!」
アイリスの後ろから歩を進めていった。
広大な室内。真っ赤で大きな絨毯が奥まで敷かれている。絨毯の刺繍は金色で統一されていた。
絨毯の先には十段高い所に玉座が置かれていた。
玉座に座っているのは貫禄のある女性だった。
「お帰りなさい、お母様」
流麗な長い白髪。ラベンダー色のドレス、額には金色のサークレット。女王ではあるが、威厳だけではなく温かみもある人柄だった。そして、アイリスの娘さんなのか。大人バージョンのアイリスと同じく溢れる色気がある。目が離せなかった。
隣にいるアイリスが呆れ顔になる。
「ユミナよ、マリアに変な態度をとるなよ」
「べ、別に......何も考えていないわよ、アイリスのばか!!」
「なんじゃと!? 妾をバカと言うか!? この変態女王(爆笑)」
「ねぇ、ヴァルゴにも言ったけど私は決して変態じゃない。どちらかと言うと変態はアイリスでしょう!! メイドとヨロシクやっていてさ〜」
「な、何を言っておる!?!?! 証拠もないのに、勝手な事を」
「隠せていると思っているの? バレバレよ」
広間に私とアイリスの声だけが響く。
「ふふ......」
マリアさんが微笑んでいた。
「す、すみません」
「気にしないでください。それにしても......お母様」
鷹揚に笑うマリアさん。
「お母様が
「うん?? 今のやりとりでなぜ、幸せと思えるのだ!?」
「ふふふ......さぁ〜」
アイリスとマリアさんから漂う雰囲気はまさに仲睦まじい親子の風景だった。
なんか、心地いいな〜
「ユミナ様。本日は吸血鬼の国、ヴァンパインにお越しいただきありがとうございます」
「あ、はい。こちらこそ、お招きいただきありがとうございます」
慣れない言葉を言ってしまった。私の言動に我慢できず口に手を押さえ、爆笑真っ最中のアイリス。
アイリス......覚えてなさい。今日は私の拳がメインディッシュよ。
「本日、お越しいただいた要件ですが......ユミナ様」
階段を降り、私のもとへ近づくマリアさん。
「ユミナ様......」
私の前にいるマリアさんは申し訳ない表情を出す。
「お願いします。私の娘を貰ってくれますか」
なんか......思っていた展開とは違った。
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